2024年 5月 5日 (日)

大手生保の「海外シフト」鮮明 待ち受けるリスクとは

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   生命保険各社の2017年3月期決算が出そろった。日銀が導入したマイナス金利政策による運用難が響き、大手4社中、3社が減収となった。ただ、本業の儲けを示す「基礎利益」は日本生命保険が3%の減益だったが、他3社は海外事業が貢献し2~7%の増益だった。2018年3月期も経営環境の好転は見通しづらく、減収減益予想が目立つ。生保にとっては当面、国内事業は厳しい時代が続く見通しで、海外シフトが進みそうだが、リスクと隣り合わせでもある。

   生命保険の決算では、「保険料等収入」を「売上高」に相当する指標とみる。契約者から受け取る保険料が収入の柱であるからだ。大手4社は日本生命と、第一生命ホールディングス、住友生命保険、明治安田生命保険。このうち、この保険料等収入が前期比プラスだったのは住友生命。日本生命には2015年末に子会社化した三井生命保険も含むが、それでも収入減を補えなかった格好だ。

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日生「総じて厳しい決算だった」

   業界トップの日本生命の保険料等収入は、前期比16%減の5兆2360億円。金利低下によって契約者にあらかじめ約束する「予定利率」を引き下げた関係で、生保が数百万円程度を預かって運用する金融商品「一時払い終身保険」の販売が減ったことなどが響いた。金利低下は、日本生命自体の利息や配当金収入の減少にもつながった。このため、基礎利益は三井生命分(433億円)が加わったのに全体として3%減の6855億円だった。記者会見した日本生命の三笠裕司・常務執行役員は「総じて厳しい決算だった」と振り返った。2018年3月期も基礎利益が減少し、保険料等収入は横ばいになると見込んでいる。

   第一生命は保険料等収入が20%減の4兆4687億円。傘下の国内3社が金利低下を受けて一部商品の販売をとりやめるなどしたことが響いた。ただ、2015年に買収した米国生保事業など海外が好調で、基礎利益は3%増の5584億円と増益を確保した。米国事業で国内生保各社に先行する第一生命は、米国子会社の米プロテクティブ生命を通じてM&A(買収・合併)による米国事業の拡大を図っている。

   明治安田生命も、保険料等収入が15%減の2兆8663億円と2桁減。記者会見した荒谷雅夫・専務執行役は「一部商品の販売休止など、金利低下を受けて計画的にコントロールした」と国内の事業環境の厳しさを語った。ただ、金利は低かったものの、下半期の「トランプ相場」による「円安・株高」という運用環境改善などで国内事業(明治安田単体)の基礎利益は、3%増の4723億円だった。また、米国の生保子会社スタンコープが連結対象になったことが業績を底上げし、全体の基礎利益は7%増の4962億円だった。

為替変動リスクと隣り合わせ

   一方、住友生命は海外生保事業の寄与に加え、国内で他社より利回りの高い個人年金の販売が伸びたことなどにより増収を確保。保険料等収入は14%増の3兆4588億円だった。基礎利益も8%増えて3330億円だった。ただ、国内運用環境の悪化によって2018年3月期の基礎利益は前期比で減る見込みだ。

   大手以外に目を転じると、富国生命や朝日生命なども2017年3月期は減収減益。ソニー生命のように運用面で思い切って外債にシフトした効果で基礎利益が2倍近く増えた例もあるが、レアケースといっていい。

   日銀の黒田東彦総裁の任期は、2018年4月までと残り1年を切っている。しかし2%の物価目標が達成される公算は小さいため、18年3月期中にマイナス金利政策が見直される可能性は極めて低い。これを受けて生保大手4社が立てた18年3月期の運用計画は、国債運用を抑制し、高い利回りが期待できる海外シフトが鮮明になった。

   ただ、海外シフトにも課題はある。生命保険のように息の長い商品の裏側で資金を運用するには、普通なら為替変動リスクを抑えるため「為替リスクヘッジ付き」の債券を買う必要がある。ただ、当然ヘッジにはコストがかかり、利回りが小さくなってしまう。そのためヘッジなしの外債を増やさざるを得ない状況だが、当然ながら日本国債にはない為替変動リスクと隣り合わせとなる。トランプ政権のもと、円相場は予想しづらい。生保各社の運用リスクはかつてなく高まっており、業績に与える影響も懸念されている。

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