2024年 4月 24日 (水)

老舗レコード会社「Pヴァイン」 なぜコンビニを開店したか

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   Pヴァイン、と聞いてピンときたあなたは、結構な音楽ファンだろう。1975年の創業以来、前身のブルース・インターアクションズ時代も含め、「知る人ぞ知る」ようなミュージシャンの作品、また音楽関連の書籍・雑誌などを世に送り出してきた会社だ。

   そのPヴァインが、「コンビニ」を始めたという。個性派の老舗レコード会社が、なぜコンビニを? 実際に店舗を訪ねることにした。

  • 水谷聡男社長(右)と、前田裕司店長(左)
    水谷聡男社長(右)と、前田裕司店長(左)
  • 下北沢にオープンした「nu-STAND」。一見すると普通のコンビニ風。
    下北沢にオープンした「nu-STAND」。一見すると普通のコンビニ風。
  • 売りの「デリ」コーナー
    売りの「デリ」コーナー
  • サラダバー。カット野菜を仕入れるのではなく、店で毎日作っている
    サラダバー。カット野菜を仕入れるのではなく、店で毎日作っている
  • 新製品のパストラミ丼
    新製品のパストラミ丼
  • パストラミ丼に使うパストラミポーク。サンドイッチの具として提供していたところ、「ご飯と食べたい」との要望が出たことから新メニューにつながった
    パストラミ丼に使うパストラミポーク。サンドイッチの具として提供していたところ、「ご飯と食べたい」との要望が出たことから新メニューにつながった
  • 併設されたイートインスペース
    併設されたイートインスペース
  • イートインスペースには店内閲覧用として、自社の書籍も置いてある
    イートインスペースには店内閲覧用として、自社の書籍も置いてある
  • 水谷聡男社長(右)と、前田裕司店長(左)
  • 下北沢にオープンした「nu-STAND」。一見すると普通のコンビニ風。
  • 売りの「デリ」コーナー
  • サラダバー。カット野菜を仕入れるのではなく、店で毎日作っている
  • 新製品のパストラミ丼
  • パストラミ丼に使うパストラミポーク。サンドイッチの具として提供していたところ、「ご飯と食べたい」との要望が出たことから新メニューにつながった
  • 併設されたイートインスペース
  • イートインスペースには店内閲覧用として、自社の書籍も置いてある

店内BGMは所属ミュージシャンの楽曲

   「サブカルの街」として有名な下北沢。しかし、南口から出て少し歩くと、落ち着いた雰囲気の住宅街となる。

   2017年5月9日オープンしたコンビニ「nu-STAND(ニュースタンド)」があるのは、そんな一角だ。30日、取材に来た旨を伝えて店内に入ると、レジに立っていたヒゲの男性が笑顔で名刺を差し出した。

「Pヴァイン・レコード 代表取締役 社長 水谷聡男」

   なんと、社長本人だ。

「たまにやっているんですよ。やはり、自分で現場を経験して、把握しておきたいので」

   コンビニとしての品ぞろえは、ちょっと意外なほどに「普通」。菓子やインスタント食品、ドリンク、雑貨など、基本的な製品が並ぶ。店内BGMは所属ミュージシャンの楽曲だが、自社のCDや書籍も販売していない。

   一方で充実しているのが、「デリ」コーナーだ。店内調理の惣菜約20種類を主力に、コンビニとしては国内でほぼ類を見ない「サラダバー」、生ビール、サンドイッチなどを取り扱う。併設のイートインコーナーで、ゆっくり飲食することも可能だ。お客からのリクエストで開発したという、近く発売の新商品「パストラミ丼」を試食させてもらったが、分厚いピリ辛の肉でご飯が進む。

「大手と同じことはできないし、やってもしょうがない。音楽の分野でやってきたのと同じように、今あるコンビニとは違う『オルタナティブ』な価値観を提案したかった。そこで考えたのが、『店内調理』だったんです」

   コンビニは今や、私たちの食生活でも重要な位置を占める。その「食」の部分で、効率を重視するコンビニとは逆に、じっくり手間をかけることで付加価値を与える。そんな「オルタナティブコンビニ」がコンセプトだと、水谷社長は語る。

ファッションやアート、という話もあったが

   きっかけは、2015年、会社が40周年の節目を迎えたことだった。これまでの音楽事業で培った感性を別の形で表現できないか、と考え、新規事業を手掛けることに。

「最初は、ファッションやアート分野も考えたのですが、それでは今までやってきたことと近すぎる。趣味=非日常の世界である音楽やアートの反対、生活=日常に溶け込みたいが、生活に一番近いのはどこか、と考えたとき、『コンビニ』という発想が出てきました」

   社内でも「えっ、コンビニ!?」と驚きの声が上がる中、モデルとしたのは米ニューヨークで見た、地場の食品雑貨店(グローサリー&デリ)だ。街に根付いたこれらの店舗では、地元の住民と、「ラップやってそうな若者」が一緒に買い物をしていた。こうした光景を、日本にも作れないか。

   そこで選んだのが、カルチャーの街・下北沢の、中心部から少し外れたこの立地だった。結果、近所の人も訪れるなど、客層もこれまでの「Pヴァイン的な」ものとは違う、幅を持ったものになったそうで、

「Pヴァインの音楽が好きそうな、ギターを持った若者がいれば、杖をついたおばあちゃんもいる。そういう人たちが入り混じってデリを利用しているのを見ると、『いいなあ』と感じます」

畑違いゆえの苦労も

   もちろん、苦労もある。食品や飲料などを仕入れようとしたものの、個人商店が減り、流通がスーパーやコンビニに集約された結果、「小口の一見さん」であるnu-STANDのような店に商品を卸してくれる業者がなかなか見つからなかった。

   また、品ぞろえもまだまだ模索中だ。

「もっと面白くしていきたいんです。今はスタンダードな商品を集めていますが、新しいスタンダードになるような、地方のオルタナティブな商品を一緒に置いていきたい」

   普段使いに即しつつ、新しい選択肢を合わせて提案する。日常の中で、自然な形でカルチャーを発信していく。立ち寄る場所としての「スタンド」と、「新しいスタンダード」を引っ掛けた店名には、そうした思いが込められた。

   レコード会社がコンビニ、という話題性もあり、注目度は上々だ。この第1号店の成果次第ではさらなる展開拡大も視野に入れるが、まだまだ始まったばかり。「普通のものを、真面目に......」――個性派レコード会社の社長は、そう強調した。

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