歯止めのきかない原油価格の下落 現実味増してきた産油国「通貨危機」

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今はいいが、巡り巡って日本経済への打撃も

   日本など石油輸入国にとって価格下落はありがたい面が多い。すでに国内のガソリン平均小売価格は12月2日発表で1リットル=130円を割り込み、5年9カ月ぶりの安値水準だ。北海道などで灯油の価格は1年前に比べ約3割安くなっている。原油相場の下落で電気やガス料金の引き下げも続き、12月の標準家庭の電気料金は東京電力管内で7518円と1年で870円も下がるなど、家計や企業への恩恵は大きい。石油元売りや商社などの収益にはマイナスだが、ユーザーである化学や運輸などの業界の収益押し上げも期待できる。

   しかし、相場低迷の産油国への影響は注意して見て行く必要がある。

   例えば、原油など資源安でマイナス成長が続くブラジルは、通貨レアルがこのところ1ドル=4.2レアル台を付けるなど最安値水準にある。政権批判が大統領の弾劾審議入りを招いて政情不安も高まり、それがさらに経済を委縮させる悪循環に陥っている。財政的に体力があるとされるサウジにしても、同国通貨庁が大株主になっている日本の上場企業が、9月末時点で30社と半年で半減するなど、財政余力の低下がささやかれる。

   これは、予想される米国の利上げとも相まって、資源国の通貨危機を招く懸念が広がっている。原油相場のさらなる下落の可能性が取りざたされるなかで、そうした不安が現実味を増していけば、巡り巡って日本経済への打撃になる。「原油安」への油断は禁物だ。

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