2024年 4月 18日 (木)

軽自動車「増税」に走り出した やがて普通車にも波及か?

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   政府内で軽自動車税の増税の検討が始まっている。2015年に廃止される自動車取得税の代替財源確保が第1の理由だが、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)との関連で、軽自動車税が普通車の自動車税より低いことに、米国から「不公平」と攻められているという事情もある。

   ただ、国内新車販売台数に占める軽の比率は4割弱に達すし、地方を中心に生活の足として定着しているだけに、自動車業界、ユーザーからは反発の声が上がっており、2013年末の税制改正の大きな争点になるのは間違いない。

「軽」を2倍にすれば「取得税」廃止の穴埋めに

   自動車税や軽自動車税、そして自動車取得税はいずれも地方税で総務省が所管。普通車や軽自動車の取得時に地方自治体に納める取得税は、以前から消費税との「二重課税」批判があり、消費税増税論議の中で、消費税が10%に上がる2015年秋に廃止されることが決まっている。取得税の税収は年1900億円(2013年度見通し)のため、この穴埋めとして総務省が軽自動車税に目を付けた。

   というのも、排気量660cc以下の軽の保有性である軽自動車税は、自家用の場合、1台当たり年間7200円。これに対し660ccを超える普通車の自動車税は排気量によって2万9500~11万1000円。軽と大差ない排気量1000cc以下でも自動車税が約4倍になり、格差は極めて大きい。軽自動車税の税収は年1852億円と、取得税にほぼ匹敵するので、単純に軽自動車税を2倍にすれば取得税廃止の穴を埋められる計算になる。

欧米から「不公平」「非関税障壁」の批判

   同時に、軽の税制優遇を巡っては、TPPに並行する米国との協議や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉でも「公平な競争を阻むもの」と批判されているという問題がある。軽が日本だけの規格で、極端な税優遇は非関税障壁という理屈だ。

   経済産業省は「ユーザーに追加的な負担が課されないようにしっかり対応する」(8月30日、茂木敏充経産相)としているが、通商交渉もにらみ、立場は微妙との見方もある。 総務省は大学教授らで構成する有識者検討会を設けて議論を進めている。取得税が都道府県税、軽自動車税は市町村税であるため、軽を増税した場合の税収をどう割り振るかなどを含め、10月までに詳細を詰め、与党の税制調査会に提案する方針だ。

   業界はさっそく反対の声を上げている。スズキの鈴木修会長兼社長は8月29日、「軽の購入者に年収1500万円以上の人はほとんどおらず、所得の比較的少ない方々が生活や商売のために利用している」として、軽自動車増税を「弱い者いじめ」と批判。ネット上ではユーザーから鈴木会長に支持、共感のコメントが目立つ。

ドイツなどは二酸化炭素の排出量で税率決める

   TPPの問題はさておいても、単純な税収確保論議で済む話ではない。そもそも、自動車税が排気量に応じて税率を決めていることには、環境面で不十分との指摘がある。ドイツなど欧州では二酸化炭素(CO2)排出量に応じて税率が決まる制度が導入されており、総務相も環境に与える影響の大きい車ほど税率が高める検討をしている。ハイブリッド車のようにCO2排出量が少ない車を優遇するという考え方だ。

   こうした環境問題も総合的に考え、軽自動車税をある程度上げ、普通車の自動車税も環境性能でメリハリをつけて、トータルで取得税分を補てんすることになるというのが、一つの読み筋。ちなみに、軽自動車税、自動車税を合わせて全車両を一律に引き上げて取得税の穴を補てんする場合、1台当たり年間2000~3000円の増税になる。

   軽自動車税増税論は8月後半になって各紙が一斉に取り上げたが、自動車税全体の問題はほとんど記事になっていない。これについて「自動車業界を議論に引き込むためにも、まず軽を攻めて揺さぶるという総務省の作戦ではないか」(財務省筋)との見方も出ている。

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