2024年 4月 20日 (土)

たったひとりでPTAに立ち向かったママ 「私は壮絶バトルで役員免除を勝ち取った」

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   春は、可愛いわが子の入学・進級シーズンだが、母親にとっては憂うつな季節でもある。それは入学式などの後の保護者会で必ず行なわるPTA役員選び。

   好きで役員を引き受ける人はほとんどいない。あの手この手で「押し付け合い」が行なわれるが、インターネット上で「欠席戦術」で逃げ切った投稿が話題を呼んでいる。一方、正々堂々とPTAと闘い、「役員免除」を勝ち取った人もおり、PTAの役員選びを乗り切るコツを本人から聞いた。

  • 入学式は母親には憂うつPTA役員シーズン(写真はイメージです)
    入学式は母親には憂うつPTA役員シーズン(写真はイメージです)
  • 入学式は母親には憂うつPTA役員シーズン(写真はイメージです)

「切迫早産」なのにまったく考慮されない

   「欠席戦術」で話題になったのは、女性向けサイト「発言小町」(2017年1月29日)の「PTAやらなかったの私だ」という次のような投稿(要約抜粋)。

「フルタイムで働いている6年生の母親です。6年生まで立候補しなかったら勝手に広報部にされました。退会届を出して抵抗してもムダと思い、部長を決めるくじ引きの日も欠席、学校からの電話にも一切電話に出ないようにしています。子どもの卒業まで数か月。ずるいと思う親も多いでしょうが、私のように誰かが悪者にならないと、何も生み出すものはないでしょう」

   この投稿には激しい賛否両論が起こった(要約抜粋)。

「やる気がないなら1年生の時に退会してください」
「精々頑張って逃げ続けてください。中学でもPTAありますよ。小学校で悪目立ちした人は責められる確率高いです」
「こんな悪どい人がいるから、他の役員さんは大変だわ」

などと非難する一方、こんな共感の声も。

「正当防衛です。よく頑張られましたね。仕事をしていると、『平日の会議には出られないから自宅で○○やるわ~』と申し出て欲しいと言われますが、それ、意味ないです。自宅でもやる時間も体力もないから『できない』と言っているのですから。PTAは腐っています。もう国主導で改革をしなければダメ」

   PTAは任意団体だから、本来、入退会は自由だ。だから、役員選びも本人の意思を尊重するのが建前である。しかし、現実には嫌々役員にさせられている人が非常に多い。2014年3月3日付の週刊誌「アエラ」の「横暴すぎるPTA役員選び 切迫早産なのに免除されない」は反響を呼び、それ以後、同誌編集部内に「ワーキングマザー1000人委員会PTA部会」が作られ、数か月ごとに特集記事が掲載されている。こんな内容の記事だった(要約抜粋)。

「福岡県の女性(42)は3人目の妊娠7か月、切迫早産のため自宅安静を医師から指示されていた。PTA懇談会で事情を説明したが、まったく考慮はなし。『妊娠は免除』の前例を作るわけにはいかない、との論理だ。『みんな内心では同情してくれている。でも、それを口に出すと自分にお鉢が回ってくるから、黙っているしかないんです』」

「何このスピーディーな押し付け方は!」

   そんな中、J-CASTヘルスケアは、PTAとの壮絶バトルの末、理不尽な役員の押し付けをやめさせることに成功した女性に取材した。千葉県に住む40代のマリコさん(仮名)だ。4児のママで、自分で起業した会社を経営している。

   2年前の2015年3月、小学5年の長男が小学校から「手紙」を持ち帰ってきた。PTA会長(男性)名で「来年度のPTA役員に選任されたので、明日の会合に出席してほしい」旨が書かれていた。マリコさんは以前、長男の学童保育の会長を務めた。それまでの年間活動記録も残さない非合理的な運営を改革し、活動内容をファイル化するなど新しいことをどんどん行なうと、運営しているNPOには喜ばれた。しかし、前の役員たちから「私たちのやり方が悪いってわけ?」という猛反発にあい、こりていた。

   また、長男の下に5歳・3歳・生後5か月の幼い3人の子を抱えていた。ちょうど産休明けで仕事に復帰したばかりで、経営者として会社をみなくてはならない。しかも、会合の前日に呼び出すあわただしさだ。「何このスピーディーな押し付け方は!」と怒りがこみ上げた。長男にPTA会長あての「質問状」を持たせ、(1)選出にいたった経緯(2)その根拠となるPTA会員規約(3)会合の前日に召集する理由、の説明を求めた。数日後、息子が「回答状」を持ち帰った。規約のコピーとともにPTA会長の手紙が入っており、「うやむやの中で選任手続きが行なわれ申し訳ありません。しかし、ご協力いただけないでしょうか」とあり、後日会うか電話で話したいと書かれていた。

PTA会長「私も凶悪なママたちにはうんざりで...」

   そこで、マリコさんはPTA会長に電話した。

マリコさん「私は学童の会長をした経験からもPTA活動には不向きと思われます。ズケズケものを言う性格ですから皆さんともめます。悪いことは言わないので、私を外した方がいいですよ」

   さらに乳児を含め就学前の子が3人いること、1人で会社を切り盛りしなければいけない事情も説明した。

PTA会長「それは大変ですね。でも、それも含めて公平に選任しないと...」
マリコさん「公平って何ですか? 置かれている状態が厳しい人とヒマな人とがいるわけですから、公平であるわけないじゃないですか。罰ゲーム的にボランティアを押し付け合うPTAの体質は変えるべきです」

   PTA会長は愚痴をこぼし始めた。

PTA会長「いや、実際そのとおりですが......。私も会長を務めていて、もう凶悪なママたちにはうんざりで......。母子家庭の人やフルタイム勤務の人などを役員選任から免除してあげたくて会則に盛り込もうとしたところ、『ずるい!』という猛反対が起こって、結局、役員を2年続けた人だけになりました」

   さらにPTA会長は泣き落としに入った。

PTA会長「あなたのような人が執行部に入ってくれたら、私は本当に助かるんですが......」
マリコさん「なぜ私が突然、役員に決まったか、そこがはっきりしないとお引き受けできません。誰かが『ずるい』と言ったからでしょうか。私は最終手段として、PTA会費を払ったうえで、退会することも考えています」

   実は、マリコさんは別のルートからいったん新役員が決まった後に、「マリコさんが役員をやっていないのはおかしい」と言い出した人物がいて、ひっくり返したことを伝え聞いていた。PTA会長は「退会は前例がありません。検討してまた後日電話します」と言い、電話を切った。

PTAを退会すると卒業式の記念品がもらえない?

   結局、PTA会長からの連絡はなく、マリコさんの役員の話は立ち消えになった。長男は小学校を卒業、現在中学1年になっている。その間、もしPTAを退会した場合に備え、長男が理不尽な目に合うことがないよう対策を考えた。たとえば、校庭で児童が休むベンチをPTAが寄贈している。また、卒業式にはPTAが卒業生一人ひとりに記念品を贈る。長男がベンチに坐れず、卒業式に記念品をもらえない事態まで心配したのだ。

   実際、週刊誌「アエラ」がPTA問題を特集した「必要? 不要? PTA」(2014年4月17日号)では、PTAを退会した鹿児島県の40歳女性が経験した「いじめ」を紹介している(要約抜粋)。

「長女の時の役員選びの煩わしさから、次女の小学校入学と同時にPTA退会届を出すと、すぐさま校長に呼ばれ、こう非難された。『道義的に問題がある。ほかのお母さん方に説明してください』。どうにか退会届は受理されたが、今度は担任から電話があった。『非会員の子どもは夏休みのプールには保護者同伴でなければ入れません』。PTAの母親たちが当番でプール監視をしており、非会員の子どもは監視しないというのだ。当時、女性は3人目を妊娠中で、炎天下のプールサイドに立てるわけがなく、途方にくれた......」

PTAと闘うには規約などの「文書」を確認しよう

   さて、話をマリコさんに戻そう。J-CASTヘルスケアは改めてマリコさんにPTAと闘ううえで大事なポイントを聞いた。

――みんながあなたのように闘うにはかなりの勇気が必要だと思います。

マリコさん「私にはやることがいっぱいあり、ママ友と仲良くお喋りする時間がもったいないです。ママ友も1~2人しかいませんし。PTAは保護者と先生の交流の場で、たとえば、ソフトバレー大会なんかをやったりしますが、好きな人だけでやればいいでしょう? 私には一切興味がありません」

――しかし、多くの人は波風を立てたくなくて、役員を引き受けています。

マリコさん「そういう人は『空気を読むこと』しか知らないのです。『この人は敵に回すとまずいぞ』と相手に思わせるのが一番です。それには、ビジネスの世界では当たり前のことですが、文書を確認することです。私はPTA会長に質問状を出し、回答も文書でもらいました。口で話しただけでは、たいていの女性は相手に丸め込まれてしまいます」

――文書を残したり、文書でPTA側の主張の根拠を確認したりすることが大事なのですね。

マリコさん「はい。もし、PTAを退会した場合に備え、徹底的にPTA会則を読み、ほかのPTAでのケースも調べました。どこにも『ベンチに座ってはいけない』とか『記念品をもらえない』とか書いてありません。私はきちんとPTA会費を払っていますから、もし退会しても理不尽な対応をされるいわれはありません。アエラの記事の退会した女性も、PTA会則に『プールに来てはいけない』と書いてあるかどうか確認するべきだったと思います」
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