「政府の意向」に動揺 東芝「半導体」売却の壁

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   東芝の経営再建が最大の山場を迎えている。巨額損失を抱えた米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)がとうとう経営破綻し、2017年3月期の連結純損益は国内製造業で史上最悪の1兆円超の赤字に陥る見通しとなった。稼ぎ頭の半導体事業を売却して穴埋めする方針だが、政府が外資への売却に懸念を示すなど前途多難だ。

   「度重なるご迷惑をおかけし、お詫び申し上げます」。東芝の綱川智社長は3月30日、千葉市で開いた臨時株主総会で謝罪を繰り返した。会場では巨額赤字に憤る株主の怒号が飛び交い、綱川社長の声が震える場面もあった。

  • 経営再建が最大の山場を迎えている東芝
    経営再建が最大の山場を迎えている東芝

「安全保障上の問題」

   総会では、稼ぎ頭の半導体事業を分社化し、新会社の株式の過半を売却する計画が承認された。東芝は3月末時点で6200億円の空前の債務超過に陥る見通し。2018年3月末までに財務超過を解消しなければ上場廃止となるため、優良事業である半導体事業を売却して資金を確保するしか生き残る道はないのが実情だ。

   東芝は3月29日に半導体事業の売却に向けた入札手続きを締め切った。海外のファンドなど10社近くが応札したもようで、東芝と三重県四日市の工場を共同運営している米ウエスタン・デジタルのほか、韓国のSKハイニックス、台湾の鴻海精密工業などの名が取沙汰されている。

   綱川社長は3月29日の記者会見で、半導体事業の価値を「少なくとも2兆円」とし、高値での売却に自信を見せた。5月にも売却先を決め、2018年3月末までに売却を完了させたい考えだが、計画通りに進むかは見通せない。

   ここに来て波乱要因となっているのが、政府の意向だ。関係者によると、官邸サイドが中国や韓国勢による半導体事業の買収に懸念を示しているという。東芝の半導体の主力製品フラッシュメモリは世界シェア2位と国際競争力が高く、中国などへの技術流出を回避したいというのだ。このため政府は、軍事に転用できる半導体技術の海外流出には「安全保障上の問題がある」との理由で、中国などへの売却を阻止する構えだ。

生き残りをかけて最後の短期決戦

   動揺を隠せないのは、半導体の高値売却が経営再建の必須条件となっている東芝と、主力取引銀行だ。大手行幹部は「売却先の選択肢が狭まり、安値を示した企業へ売らなければならなくなったら、東芝は再建できるのか」と顔を曇らせる。

   政府内では、官民ファンドの産業革新機構や日本政策投資銀行に分社化後の半導体新会社の株式を3割以上持たせ、日本勢が一定の発言権を持てるようにする案も浮上している。ただ、「革新機構は『企業救済機構』ではない」(世耕弘成・経済産業相)として、革新機構の活用に慎重な意見もあり、実現は流動的だ。

   売却先が無事に決まったとしても、独占禁止法に基づく各国の審査をクリアできるかなど、越えるべきハードルが次々に待ち構える。2018年3月末まで残された時間はちょうど1年。東芝は生き残りをかけて最後の短期決戦に臨むことになる。

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