2024年 5月 6日 (月)

グーグル全ドメインで検索結果を削除する方針 EUで「忘れられる権利」運用が拡大

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   欧州連合(EU)で法制化が進んでいる、いわゆる「忘れられる権利」をめぐって、検索エンジンの運用が変化することになりそうだ。これまでは、検索エンジンの代表格とも言えるグーグルは、検索結果を削除する対象を、欧州各国向けサイトの検索結果に限ってきたが、これを全世界のグーグルの検索サイトに広げる方針を固めた。

   ただ、これはEUから検索した場合に限った話で、それ以外の国から検索した場合の検索結果はこれまでどおりだ。「これでは規制当局は満足しないのでは」との指摘もあり、今後、グーグル側はさらに対応を迫られる必要もある。

  • 検索エンジンをめぐる「忘れられる権利」の運用が注目されている(写真はイメージ)
    検索エンジンをめぐる「忘れられる権利」の運用が注目されている(写真はイメージ)
  • 検索エンジンをめぐる「忘れられる権利」の運用が注目されている(写真はイメージ)

「google.fr」では削除されても「google.com」ではそのままだった

   EUの欧州司法裁判所は2014年5月、EUに住んでいる人が自らの情報についての検索結果の削除を、検索エンジン運営会社に対して求めることができるとする裁定を出した。「忘れられる権利」を認めたわけだ。これを受けてグーグルは諮問委員会を設置し、15年2月に対応方針を示した報告書を発表。この報告書では、裁定の適用範囲はEU圏内に限定されているとして、EU各国版の検索エンジンに限って削除を続けてきた。

   例えば、フランス在住の人が自らの情報について削除を依頼した場合、フランス版の「google.fr」では削除依頼が反映されるが、それ以外の「google.com」や「google.co.jp」から検索した場合は、削除依頼前の検索結果が表示されていた。いわば、「抜け道」があるという訳だ。

   グーグル側は、フランス国内から「google.com」にアクセスしても「google.fr」に転送されるため、地域版から検索結果を削除すれば、削除依頼をした人の権利が守られると主張。全世界的に削除した場合は「全世界の情報にアクセスできる」といった公共の利益と競合すると指摘している。

   一方、EUデータ保護指令第29条に基づいて設置される助言機関「第29 条作業部会」が14年11月に公表したガイドラインでは、地域版の削除だけでは十分に削除依頼をした人の権利が守られないとして、「.com」を含めたあらゆるドメインで削除すべきだと主張。議論は平行線が続いていた。

IPアドレスでEUからアクセスした人を判別

   この状況は、16年2月11日頃から変化しつつある。英BBCや米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、フランスのデータ保護当局は15年に入ってから全ドメインで検索結果を削除するように要請。従わない場合は制裁金を科す可能性もあった。

   これを受けてグーグルは、すべてのドメインで検索結果を削除する方針に転じたようだ。ただ、今回の措置はEUからのアクセスに限られる。具体的には、IPアドレスでどこの地域からアクセスしているかを判別する。例えばEU圏内から「google.com」にアクセスすると、削除依頼が反映されるが、米国や日本からアクセスした場合は削除前の検索結果が表示される。

日本の有識者会議は「現時点で確定的な解釈を与えることは難しい」

   ただし、今回のグーグルの対応は「小手先」だと見る向きもあり、ウォール・ストリート・ジャーナルは、

「グーグルの(方針)変更は妥協として行われたが、これで当局が満足するかは不透明だ」

と指摘。今後、グーグル側はより広範囲での削除対応を迫られる可能性もある。

   グーグルの報告書によると、裁定があった14年5月以降に受け取った削除依頼は約39万件で、そのうち42%を実際に削除している。

   日本では、削除を求める人が裁判所に仮処分申請を行い、それが認められて削除に至ることが多い。ヤフー15年3月、削除依頼に応じる際の基準を公表したが、基準策定のための議論を続けてきた有識者会議は、

「日本の事案と欧州の事案とを単純に比較することは難しく、削除を求める情報の内容が異なっていること、削除の請求根拠となる法制度が異なることなどに留意する必要がある」

と指摘。国内での事例を検討した上でも、

「現時点で確定的な解釈を与えることは難しく、今後も議論と検討を重ねていくことが必要だ」

としている。

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