家電メーカーの稼ぎ頭だったテレビ事業が軒並み不振に陥っている。2011年9月中間連結決算では電機大手8社のうち6社が営業減益、4社が最終赤字と散々だ。2012年3月期の通期予想も6社が下方修正している。果たして国内のテレビ生産は生き残れるのか。パナソニックのデジタル家電部門の9月中間決算の営業利益は181億円の赤字(前年同期は613億円の黒字)に転落した。設備の除却損など「構造改革費用」もかさみ、12年3月期連結決算の税引き後利益見通しは4200億円の巨額赤字に転落する。シャープ亀山工場もテレビ液晶パネルの生産能力減らすその「構造改革」の柱がテレビ事業の抜本的な見直し。パネルからテレビまで「一貫生産」体制の構築に巨費を投じてシェア(占有率)拡大を目指してきた戦略を転換し、2009年12月に完成した世界最大のプラズマテレビ用パネル工場の尼崎第3工場(兵庫県尼崎市)などの生産を中止。プラズマパネルの生産能力を年1380万台(42型換算)から720万台に半減する。液晶でも茂原工場(千葉県茂原市)を売却し、姫路工場(兵庫県姫路市)もテレビ向けパネル生産を縮小。2011年度のテレビ世界販売台数見通しを2500万台から1900万台に大幅に引き下げる。シャープの中間連結決算も398億円の最終(当期)赤字(前年同期は143億円の黒字)。「亀山ブランド」で知られる亀山工場(三重県亀山市)のテレビ用液晶パネルの生産能力を2割以下に減らす方針で、亀山では中小型液晶パネルの生産を軸に切り替え、外部からのパネル調達などでコスト競争力を高める。ソニーは2012年3月期の連結業績予想でテレビ事業は1750億円の営業赤字と、8年連続赤字を見込み、最終損益を、当初予想の600億円の黒字から900億円の赤字に大幅下方修正。テレビは2014年3月期の黒字転換を目指しており、今後、次世代テレビの開発などによる利益率の改善、販売会社の販売管理費などのコスト削減などに取り組むが、特に、液晶パネルの調達コストを引き下げるため、2004年にほぼ折半出資で始めた韓国・サムスン電子との合弁事業を年内にも解消する方向と伝えられる。数年前からテレビ事業の過剰投資の危険性指摘台湾などのメーカーから、低価格のパネル調達を増やし、コストの削減を通じて事業立て直しを図る構えだ。すでに薄型テレビ向けパネル生産から撤退している日立製作所は、今年度内にもテレビの国内生産から完全撤退し、海外メーカーへの生産委託にすべて切り替えると伝えられる。各社のテレビ事業縮小は、国内の家電大手のものづくりが瀬戸際にあることを示す。かつて稼ぎ頭だったテレビはグローバル競争と技術革新によるコモディティー(日用品)化に伴い急激に価格が下がり、急激な円高も加わって各社を追いつめた。数年前からテレビ事業の過剰投資の危険性が指摘されてきたが、「大画面化や3D対応で需要が拡大すると強気に予想し、結果的に過剰投資になった」(業界関係者)。パナソニックが、太陽電池や充電池など高成長が望める環境・エネルギー分野に本格シフトすることを柱とした事業成長戦略を発表したように、今後は環境関連やソリューションビジネスにシフトしていくことになる。
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