2024年 4月 20日 (土)

慰安婦問題で朝日新聞が「反撃」本格化 「慰安所は軍の施設」研究者インタビュー掲載

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   いわゆる従軍慰安婦の女性を済州島から数多く強制連行したとする「吉田証言」記事をめぐり、取り消し、のちに謝罪に追い込まれ、「満身創痍」の感もあった朝日新聞が、あらためて慰安婦問題への取り組みを本格化させつつある。

   2015年7月2日付朝刊に掲載された特集記事では、「河野談話」が発表された1993年以降にも数多く公文書が発見され、それをもとに「慰安所が軍の施設」であったことを実証したとする学者のインタビューを掲載している。「慰安所は民間業者が運営していた」とする説に反論する内容だ。朝日は、慰安婦報道を検証する第三者委員会の検証結果を受け、「読者にわかりやすく伝える取り組みをより一層進め」ることなどを柱とする方針を明らかにしていた。

  • 朝日新聞が紙面で、慰安婦問題のインタビューを大きく取り上げた
    朝日新聞が紙面で、慰安婦問題のインタビューを大きく取り上げた
  • 朝日新聞が紙面で、慰安婦問題のインタビューを大きく取り上げた

「『河野談話』以降の研究の現状」について聞く形式

   朝日新聞は14年8月5日と6日に掲載した検証誌面「慰安婦問題を考える」で、吉田証言を虚偽だと認定し取り消したが、取り消しまでに約30年にもかかった上、誤報に対する謝罪がなかったことに対して批判が殺到。謝罪すべきだと主張した池上彰さんのコラム掲載の一時差し止めた問題や、東京電力福島第1原発の「吉田調書」問題など複数の問題がからむ形で、木村伊量社長(当時)の辞任に発展した。

   15年7月2日の紙面は、永井和・京都大大学院教授(日本近現代史)にインタビュー形式で「『河野談話』以降の研究の現状」について聞く形式だ。インタビューでは、永井教授は河野談話以降に明らかになった成果として「日本軍の慰安所は軍が設置した軍の後方施設であることを軍や警察の公文書で実証」したことを挙げている。

   例えば、1996年には警察大学校で「内務省警保局が慰安婦の募集や渡航に関して発したり報告を受けたりした一連の警察関連文書」(1937~39)が発見され、日中戦争直後に「中国戦線で日本軍が慰安所を設置し、女性を募集した経緯」が明らかになったという。

募集業者を取り締まろうとした日本警察

   軍の依頼を受けた業者が朝鮮半島や内地(日本本土)で慰安婦を募集したが、事情を知らない警察は募集を取り締まろうとした。特に和歌山の警察は「軍の名をかたり売春目的で女性を海外に売り飛ばそうとしたのではないか」とみて、刑法の国外移送目的拐取の容疑で業者を取り調べたが、軍の依頼だと分かり業者は釈放されたという。軍が、当時警察を管轄していた内務省に対して慰安婦女性の中国渡航について協力を要請していたことも明らかになった。これ以外にも、軍の教材にも、「慰安所の設置」が業務の一つとして明記されていたという。

   永井氏はこういった状況を、女性の自由意志を確認するための手続きを定めた規則も見つかっていないことなどを理由に、「慰安婦制度が『人身売買による奴隷制度だった』と批判されても仕方がない」と批判している。

朝鮮半島での物理的な強制力を使った連行を示す資料は確認されず

   いわゆる強制連行をめぐる問題では、インタビューのすぐ下に掲載された解説記事で、

「朝鮮半島で物理的な強制力を使い女性たちが連行されたとする文書は確認されていない」

と説明されている。

   朝日新聞社は、慰安婦報道をめぐる第三者委員会の検証結果を受け、14年12月26日に(1)慰安婦となった女性の多様な実態と謙虚に向き合い、読者にわかりやすく伝える取り組みをより一層進め、多角的な報道を続け、それを海外にも発信していきます(2)社内の各部門から記者を集め、継続的に担当する取材班をつくります。社外の識者とも議論を重ね、海外にも記者を派遣します(3)いろいろな視点や意見をもつ識者や関係者の見方を紹介するなどし、読者のみなさまがこの問題を考える材料を示していきます、という3つの方針を示した。その一環として、6月2日の紙面には「慰安婦問題、識者と考える」と題した識者4人による対談記事を掲載していた。

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