武藤貴也衆院議員(36)が未公開株購入を名目に知人を介して出資を募り、実際には株が購入できなかった上に出資者に資金が返還できていない問題は、自民党を離党しただけでは収束しそうもない。野党は国会審議でこの問題を追及する構えで、政府・与党も武藤議員に対して事態の説明を求めており、四面楚歌だ。そんな中でも武藤議員はファイスブック(FB)上にコメントを掲載し、反論を試みていている。だが、その内容は記事の「ネタ元」を非難するばかりで、問題視された「国会議員枠」などの問題は現時点では「スルー」。求められている「説明」とはほど遠く、火に油を注ぐ形にもなりかねない。「(文春記事は)極めて恣意的に書かれており非常に心外です」武藤議員は2015年8月19日夕方に自民党に離党届を提出し、受理された。ほぼ同じタイミングでフェイスブックを更新し、離党届提出の理由を「個人的なことでこれ以上党に迷惑をかけられないと判断したため」と説明した。金銭トラブルを報じた週刊文春の記事には相当な不満があるらしく、「極めて恣意的に書かれており非常に心外です」など怒りをぶちまけている。武藤議員は党から離れた以上、党としてコントロールできない「野に放たれた」状態で、比較的自由に情報発信ができるようになったとも言える。武藤議員が矛先を向けているのは、文春記事のネタ元の「学生時代の知人A氏」。文春記事によると、武藤議員はA氏にLINEで「来月新規公開株の取引の話があり、最低でも2倍になると言われています。内々で俺に取引を持ちかけてきているのだけど元手がありません」「あとこの案件はクローズだからね。正直証券会社からもうちが国会議員のために枠を抑えてるのとが(原文ママ)一般に知れたら大変だと言っています」と内密に未公開株を購入するための資金を募るように求めたとされる。文春記事では、武藤議員側の言い分を「自身の資産運用として、A氏とそのビジネスパートナーの事業資金に累計1億円を貸し付けており、それが返済されないことが原因だと釈明する」と伝えている。A氏に民事訴訟を起こしたことも明かすFBのコメントでは、A氏について「彼は当初2回ほど利回りの全部または一部を支払っただけで、あとは色々と理屈をつけて利回りどころか、元金も返してくれなくなりました」などと説明。すでに東京地裁で民事訴訟を起こしたことを明かした。武藤氏はA氏と文春記者を非難する一方で、記事中で指摘された(1)出資者に資金が戻っていない(2)未公開株購入をめぐる「国会議員枠」、といった問題には全く触れていない。「自らの非を一切述べることなく、逆にあたかも自分が被害者であるかのような話をしており、週刊誌の記者さんもA氏とのLINEのやりとりをご覧になっているのであれば、A氏が詐欺としか思えない言い訳を延々と続けている内容をご覧になっているはずなのに、今回の一方的な記事内容に関しては大変驚いています」議員辞職についても「一方的かつ事実と異なる週刊誌の記事のために議員辞職することはできません」と、強く否定した。離党から一夜明けた7月20日、政府・与党からは突き放したようなコメントばかりだ。「いやしくも、そうした疑念が投げかけられた以上、これは単なる離党だけでは済まない問題。国会議員として、自らがきちんとその事実を国民に説明する、それが今一番求められていることだろうと思う」(公明党・山口那津男代表)「国会議員は常に自らの行動については責任を持つべきであって、武藤議員が国会議員として、きちんと説明をすべき問題」(菅義偉官房長官)一方の野党は、この問題を国会審議で追及する構えだ。8月21日の参院平和安全法制特別委員会には安倍首相が出席し、礒崎陽輔首相補佐官が法案について「法的安定性は関係ない」などと発言した問題をめぐって集中審議が行われる。民主党の蓮舫代表代行はこの審議に質問者として登板予定で、8月20日の会見では、武藤議員の問題について「どこまでが本当で、そこまでがそうじゃないのか、ちょっと分からない。その部分において、明日総理に直接うかがおうと思っている」と話した。
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