2024年 5月 3日 (金)

「格下げ」と「インサイダー疑惑」 逆風に苦しむ野村ホールディングス

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   格下げ、インサイダー問題と野村ホールディングス(HD)が立て続けに逆風に見舞われている。2012年明け以降、世界的に株価が回復するなか、一時は赤字転落した業績も改善に向かっていただけに、同社にとってはショックだ。

   一つ目の逆風は、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが12年3月15日、野村HDの長期債務格付けを1段階引き下げ、「投資適格」としては最低位の「Baa3」としたこと。大和証券グループ本社と並ぶ位置で、これより一段下は「投機的等級」となってしまう。

日本の証券2社を見る格付け会社の目は厳しい

   今回の格下げにより、野村HDは金融機関同士のデリバティブ(金融派生商品)の取引で100億~200億円の追加担保拠出が必要なだけでなく、資金調達コストがある程度上昇しそうだ。信用が第一の金融機関としては世界で活動するのに足かせになると言わざるを得ない。

   2008年のリーマン・ショック後、欧米の証券会社は、一斉に銀行との一体化を進めた。いざという時に各国政府の支援を得られる銀行と一体化していない日本の「独立系」証券2社(野村、大和)を見る格付け会社の目は厳しい。ゴールドマン・サックスなど世界のプレーヤーと比べても野村、大和の格付けは低い。

   もともと2011年11月に「格下げ方向で見直す」とされていただけに、野村HD社内からは「格下げ発表後、株価はむしろ上昇しており、織り込み済み」との声も聞かれるが、やや強がりの面もある。なぜならこの間、渡部賢一グループCEOや柴田拓美グループCOO自らがムーディーズ詣でに励み、収益力改善などに理解を求め続けていたからだ。

   また、業績も最悪期を脱したのは確かで、一部のアナリストからは「格下げしない可能性もある」とのレポートも出ていた。このため、社内には「良識ある(格下げしない)判断が出ると祈っている」との声も少なくなかった。それだけに社内のショックも大きい。

情報を得た先が、野村の営業担当社員?

   もう一つの逆風は公募増資を巡るインサイダー疑惑だ。証券取引等監視委員会は3月21日、公表前に入手した国際石油開発帝石の公募増資情報をもとに同社株式を空売りし、利益を得たとして、中央三井アセット信託銀行に課徴金を課すよう金融庁に勧告した。

   問題は、中央三井に増資情報を流したのが、増資事務を中心になって担う「主幹事」の立場にあった、野村HD傘下の野村証券だったことだ。情報提供者は現行法令で処分対象とならないことなどから監視委は野村と発表していないが、「野村で間違いない」と見られており、各紙とも報道している。

   とりわけ問題なのは、中央三井のファンドマネジャーが情報を得た先が、野村の営業担当社員だったことだ。野村の増資担当部門から情報が遮断されていなければならないはずの人物で、野村の信用失墜につながりかねない。

   増資事務などを担う投資銀行部門と、株の売買などを投資家に勧める営業部門は世界的に「チャイニーズウォール」(万里の長城)と呼ばれる壁を築かなければならないとされる。チャイニーズウォールをめぐる社内情報管理は業界団体である日本証券業協会の自主ルールでも厳格に定め、破れば最大5億円の過怠金の支払いなどを迫られる。日証協にルール違反と認定される事態になれば、野村の信用度に与えるダメージははかりしれない。4月から営業のエース、永井浩二氏が野村証券社長に昇格し、巻き返しを図ろうとするタイミングだったが、二つの逆風は重荷になりそうだ。

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