2024年 5月 3日 (金)

【2016回顧】J-CAST書評ランキング  『京都ぎらい』『23区格差』『天才』がベスト3

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共通する「格差」

   2位に入ったのは『23区格差』(池田利道著、中公新書ラクレ)を扱った記事だ。「港区904万円、足立区323万円」――。同じ東京といっても、区によって住民の所得水準や生活環境に大差があるということをデータで示して衝撃を与えた。記事を公開したのは7月17日。ちょうど都知事選の時期だった。これからの東京をどうするか。参考情報が満載ということで関心を集めた。

   ほぼ同数で3位にランクインしたのは『天才』(石原慎太郎著、幻冬舎)を紹介した記事だ。著者が元首相に成り代わり、自分の人生と業績を一人称の語りで回顧する異色本だ。当然ながら自己弁護、自画自賛に。書かれた内容をそのまま信じていいのか。J-CASTの記事では、元首相を辞任に追い込んだ『田中金脈研究』(立花隆著)の記述とのズレなども指摘した。今年は多数の「角栄本」が出たが、それらのいくつかも併せて紹介した。

   ベストスリーの3冊には、共通項がある。「格差」だ。『京都ぎらい』は洛中育ちの「本当の京都人」が、それ以外の人を「見下している」という「育ちの格差」を書いていた。『23区格差』はズバリ、住んでいるところによる「居住地格差」。ともに多くの人がふだんから漠然と感じていることを、はっきり示した。

   『天才』の主人公、田中元首相は、「格差克服」の人だった。政治家として地方のテレビ局、地方への高速道路、地方新幹線、地方空港建設などに力を注ぎ、「都市と地方の格差是正」に力を注いだ。自身は高等小学校卒。「学歴格差」をものともせず、底辺から這い上がった「立志伝中の人」「今太閤」だった。

   「格差社会」が叫ばれる今の時代。三冊とも期せずして「格差」と関係していた。田中元首相が今も人気なのは、「格差」に挑戦した姿が共感を呼ぶからなのかもしれない。

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