2024年 4月 24日 (水)

インドの民族衣装「サリー」の素材として脚光 旭化成ベンベルグが「復活」、工場を増設

インドの経済成長とともに売り上げは徐々に伸びる

   ベンベルグは「シルクに最も近い化学繊維」と呼ばれ、機能性はシルクと並ぶ水準だが、価格はシルクの半分程度。インドの経済成長とともに、ベンベルグの売り上げは徐々に伸び、生産が追いつかないほどになっていた。そこで旭化成は30億円かけて、延岡工場の生産量を従来の10%増強、生産能力を年間計1万7000トン規模に引き上げた。

   そもそも日本の繊維産業は、富岡製糸場(群馬県富岡市)に象徴されるように、明治時代以降、日本の近代化を牽引し、繊維製品という日本の最大の輸出品を供給した。第2次世界大戦後も日本のリーディング産業として存在感を示したが、プラザ合意による円高などに加え、近年は中国やアジア諸国からの安価な輸出品の攻勢を受けて国際競争力は急低下。大手各社はそろって国内から海外への生産拠点を移転し、国内産業としては勢いを失っている。

   旭化成は延岡工場増設にも慎重だったが、高い技術が必要な高機能繊維であるベンベルグは海外での生産は難しく、国内で担い続けるべきだと判断。繊維業界では久しぶりの大型投資を決断した。旭化成は「今後もインド市場の状況を注意深く見守る」として、これから先の大規模投資には引き続き慎重な姿勢だ。しかし、高機能を武器に世界市場で差別化を図るという戦略は、衰退し続ける国内繊維産業の一つの光ともなりそうだ。

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