2024年 4月 26日 (金)

検証アベノミクス インタビュー(2)
アベノミクス、「いま8合目」 国民一人ひとりの生産性向上でインフレ目標達成へ
第一生命経済研究所首席エコノミスト・嶌峰義清氏に聞く

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   2014年4月からの消費増税による景気回復への影響は、「賃金アップ」にかかっているようだ。賃上げが家計負担を軽減することで、景気の失速は免れるという。

   そんなアベノミクスだが、「2年で2%」の物価目標への道のりの、いま何合目にいるのだろう――。第一生命経済研究所経済調査部・主席エコノミストの嶌峰義清氏に聞いた。

賃上げのためにも「解雇規制の緩和」は必要

嶌峰氏は「アベノミクスは8合目。国民一人ひとりの生産性を上げれば達成できる」と語る
嶌峰氏は「アベノミクスは8合目。国民一人ひとりの生産性を上げれば達成できる」と語る

―― 企業は本当に賃金を上げてくれるのでしょうか。

嶌峰 たとえば、いま中小企業は先行して賃金を引き上げていますが、それは人手不足のためであり、いい人材を採用したいからです。もちろん人件費が増えるのですから、商品単価も引き上げたい。しかし、それもインフレになれば問題なく上げることができるようになります。

   デフレ時は売り上げが上がりません。企業は従業員を解雇しにくいので、単価、すなわち給与を下げて人件費を抑えようとします。デフレ時はずうっとそれをやってきたわけですから、インフレにするにはその逆をやればいいのですが、企業は「また景気が悪くなったら」と思う。

   そのため、政府は企業が前向きになれて投資を活発にして、賃金を上げやすくする環境を整えようとしています。持続的な賃上げを可能にするという本来の目的には道半ばですが、少なくとも賃上げは論外というムードを一変させた成果は大いに評価していいと思いますよ。

   では、どうやって企業をその気にさせるのか――。それがアベノミクスの第3の矢、「成長戦略」です。さまざまな規制緩和に取り組み、企業経営の自由度をあげるのが狙いです。たとえば、一部の社員の労働時間を規制から外すホワイトカラー・エグゼンプションの導入や、解雇規制の緩和による人材の流動化促進などがそれです。

   解雇規制の緩和には企業が解雇権を濫用して、雇用の不安定化を招くという批判がありますが、インフレになれば企業はいい人材を長期で雇いたいと考えますから、むしろリストラはやりづらくなるはずです。賃上げを実現させ、アベノミクスの成果を確実なものにするため、安倍政権は2014年に必ず解雇規制の緩和に踏み切ると思いますし、ここが正念場ともいえるでしょう。

―― アベノミクスの「成長戦略」は、かけ声倒れのようですが。

嶌峰 日本は少子高齢化が進んでいますから、基本的にはなおデフレ圧力がかかり続けます。人口が減る中でデフレに陥らないようにするには、国民一人あたりの生産性を高めるしかありません。いわば、これが成長戦略の「本丸」といえます。

   一人あたりの生産性を高めるには、一人ひとりのスキルアップ(教育の充実)が必要になります。ただ、これには時間がかかりますから、一方で企業は設備投資や技術革新を進めます。欧米には、たとえば大学に入りやすいなどのスキルアップのチャンスがあります。日本も急ぎ教育や研修の仕組みを整備する必要があるでしょう。欧米でレイオフ(一時解雇)ができる背景には、スキルアップのチャンスがあることもあります。

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