2024年 5月 4日 (土)

長崎の余波が北陸へも影響? 新幹線めぐる「カネと技術」のハードル

当面は「リレー方式」、フル規格を再検討か

   FGTは2014年にようやく実用化へ向けた耐久走行試験を開始したものの、車軸に摩耗が見つかって中断。2016年末から2017年3月まで、改良した車軸を使って再び走行試験を実施したが、高速走行時の安定性などを含め、なお安全を保障できるまでには至っていない。1964年の東海道新幹線開業以来、「運行に起因する死亡事故ゼロ」という新幹線の安全神話を長崎で崩すことは万が一にも許されないとの思いもJR九州にはあるようだ。

   JR九州は2016年10月、九州、四国、北海道の「JR3島会社」の先陣を切って株式を上場した。上場した以上、好調な不動産などと違って採算の苦しい鉄道事業には投資家の厳しい目が注がれる。従来型新幹線よりコストが高いうえ、安全面にも課題があるFGTの採用には動きにくい。JR九州の青柳社長は5月の記者会見で、「従来の新幹線より費用がかかるのに効果的な対策が出ていない」と語り、FGTに二の足を踏む意向をにじませていた。

   FGTの導入を見送ることで、長崎新幹線はどうなるか。2022年度の開業予定は変えないようなので、当面は「リレー方式」での運行を続ける以外にない。そのうえで全線をフル規格にするかどうかを再検討、ということになりそうだ。全線フル規格なら新大阪まで直通も可能だ。ただ、実現には地元の追加負担が避けられない。長崎県より博多に近い佐賀県にとって長崎新幹線開通の恩恵は小さく温度差があるだけにハードルは高そうだ。

   一方、北陸新幹線の敦賀駅以西への延伸にも逆風だ。FGTが運行できれば、在来線の活用により、フル規格にするよりコストは格段に下がる。ただし北陸の場合、冬場の雪対策という難問も加わるだけに長崎よりハードルがさらに上がる難点がある。FGTに一縷の希望をつないでいる「四国」「山陰」の新幹線構想にもダメージを与えそうだ。

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