「辺りは暗くなってきました。機内に硫黄のような臭いが立ち込めています」――。長野、岐阜県境にある御嶽山の噴火の様子を、情報番組のリポーターがヘリから伝えた。すると、放送からわずか1分後。東大教授から「硫黄は無臭だ」とツイッターでツッコミが入った。「化学で習ったでしょといつも思う」東大教授がツイッターでツッコミを入れたツッコミを入れられたのは、2014年9月28日放送「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系)の冒頭でヘリからリポートをした濱田隼平アナウンサーだ。山頂から約5キロの地点で、迫力ある映像とともに御嶽山の状況を伝えていた。これに即座に反応したのが東大大学院理学系研究科の鍵裕之教授。「バンキシャの冒頭、御嶽山からのアナウンサーのレポートは『硫黄のような臭い』で始まったが、硫黄は無臭だ」と、該当する場面の放送からわずか1分ほどでツッコんだ。温泉街などで感じる、いわゆる「硫黄の臭い」は硫黄と水素の化合物である硫化水素によるもの。硫黄そのものは無臭ということだ。「硫黄のような臭い」はメディアではしばしば使われる表現で、濱田アナに限らず、新聞や報道番組でもたびたび登場する。学術的には間違っているが、慣用として定着してしまった表現の1つと言えるかもしれない。鍵教授の指摘には、「化学系の人には常識なのだけれどね」「化学で習ったでしょといつも思う」「そろそろ硫黄は無臭で硫化水素だということをメディアは広めるべき」など、以前からメディアの伝え方に疑問を持っていた人から歓迎されている。一方で、「一般人は『硫黄臭い』って言ってもらわんと分からん」という意見があり、「硫化水素の臭い」が定着するにはまだ時間がかかりそうだ。
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