2024年 4月 19日 (金)

スーパーハイビジョン「8K」2020年放送開始 消費者「テレビまた買い替えか」の冷たい反応

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   国内で地上デジタル放送(地デジ)への完全移行が完了してから間もなく2年。今日では、さらに先を見越して高精細な映像技術が研究されている。

   フルハイビジョンの16倍の解像度となる「スーパーハイビジョン」は、2020年にも本放送開始を目指す。だが十分な番組コンテンツがそろうのか、視聴者がそこまで高画質な番組を見たがるか、など不透明な部分も残されている。

サッカーW杯や五輪開催に間に合わせる

地デジ化でテレビの買い替え需要が起きて間もない
地デジ化でテレビの買い替え需要が起きて間もない

   総務省が2013年5月31日に開催した「放送サービスの高度化に関する検討会」で、次世代の高画質放送に関する具体的なスケジュールがまとめられた。現行フルハイビジョンの4倍の画素数となる「4K」は2014年、より高画質な「8K」は2020年に、それぞれ商用サービスを本格化する予定という。「8K」はスーパーハイビジョンとも呼ばれる。2014年はサッカーワールドカップ、16年にリオデジャネイロ五輪とビッグイベントが目白押しで、2020年の五輪は東京が招致を目指している。「東京五輪」に間に合うように、日本が世界に先駆けてスーパーハイビジョンの開発を成功させたいとの思いがありそうだ。

   「4K」はすでに、主要電機メーカーがテレビ受像機を発売している。ソニーの最新モデルは55型で50万円程度。「初代機」である84型・168万円と比べると価格はずいぶん下がったが、普及を考えるとまだ高額だ。それでも、調査会社GfKマーケティングが6月3日に発表した「薄型テレビ市場動向」によると、50インチ以上の大画面テレビの需要は伸びており、2013年5月では数量で前年比18.3%増を記録したという。同月の4Kテレビの販売数量も前月比5.4倍と急成長を記録。メーカーにとっては価格下落と需要減に悩まされているテレビ販売で明るい兆しが見えてきたかもしれない。

   ここで思い出すのが「3Dテレビ」だ。国内で2009年に公開された米映画「アバター」が火付け役となり、3D対応の映画が次々と制作される一方、電機メーカーは急ピッチで3Dテレビを市場に投入し、家電量販店では一時3Dテレビが売り場の主役となった。だが3Dで見られるテレビ番組がなかなか増えず、テレビ受像機の価格も一般の薄型テレビに比べて割高。「どうしても3Dテレビが欲しい」との消費者ニーズが高まらず、市場の活性化にはつながっていない。

「グラビア写真と同じくらいのきめの細かさ」を実現

   4Kをも上回る高精細のスーパーハイビジョンは、NHK放送技術研究所のウェブサイトに概要が載っている。「あたかもその場にいるような臨場感」「グラビア写真と同じくらいのきめの細かさ」を実現し、100度の視野角で見られるという。専用のカメラやプロジェクター、ディスプレーの開発も進めてきた。

   4Kやスーパーハイビジョンと技術の進歩は望ましいが、商用サービスの開始時に十分な映像コンテンツがそろうだろうか。3Dテレビでの「つまずき」の再現が心配だ。またテレビ受像機は地デジ移行前に「買い替え需要」が一斉に高まったが、その数年後に4K、さらにスーパーハイビジョンと短期間で新方式が導入されても、決して安くない高画質テレビに変えようとするか疑問だ。

   「また買い替えか、のひと言に尽きます」と話すのは、上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)。J-CASTニュースの取材に、4Kやスーパーハイビジョン対応型のテレビが、一般家庭には容易に普及しないとの見方を示した。テレビの主要コンテンツは、情報と娯楽。ニュースのような情報は速報性が重要だが、高画質である必要はない。娯楽も「クイズや、お笑い芸人のバラエティー番組をスーパーハイビジョンで見たいと思う視聴者がいるでしょうか」。ドラマやスポーツ、映画では効力を発揮しそうだが、それでも新型テレビが「価格破壊」でも起こさない限り、購入間もないデジタルテレビから「超高画質」に乗り換える気にはならないだろうと碓井教授は考える。

   コンテンツを提供するテレビ局も、NHKやキー局に比べて資金が潤沢でない地方局にとっては負担が大きいと指摘。ようやく地デジ対応が済んだばかりなのにスーパーハイビジョン導入でカメラをはじめとした機材の総入れ替えとなれば、莫大なコストがかかり経営体力がもたないというわけだ。

   碓井教授は、映画館の大型スクリーンや街中に設置されるデジタルサイネージのような「パブリックな場面」なら、4Kやスーパーハイビジョンといった鮮明な映像を流す価値はあると話す。技術開発を進めていくのも賛成だ。だが「1960年代の白黒からカラー、2011年のアナログからデジタルのような家庭での『テレビ総入れ替え』を今の時期にまた進めよう、というのは違和感があります」とこたえた。

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