緊急座談会:医師が語るWELQ問題(後編)
正しい医療情報を読んでもらうために

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   DAA(アンチエイジング医師団)3人の医師の座談会で、前編ではメディア全般における医療情報の取り扱いや、「偽情報」による医療現場での実害の例についてさまざまな意見が出た。

   後編ではインターネット媒体に絞って、医師の側からの情報の出し方について議論を深めてもらった。

  • 座談会に集まったDAA(アンチエイジング医師団)の3人(左から)大慈弥氏、山田氏、塩谷氏
    座談会に集まったDAA(アンチエイジング医師団)の3人(左から)大慈弥氏、山田氏、塩谷氏
  • 意見を述べる山田氏(左)と大慈弥氏
    意見を述べる山田氏(左)と大慈弥氏
  • 塩谷氏はDAA代表を務める
    塩谷氏はDAA代表を務める

検索結果には「落とし穴がある」と理解しよう

【座談会出席者】

塩谷信幸氏(北里大学名誉教授、DAA代表)
山田秀和氏(近畿大学医学部奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長)
大慈弥裕之氏(福岡大学形成外科学主任教授・形成外科診療部長)
(司会はJ-CASTニュース編集部)

   ――ネット上での医療情報で、信用できるかどうかをユーザーが見極めるためのアドバイスをお願いします。

大慈弥 美容医療の場合は、まず誰が発信しているかを確認することです。とはいえ、医師の中にも根拠のない情報を流していることがあります。そこで、例えば「絶対治る」という表現があれば、まず疑った方がよいでしょう。医療に絶対はありません。なお厚生労働省は、医療機関のウェブサイトの掲載内容に関するガイドラインを設けています。
山田 公的な医療機関の情報は信頼できますが、逆に誰でも知っているような内容ばかりで、新鮮味のないのも事実。だから「ネットでもっと詳しい情報を」と探してしまう。例えばネット検索した際に、信頼できる情報が必ず結果の上位に表示される仕組みになってほしいと思います。
塩谷 大きなくくりで言いますと、メディアリテラシーの問題です。若い人はスマートフォンで検索して調べるのが前提になっている。そこで課題のひとつは、いかに正しい情報へと導くか。もうひとつは、情報の受け手は検索結果には「落とし穴がある」と理解したうえで、自分の常識を大切にしようと言いたい。
   情報を提供する側については、怪しい情報を出している場合、そこに商売のにおいがするものがあります。最終的に自分の商品やサービスに落とし込もうとする。あまりにあざといと感じたら、気をつけるべきでしょう。

エンタメがひとつの軸になる

   ――患者としては「もっと安心したい」と思うから事前にネットで調べ、ますます疑心暗鬼になることはあると思います。医師と患者の間での、直接のコミュニケーションという点でお考えを聞かせてください。

山田 私が若いころは、(大学で)データを読む訓練は受けても患者とのコミュニケーションのトレーニングはありませんでした。医者の中には、人付き合いが苦手なタイプの人もいるぐらいです。
大慈弥 患者によっては、主治医に細かい質問を聞きにくいとの意見を耳にします。こうした場合は、医師と患者の間で情報が十分に行き渡っていません。
山田 米国の病院では、例えばがん治療の場合、医師だけでなく専門のトレーニングを受けた看護師がサポートする態勢です。患者は医師の診断を受ける前に、自分の詳細なデータを持った看護師が十分な時間を設けて説明してくれます。医師との会話は短時間でも、面会の後に今度は別の看護師が出てきて患者をケアしてくれます。

   ――では皆さんは、ネットを通じて正しい医療情報をユーザーに届けるにはどうすればよいとお考えですか。

大慈弥 正しい情報を発信しているところを、企業が支える仕組みをつくるのはどうでしょう。例えば健康関連事業を手掛け、なおかつきちんとエビデンスを出している企業とタイアップするのです。
山田 繰り返しになりますが、「サイエンス」と「ヘルス」は別物であり、分けるべきです。さらに、ヘルスは「健康」と「疾患」を区別する必要があるでしょう。健康情報は例えば機能性表示のように、健康増進の領域です。
   「疾患」については例えば製薬業界がサポートし、学会に属しているようなオーソライズされているところが情報を出すとよいでしょう。ウェブサイトを見たら玉石混交の情報が散らばっているのではなく、エビデンスのある、出典がはっきりした「玉」だけが並ぶようにしてほしい。
   なお、論文や学会発表についても注意が必要です。まず論文は、あるレベル以上の雑誌から出版されたものなら、必ず2人以上の専門家が内容や表現が適切かを評価し、修正などを繰り返しています。しかし論文だからと言って、必ずしも全部がこうした水準とは言い切れません。また学会発表は論文とは違いますから、学会で報告されたというのをうのみにするのはよくないでしょう。
塩谷 医師が伝えたいことと、一般の人が知りたいことはギャップがあります。私は、正しい情報を伝えるうえで「エンターテインメント」がひとつの軸になると考えます。その要素がないと、誰も読んでくれません。極端に言えば、9割がエンタメでもいいと割り切らなければならないと思うのです。私たちが主張したい内容をメディアに正しく取り上げてもらううえで、医師のメディアトレーニングにも取り組んでいきたい。
   私がDAA(アンチエイジング医師団)を立ち上げたのは、テレビやネットできちんとした情報を伝える目的です。しかし医師の側は受け身で、テレビ局から求められて初めて出演、コメントする立場にならざるを得ません。「医師団」としてももう一度原点に戻り、医療情報の発信について考え方を確認すべきだと思いました。

(おわり)

(メモ)DAA(アンチエイジング医師団)
「最先端の安全な医学/医療情報の提供と実践」のために結成された医師集団。予防医学/医療、美容、ライフスタイル、コミュニケーションなど幅広い分野から考えられた「前向きに年を重ねるための処方箋」の提案を行っている。


略歴

塩谷信幸(しおや・のぶゆき) 北里大学名誉教授、DAA代表
東京大学医学部卒。東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科、北里大学形成外科教授。現在、日本抗加齢医学会名誉顧問を務め、形成外科、美容外科、アンチエイジング医学の発展に尽力している。

山田秀和(やまだ・ひでかず) 近畿大学医学部奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター副センター長
近畿大学医学部卒業、同大学院修了。近畿大学在外研究員(ウィーン大学)、近畿大学医学部奈良病院皮膚科助教授を経て現職。日本皮膚科学会専門医、日本東洋学会指導医、日本アレルギー学会指導医、日本抗加齢医学会専門医。

大慈弥裕之(おおじみ・ひろゆき) 福岡大学形成外科学主任教授・形成外科診療部長
福岡大学医学部卒業。防衛医科大学校皮膚科、北里大学病院形成外科、福岡大学医学部整形外科、福岡大学病院形成外科助教授、ボストンこども病院Brigham & Women's hospital留学を経て2005年より現職。

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