反政府デモが激化するリビアで、最高指導者のカダフィ大佐は国営テレビで演説し、「最後の血の1滴まで戦う」と、デモに対して徹底抗戦する構えを強調した。だが、現地では「演説は人々を怒らせた」とされ、火に油をそそいだ格好だ。ユーチューブには、デモ隊銃撃の命に従わなかったため焼き殺されたとされる黒こげの遺体すらアップロードされており、現地の状況は混乱を増している様子だ。数十人のデモ隊が複数の遺体を取り囲むカダフィ大佐は2011年2月22日、国営テレビを通じて約75分間にわたって演説。「私は革命家で、大統領ではない。ポストについていないので、辞めない」と主張する一方で、デモ隊については「天安門事件のようにたたきつぶす」と強硬姿勢を示した。一連のデモで、犠牲者は数百人にのぼるとみられており、現地からの音声を投稿したツイッターの書き込みでも、「若者が、『緑の広場』で行われるカダフィ支持デモへの参加を強制されている」「『手術中に死亡した』という旨のサインをしないと、政府は遺体を遺族に返さない」「カダフィ支持者が街に繰り出し、人々をおびえさせている」と、政府側の強い姿勢が垣間見える。そんななか、波紋を広げているのが、2月21日にユーチューブに投稿された動画だ。「リビアのデモ隊を銃撃しなかったとして焼き殺された」と題した1分強のもので、サイレンが鳴り響く中、数十人のデモ隊が複数の遺体を取り囲む様子が収められている。遺体は黒こげで、顔は判別できない状態だ。コメント欄には、「かつてヒットラーが行ったことに似ている。今はカダフィか。完全に病んでいる」といった、政権批判が多数書き込まれているものの、動画のタイトル以上の背景説明はなく、実際「誰が、誰を殺害したか」については不明だ。「外国の傭兵が遺体で発見」と題した動画もただし、この動画をアップロードした利用者は、2月19日には「リビアで外国の傭兵が遺体で発見」と題した動画も投稿している。動画では、頭部や腹部に傷を負い、口を開けたままの黒人男性の遺体が、数人の男性に引きずられる様子が2分弱にわたって収録されている。アップロードされた日付からすると、反政府勢力が掌握している東部のベンガジ付近で収録された可能性もある。なお、前出のカダフィ大佐の演説後、ツイッターでは、「カダフィは正気ではない」「人々は演説に怒っている」「リーダーが国民に話す話し方ではない」「カダフィには、反対勢力を止めるほどの人手は残っていない」といった現地の声が伝えられている。デモ隊も徹底抗戦する構えで、内戦につながるリスクが高まっている。
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