2024年 4月 29日 (月)

円安値上げ、ボージョレ、自転車、家具… 輸入企業は大丈夫か?

   ワイン好きが解禁に沸くなか、「ボージョレ・ヌーボー」が値上がりしている。アベノミクスによる円安(ユーロ高)の進行で、輸入ワインの価格に影響が出ているのが背景だ。

   最近の1年で円はユーロに対して32%も下落。ユーロ圏からの輸入品の価格は単純計算で約3割上乗せされている。

輸入自転車、平均単価の上昇は「円安の影響」

人気のスポーツタイプの輸入自転車「GIANT」も2014年モデルを値上げした(画像は「GIANT」のホームページ)
人気のスポーツタイプの輸入自転車「GIANT」も2014年モデルを値上げした(画像は「GIANT」のホームページ)

   米ウォルマート傘下の西友は売れ筋の750ミリリットルの「ボージョレ・ヌーボー」を2012年に比べて220円値上げして870円で販売。ドン・キホーテは同じサイズを国内最安値の670円からの価格で販売している。前年の490円から180円高く設定した。

   サッポロホールディングスも平均で約10%値上げ。サントリーワインインターナショナルは出荷価格を約7%、キリンホールディングス傘下のメルシャンも数%引き上げた。

   値上げは円安や輸送コストの上昇分を価格に転嫁した形だが、ボージョレの販売数量についてはいずれも前年並みを見込んでいる。景況感の改善などで、消費者の財布のひもが緩み始めているからだ。

   ボージョレに限らず、ワインの価格は上がっている。メルシャンは9月2日の出荷分から、国産・輸入ワインの合計約1000品目の大部分にあたる約800品目を、出荷ベースで約3~8%値上げした。

   ここ数年の欧州でのブドウの不作や世界的なワイン需要の増加で、原料の濃縮還元果汁の価格が2008年に比べて約5割高騰し、ワイナリーからの蔵出し価格も約4割上昇した。これにアベノミクスによる円安が重なったのが理由だ。

   一方、いまや国内を走るほとんどが輸入品という自転車も、値上げが進行中だ。自転車小売りの最大手、あさひはプライベートブランドの自転車の8割を、10~15%値上げしている。自転車は大半を中国で製造し、米ドル建てで輸入していることから、仕入れコストが上昇した。

   この1年で円は米ドルに対して約30%安くなった。採算の悪化で、価格転嫁はやむを得ないと判断したようだ。

   また、「GIANT」などの人気のスポーツタイプは2014年モデルが登場しているが、こちらも13年モデルと比べて1~2割超も値上げされている。たとえば、13年に8万円の「GIANT DEFY3」は、14年モデルでは10万円(税別)だ。

   輸入自転車の中には値上げ幅を抑えるため、パーツのグレードを落としている車種もあるようだ。

   経済産業省生産動態統計調査によると、2013年1~6 月期の輸入自転車の総台数は447万台。前年同期に比べて6.8%減少したが、金額ベースでは5.5%増の433億円。平均単価は13.2%増えて9690 円に上昇した。自転車産業振興会は、「金額の増加分は円安の影響です」と話している。

輸入コスト、価格転嫁しづらくなると…

   輸入家具も値上げ。大塚家具は円安の影響で、2013年4月に実施した約4500品目の値上げに続き、約4400品目の輸入家具を6月から7月にかけて、最大20.6%値上げした。

   イタリアや米国、ドイツ、デンマークなどの、ソファやテーブル、ベッドフレーム、マットレスに羽毛布団などが対象。4400品目のうち、約2800品目は再値上げだった。

   円安効果で、多くの輸出企業は利益増に沸いている。しかし、輸入企業はもう喜べない。ワインや自転車、家具のように、輸入コストを価格に転嫁できるうちはいいが、値上げが売れ行きに響き、価格に転嫁しづらくなってくるからだ。

   すでに「兆し」はある。帝国データバンクの「輸入企業の実態調査」で、輸入企業のうち、年商「1億円未満」の零細企業の約4割が赤字であることがわかった。このまま急速な円安が進めば、「体力のない中小の輸入企業は原材料価格や輸送コストの高騰を商品価格に転嫁できず、より一層の収益悪化が懸念される」とみている。

   中小企業は大手企業と比べて価格転嫁がむずかしい。同社は「負担増に耐えきれずに行き詰まる『円安倒産』が今後相次ぐ可能性は十分ある」と指摘している。

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