2024年 4月 25日 (木)

地銀のアパートローン急減速 金融庁が締め付け強める裏事情

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   ここ数年、地方銀行が力を入れて推進してきたアパートローンに、急ブレーキがかかってきた。

   日本銀行によると、国内銀行のアパートローンの新規融資額は2017年1~3月期に、前年同期比0.2%減の1兆508億円となった。新規融資が前年を下回ったのは14年10~12月期以来、約2年ぶりのことだ。

  • アパートの建設ラッシュは下火なのか……
    アパートの建設ラッシュは下火なのか……
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企業融資に代わる「儲け口」

   銀行のアパートローンの新規融資額は、2015年10~12月期から16年末まで5四半期連続で、前年同期比で2ケタの伸びを示していた。

   なかでも、地方銀行(地銀64行、第二地銀41行)の融資残高は17年3月末時点で前年比7.2%増の13.8兆円に膨らみ、2010年3月末の約8.8兆円から7年間で約5兆円も増え、日銀による統計開始(2009年)以降で最大となった。

   これに対して、大手銀行の融資残高はこの間に約2.4兆円減少し、総額8.6兆円にとどまる。地銀の積極姿勢が、いかに際立っているかがわかる。

   その背景には、2015年1月の税制改正で、相続税の課税対象が広がったことがある。アパートを建てることで、畑や更地にしておくよりも課税時の評価額を下げられるほか、相続財産から控除できる金額が縮小されたことで、これまで相続税を納める必要がなかった人も対象になった。それにより、税金を安くしようと借金をしてアパート経営に乗り出す人が増えた。これに地方銀行などが便乗。借り手が担保を持っている富裕層が多いことで、地銀が収益性を十分に考慮せずに安易に融資するケースもみられるという。

   とはいえ、地銀にも「台所事情」がある。人口減少など、地方経済は衰退に歯止めがかからない。企業向け融資は、貸し出し金利のダンピング合戦と、日銀によるマイナス金利の影響で預金と貸出金との利ザヤが一段と縮小するなど難しくなっており、収益確保に苦しんでいる。株式を上場する地銀82行の2017年3月期決算では全体の約8割が最終(当期)減益に陥った。

   収益力が低下するなか、地銀にとって相続税対策のアパートローンは、住宅ローンより金利が高めなこともあり、格好の「儲け口」となったわけだ。

行き過ぎ融資にクレームも急増

   そうした一方で、アパートの「建設バブル」への懸念が広がっている。部屋の借り手が見つかれば家賃収入が得られるが、首都圏や人口が減っている地方都市では、すでに空室が増える兆しがある。

   住宅関係のシンクタンクのLIFULL HOME'S総合研究所は、「国民生活センターへのクレームの急増や集団訴訟など、アパートの建設ラッシュは社会問題化しつつあります」と指摘。そのうえで、「相続税対策と言いながら、そもそも収益性に問題のあるような地域で、アパート経営などしたこともない地主(多くは農家や個人商店など)に家賃保証してアパートを建てさせるビジネスが行き過ぎていると言えます」と、手厳しい。このため、金融庁は地銀の融資への過熱や不良債権化を懸念して監視の目を強めた。

   国土交通省が2017年5月31日に発表した4月の新設住宅着工戸数によると、アパート経営にあたる「貸家」の伸びは鈍化している。

   貸家は、3月に前年同月比11.0%増の3万3937戸、2月は6.8%増の3万842戸、1月は12.0%増の3万1684戸と高い水準にあったが、4月は1.9%増の3万6194戸だった。18か月連続で前年実績を上回っているものの、その伸び率は16年3月(1.1%増)以来1年1か月ぶりの低さまで、急落。前出のLIFULL HOME'S総合研究所は、「貸家の着工件数が減少したのは金融庁の引き締め策によるものと考えられます。実際にアパートローンの事業採算性を精査するようにとの指示が金融機関に出ています」と、ブレーキがかかってきたことは間違いないようだ。

「儲け口」を失う地銀

   とはいえ、金融庁のアパート融資への監視強化に困惑しているのは、当の地方銀行かもしれない。

   金融庁の森信親長官は2015年7月の就任当初から、「事業性評価に基づいて融資を伸ばしてください」と地方銀行に向けて要望してきた。旧態依然とした、決算書とにらめっこしただけで判断しておカネを貸すような企業融資のスタイルではなく、事業の新規性や成長性、技術力などを評価して判断してほしい。もっと簡単にいえば、現金を持っている優良企業だけでなく、本当におカネを必要としている企業への融資に振り向けなさい、ということだ。

   そういうと、地銀は「そんなことはやっている」と反論するだろうが、その融資先が現状はアパートローンというわけだ。つまり銀行のいう「おカネを必要としている先」は「貸しやすい先」なのだ。

   企業アナリストで、大手地銀で支店長を務めた経験がある大関暁夫氏は、「いまのアパートローンは、本来いらない人にアパートを建てさせるためにおカネを貸すのですから、金融庁にすれば、目先の収益確保のための延命策にしか見えません。森長官にすれば、『どうもわかっていないな』という感じなのでしょう。任期も残り1年であることを考えると、地銀で事業性評価に基づく融資が育っていない現状から、とにかく前進させようという強い意思表示のようなものがうかがえます」と話す。

   地銀にしてみれば、ようやく見つけた「儲け口」をもがれ、企業融資を伸ばさないことには生き残りにもかかわる。金融庁はそうやって追い込み、その先の再編へと落とし込むことを描いているのかもしれない。

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