松坂屋の「のれん」なし ギンザシックスの戦略と挑戦

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   東京・銀座のメインストリート「中央通り」沿いに2017年4月20日オープンした複合商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」は、ゴールデンウイーク中も大勢の客でにぎわった。「松坂屋銀座店」の跡地に建てられたこの施設は、松坂屋を運営するJ・フロントリテイリングの新たな戦略と挑戦が隠れている。

   ギンザシックスは、銀座6丁目の二つの街区を一つにした、銀座では最大級の大型商業施設だ。地上13階、地下6階建てで、ファッションを中心とした国内外の241ブランドがテナントとして出店。地下3階には、観世流の拠点となる「観世能楽堂」を設けたほか、観光バスの乗降スペースを設置した。最大の注目点の一つは、松坂屋の跡地に建てられながら、松坂屋という「のれん」はどこにも見られない点だ。

  • ゴールデンウィークも活況だった(画像はGINZASIXホームページより)
    ゴールデンウィークも活況だった(画像はGINZASIXホームページより)

「銀座で百貨店はやらない」

   J・フロントの山本良一社長は、2016年10月の記者会見で、「銀座で百貨店はやらない決断をした。銀座に必要なのは新しい商業施設を作ること」と強調した。百貨店は通常、自身で商品を選び、仕入れて売る形態をとるが、ギンザシックスはほぼすべての売り場をテナントに貸し出している。

   J・フロントが思い切った動きに踏み切った背景には、百貨店が時代のニーズに合わなくなっていることがある。全国百貨店売上高は、2016年で約5兆9800億円と36年ぶりに6兆円を割り込み、ピーク時(1991年で約9兆7100億円)の6割に減少している。流通業界に詳しいアナリストは「百貨店は地下に食料品売り場があって、1階や2階には雑貨売り場があるなど、イメージが定着しており、客をもうワクワクさせられない存在になっている。消費が上向かず、『ユニクロ』などの衣料品専門チェーンに客を奪われる中、百貨店では客を呼べなくなっているのが実態だ」と指摘する。

   百貨店をいっそう苦境に陥らせているのが、インターネット通販の急伸という大きな流れだ。客はわざわざ交通費を払って遠くの百貨店に足を運ばなくても、自宅のパソコンで注文すれば、百貨店と同じ商品をすぐ手に入れられる。実際、日本通信販売協会の調べでは、ネット通販各社の2015年度の売上高は約6兆5100億円に上り、すでに百貨店を上回ったと見られている。

東京五輪に向け、新しい商業施設が次々と誕生

   こうした厳しい状況の中、地方の百貨店も相次ぎ閉店に追い込まれている。2016年2月には西武春日部店(埼玉県春日部市)、17年3月には三越多摩センター店(東京都多摩市)が閉鎖するなど、枚挙にいとまがない。

   J・フロントの幹部は「百貨店にこだわっていては多くの来店者を見込めない。松坂屋の名を外すのは惜しいが、日本の商業地の中心にある銀座で新たな取り組みをしようと考えた」とし、脱百貨店化の狙いを強調する。

   銀座では2016年3月、数寄屋橋に「東急プラザ銀座」が開業するなど、東京五輪に向け、新しい商業施設が次々と誕生している。J・フロントの試みはどんな結果をもたらすか、成否が注目される。

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