2018年 7月 19日 (木)

ウソのセックス演技でオスを品定め ヤツメウナギのメスが怖すぎる

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   数十匹ものオスとメスが集まり「乱婚」をするヤツメウナギ。メスは多くのオスと100回以上も交配を繰り返すが、実は大半が卵を出さない「ウソの交配」であることが北海道大学の小泉逸郎准教授らの研究でわかった。

   乱婚状態の中でもシッカリと頼りになるオスを見極め、これはというオスにだけ卵を託すメスのしたたかな戦略が明らかになった。研究成果は環境専門誌「Journal of Ethology」(電子版)の2017年1月19日号に発表された。

  • 川床の巣の上で「乱婚」するヤツメウナギの群れ(北海道大学提供・森田健太郎氏撮影)
    川床の巣の上で「乱婚」するヤツメウナギの群れ(北海道大学提供・森田健太郎氏撮影)

100回以上の交配のうち65%は「イッタふり」

   北海道大学の発表資料によると、ヤツメウナギはウナギに似た細長い魚で、海や川に生息する。川床に石を並べた1つの産卵場所に数十匹ものオスとメスが集まり産卵をするが、1回ごとの産卵ではオスとメスがペアを作る。メスの細い体には頭の先から尻尾の方まで約1500~2000個の卵が詰まっており、オスはメスの体にヘビのように巻きつき、卵を絞り出させるようにしてメスに産卵を促す。そして、メスが卵を生み落す行動をとると、精子を放出し受精させる。

   メスは、この交配行動を多くのオスと数十回、時には100回以上も行なうことが謎だった。なぜなら、長時間の交配活動はエネルギーの無駄だし、交配中は天敵に襲われやすいからだ。動物は無駄なことはしない。サケなど多くの魚は交配を1回で終わらせる。しかも、小泉准教授がヤツメウナギのメスの交配行動を詳細に観察すると、大半は卵を出していないことがわかった。

   ヒトやボノボなど高等な霊長類も、妊娠を目的としないセックスを盛んに行なうが、それはセックスを武器にオスとの絆を深め、オスを子育てに参加させるメスの「繁殖戦略」といわれている。また、鳥の中には、メスが複数のオスと交尾し、誰が雛の父親か明らかにしないことで父親候補たちから子育ての協力を得るものもいる。

   しかし、ヤツメウナギの場合は、オスもメスも産卵が終わると死んでしまうから、オスを子育てに参加させる「繁殖戦略」には当たらない。無駄に見える「ウソの交配」がメスにとってどんなメリットがあるのか。小泉准教授は次の2つの仮説を立てた。

   (1)メスがオスを選び、産卵するか否かを決めている「配偶者選択説」。

   (2)細長い体に卵が詰まり、一度に産卵できない「体型的な制約説」だ。

   2つの仮説を検証するため、メス1匹にオス1匹を入れた水槽と、メス1匹にオス3匹を入れた水槽を作り、交配活動を観察した。メス15匹を使い、合計15回繰り返し実験した。各メスは平均で77回(範囲20~196回)交配した。そのうち、卵を産卵しない「ウソの交配」の割合は平均65%(範囲35~90%)にのぼった。オスの数が多い時に「ウソの交配」の割合が増加した。また、産卵1回あたりの卵数も減っていた。これは、メスが産卵相手のオスを選んでおり、産む卵数を調節していることを示す証拠だという。

オスがメスのウソに気づくかどうかが生命線

   今回の結果について小泉准教授は、J-CASTヘルスケアの取材に対しこう語っている。

「これだけ乱婚性の高い魚が、オスとメスが入り乱れて交配している最中に、しっかりオスを見極めていることは驚異的です。オスは産卵のために石を運んで巣作りをしますが、その巣作りの貢献度や体の大きさなどを基準に評価していると思われます」

   ところで、交配の最中にメスに「ウソの演技」をされたオスは、それを知らずに射精してしまうのだろうか。だとすると、あまりにも気の毒だが、小泉准教授はこう語っている。

「その質問は非常に面白い視点です。精子は見えづらいので毎回放出しているどうかは確認できませんでしたが、『ウソの交配』でも放出している例が普通にみられます。オスがメスのウソに気づくかどうかが、オスにとって、子どもを残す大事なポイントになると思います」
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