2024年 4月 23日 (火)

【女の相談室】出産時の安易な会陰切開やめて 産後の体に障害残る恐れ

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   初めての出産を迎える女性にとって、陣痛より心配でこわいといわれる会陰切開。出産をスムーズに行なうため、妊婦の膣の周囲を麻酔も使わずにハサミで切って広げる措置だ。「切らないですむなら切らないで」と願う女性は多い。

   この会陰切開について、米国産科婦人科学会が2016年6月22日、「妊婦に様々な障害が残る可能性があるので、ルーティンで(お決まりの作業として)行なうべきではない」とする声明を発表したことが、日本のママたちのサイトでも話題になっている。

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陣痛が痛すぎて、切られたことに気づかない人も

   会陰切開は、お産が長引き母子ともども体力の限界に近い場合や、胎児の状態が悪く早く出さないと会陰部が大きく裂けてしまう危険がある時などに、膣の周辺をハサミで切る措置だ。通常は、陣痛の痛みの方が大きいため麻酔を使わない。ひと昔前は、出産を楽にするため陣痛が始まるとすぐに切る医師が多かったといわれる。出産を控えたママたちのウェブサイトを見ると、こんな恐怖の気持ちがつづられている。

「もうすぐ妊娠34週目になりますが、陣痛のことより会陰切開がこわいです。私の母親いわく、切る時は陣痛が痛すぎて、切られたことに気がつかないくらいだけど、その後、麻酔なしで縫うのが陣痛より痛かった、とか」
「あたしの場合、はっきりいって陣痛真っ最中でしたから、痛くありませんでしたよ。あたしも、陣痛より怖かったですが、先生に『切るよ~』って言われても、『早く切って出してくれえぇぇ~!』って感じでした。脅すわけじゃありませんが、陣痛ってスゴイです」

宋美玄さんが米国学会の声明に「当然の推奨」

   米国産科婦人科学会が出したのは「経膣分娩(通常の出産)に伴う裂傷の予防と管理」という声明だ。それによると、米国ではルーティンで会陰切開を行なっている医療機関は、2000年の時点で33%もあったが、2012年には12%に減った。「しかし、依然として10人に1人の妊婦に対し、分娩時の状態を考慮せずに機械的に会陰切開が行なわれているのは問題で、どうしても必要な場合に限るべきだ。会陰切開は産後の便失禁のリスクを高め、性行為を再開するのが遅くなり、性交痛を訴える割合が高くなるおそれがある」と指摘した。

   この声明がインターネット上で報道されると、出産を控えるママたちのウェブサイトにこんな声があがった。

「米国で全員切るところが1割も残っているなら、日本にはどのくらいあるの? 会陰切開を行なわない方針を掲げる分娩施設を探したいのですが...」

   女性に支持が多い産婦人科医の宋美玄さんが、自身のウェブサイト「宋美玄のママライフ実況中継」(7月6日)でこの声明を取り上げ、「会陰切開はデリカシーとは関係ありません」と題し、こう語った(要約抜粋)。

「米国産科婦人科学会が、会陰切開をお決まりの作業として行なわず、限られた状況で実施すべきとしたことは、当然の推奨です。会陰切開は状態が悪い胎児を少しでも早く分娩させるために行なわれます。無傷で出産できれば、それが一番素晴らしいことですが、頭が出かかった状態で会陰が伸びきってしまい、切らなかったために、膣の壁に複雑な深い傷ができたり、肛門まで傷が伸びたりすることがあります。『会陰切開を受けるかどうか自分で決めたい』と考える妊婦さんもいますが、それはなるべく帝王切開をしたくないというのと同じで、実際にトライしないとわかりません」

   そして、こうつけ加えた。

「一部では、『医者はすぐ切りたがる』という声を聞きますが、日本では切開するのも傷を縫うのも医師の仕事ですから、切らないに越したことがないというのが大半の産婦人科医の意見のはず。もし、日本でまだお決まりで行なっている施設をご存知の方がいたら教えてください」

分娩台では「お姉さん座り」のように足を広げよう

   その1週間後の7月13日、宋美玄さんはサイトの中で「会陰切開の記事に反響続々 いまだに生き残る全例切開の施設」と題し、こう語った(要約抜粋)。

「(前回のコラムで)今時、全例に会陰切開をしている施設があるでしょうか、と書いたら、『そういう施設がある』『私は切られた』という声をたくさんいただきました。事前に母親学級で『全員切ります』と説明を受けた方がおり、医師・助産師からも『全例切っている』という声があったことはとても残念です」

   やはり、日本でもお決まりで行っている所が少なくないようだ。その上で宋美玄さんは、会陰が広がりやすくなる出産方法をこうアドバイスしている。

「分娩台では通常足をカエルのように開きますが、その際に外側に開くのではなく、『お姉さん座り』のように内側に回すようにすると、坐骨が開いて会陰が伸びやすくなります。ほかにもいろいろな方法があり、ガスケアプローチの講習会で学べますよ」

   ガスケアプローチとは、フランスの女性医師ベルナデッド・ド・ガスケさんがヨガを応用して確立した、出産のための呼吸や体力づくり、分娩体位の方法。骨盤底低筋群に働きかけるのが特徴だ。最近、日本でも広まっている。NPO法人・日本ガスケアプローチ協会のホームページで講習会などがわかる。

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