2024年 4月 20日 (土)

気候変動サミット、合意に弾み 日本の存在感かすむ

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   京都議定書に代わって2020年以降の温暖化対策の新たな国際枠組みをまとめる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)まで約1年。世界の首脳級が米ニューヨークの国連本部に集まって国連気候変動サミットが9月下旬に開かれた。難航する交渉を打開するための会議だったが、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの2大排出国である中国と米国が対策強化に前向きな姿勢を示し、合意に向けて弾みがついた形だ。

   一方、排出量世界5位の日本は東京電力福島第1原発事故から立ち直れぬまま削減目標の提出時期も示せず、存在感は一段とかすむことになった。

米中が積極的な姿勢

   世界の科学者らで作る国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は昨年から今年にかけて公表した最新報告書で、有効な対策を取らなければ、地球の平均気温は今世紀末までに最大4.8度上がり、海面水位は同82センチ上昇すると警告。世界気象機関(WMO)は9月、IPCC報告書を基に2050年の気候がどうなるかという世界各地の「気象予報番組」を動画サイトYouTubeで公開。この中でNHKの気象キャスターが2050年9月23日の気象を予報し、「熱波の影響で京都の紅葉の見ごろはクリスマスごろになりそう」などとコメントしている。

   そんな危機感の中で開かれた今回のサミットだったが、最終日の9月23日、潘基文事務総長が「我々が気候の課題に立ち向かえることを示した」との議長声明を出して締めくくった。米中の積極的な姿勢を評価してのものだ。

   米国のオバマ大統領はサミットでの演説で、「(米中は)世界の2大経済・排出国として、取り組みを主導する特別な責任がある」で強調。「途上国の温室効果ガス排出は増え続けるだろう。誰も傍観者ではいられない」として、中国に協力を迫った。対する中国の張高麗副首相も「国際社会の義務を踏まえ積極的な責任を果たしていく」と呼応した。

新枠組みの国際交渉を有利に進める狙い

   元々、米中は温暖化防止の「劣等生」だった。米国は1997年の京都会議でCO2などの排出削減目標で合意しながら、ブッシュ政権に代わると京都議定書から一方的に離脱した。

   中国は「温暖化はCO2などを垂れ流して先に成長した先進国の責任」として、削減目標を掲げることを拒否し続け、近年は、国内総生産(GDP)当たりで目標を示すまで「譲歩」していたが、GDPが増えれば排出量も増える理屈であり、実効性がないと批判されていた。ところが今回、張副首相は2020年以降の温暖化ガス削減目標について、総排出量を「早く頭打ちにして削減へ努力する」と言明し、中国としてCO2などの総量規制に踏み込む考えを示した。2016~20年の次期5か年計画で総排出量の削減目標を盛り込む方向で検討を始めているとも伝えられる。

   オバマ政権になって温暖化対策に前向きになった米国を含め、後ろ向きだった米中両国が削減に積極姿勢を打ち出したのは、最終盤にさしかかった新枠組みの国際交渉を有利に進める狙いがあるのはいうまでもない。オバマ大統領としては残り任期2年になり、実績作り急ぎたい思いがあり、中国には大気汚染対策を求める国内世論の高まりを無視できないという事情も指摘される。また、8月に南シナ海上空で中国軍の戦闘機が米軍の対潜哨戒機P8に異常接近するなど、軍事面での摩擦が強まっており、共同歩調を取りやすい気候変動問題を利用して関係改善につなげたいという思惑も両国にはありそうだ。

日本が世界の足を引っ張る形になりかねない

   他の諸外国を見ると、欧州連合(EU)が「2030年に温室効果ガス排出を1990年比40%削減」との目標を表明済みのほか、フランスや韓国などが途上国に提供する「緑の気候基金(GCF)」への拠出を表明、デンマークは2050年までに再生可能エネルギーの利用で化石燃料ゼロを目指すと宣言するなど、積極的だ。

   交渉期限まで1年という時期になって、今回のサミットは新枠組みに盛り込む削減目標案の提出時期について、各国がどこまで踏み込むかも焦点だった。提出時期が早いほど、各国の目標案の中身を相互にじっくり点検できる。各国は昨年11月、「準備できる国は2015年3月までに示す」と合意済みで、米中、EUなどはサミットでこの期限順守を改めて表明した。

   こんな中で、9月23日のサミットで演説した安倍晋三首相は、発展途上国の人材育成支援(3年で1万4000人)を表明したものの、数値目標は「できるだけ早期の提出を目指す」と述べるにとどまり、インドなどと共に提出時期を示さなかった。

   首相は第1次内閣の2007年、世界の温室効果ガス排出量について「2050年までに半減」との目標を打ち出し、「日本は国際社会をリードする」と表明していた。だが、原発再稼働の見通しが立たない今、「とても削減目標を云々できる段階ではない」(政府関係者)。菅義偉官房長官はサミット直後、削減目標策定に向け10月に審議会を設置する方針を示したが、目標の中身は原発への依存比率がポイントになるだけに、全国の原発立地自治体への影響を考えると、来年4月の統一地方選前には結論を出せないとの見方が強い。来年3月には主要国の削減目標案が出そろう中、「周回遅れ」の日本が世界の足を引っ張る形になりかねない。

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