「もうあかんやめます!」――。20年にわたって店先に閉店セールの垂れ幕を下ろしている大阪・西天満の「靴のオットー」がホントに閉店するのかと、インターネットで話題だ。西天満交差点の角に建ち、すすけた黄色い看板には赤字で「店じまい売りつくし」の文字が躍るのが、過去に「いややっぱりやります!どっちやねんセール」という垂れ幕をかけていたこともあるそうで、今回も「いったい、どっちなの?」との声が寄せられている。過去には「いややっぱりやります!どっちやねんセール」「靴のオットー」は、大阪駅から約1キロメートル離れた西天満のオフィス街にある、床面積30平方メートル足らずの店。「大阪一安いとうわさの靴店」がキャッチフレーズで、店主の竹部浅夫さん(74)は靴底の厚みで身長を高く見せる「シークレットシューズ」の発案者として日本で初めて販売したという。店を開いた1977年当時は、まだ珍しいディスカウントによる販売で、店内にはビジネスシューズからカジュアルシューズまで、豊富なラインアップの靴をそろえていた。「もうあかん やめます! 換金セール」「店じまい売りつくし」――。こんな看板が目立つようになったのは、バブル崩壊後の客足が激減したとき。にっちもさっちもいかない、不安な思いを垂れ幕にしたためたところ、それを見た地元の人から「がんばってほしい」と励まされ、なんとか踏ん張ってきたようだ。20年にわたって「もうあかん」と訴え、店先には今でも「ほんまにしんどい!靴こうて!お願い~です」「元祖もうあかんやめます!」といった、手書きの立て看板がかかる。これまでも、「もうあかん」の垂れ幕の横に、「いや やっぱりやります! どっちやねんセール」の幕がかかったり、シークレットシューズを売るために「格差社会を是正せよ。身長の格差は当店で。人は見た目が9割だから!」の垂れ幕を用意したり、大相撲の朝青龍関の引退騒動の際には「横綱も、この店も、土俵際。出直しセール」といったユニークな垂れ幕がかかり、大きな反響を呼んだ。地元の人も「もう、ずいぶん前から(『もうあかん』の看板が)かかってるで」と笑い飛ばし、こうした看板や垂れ幕そのものが「靴のオットー」の「売り」になっていたというわけだ。「おいおい、もう20年かよ。ホンマはまだまだやろwww」そんな「靴のオットー」が、今度ばかりは本当に閉店するという。2016年1月24日付の産経新聞が2月20日に閉店すると報じた。店主の竹部浅夫さんが体調を崩して、店頭に立ち続けることが難しくなり、2015年11月末に閉店を決意したようだ。インターネットには、「そうか、あかんか。閉店はさみしい」「おいおい、もう20年かよ。ホンマはまだまだやろwww」「12年前ここで2回ほど買わせて頂きました。とうとう閉店するんだ」「ずっと閉店セールの店、心斎橋にもあるけど観光客でにぎわってるわ。大丈夫やで」「今後はゆっくり休んでください」「最近、幟の新作がないなあと思っていたら、こういうことだったのか・・・」「買い物はしたことないけど、いっぱい笑わせてもらったお店だけに少し悲しい」といった半信半疑の声や「まだまだ、やれる」と応援の声が寄せられている。なかには、「これってオオカミ少年じゃん。違法じゃないんか」などと広告規制に抵触するとの声もある。とはいえ、「靴のオットー」は現在、閉店を惜しむ知人ら有志が平日を中心に13~20時ごろまで、竹部さんに代わって店番をしている。その一人、近くで司法書士事務所を開く小山秀司さんに、J-CASTニュースが電話で話を聞くと、「現在の場所から、お店がなくなることは間違いありません」という答えが返ってきた。閉店の理由には、建物の老朽化もあるのだという。しかし、「建て替え後にどうなるかはわかりませんし、お店を継ぐ人もいませんので、物理的に閉店ということです」と話す。一方で、「大阪の人は『もうあかん』『閉店セール』の看板を、ほとんど信用してませんよ」と、含みのある言い方もしている。やっぱり、まだまだわからない。
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