2018年 5月 25日 (金)

世界初!犬のがん「免疫療法薬」開発 北大などが臨床試験成功、効果は人間並み

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   犬の死因トップを占めるがん治療について、北海道大学と東北大学、扶桑薬品工業らの研究チームは2017年8月25日、世界で初めて免疫療法薬剤の開発に成功したと発表した。研究成果は医学誌「Scientific Reports」(電子版)の2017年8月21日号に掲載された。

   がんの免疫療法は、近年、人間では「ニポルマブ」(商品名オプジーポ)などの薬剤が使われているが、これまで犬にはなかったから、愛犬家には朗報だ。

  • 多くのワンコの命を救えるか? イヌキメラ抗体ががん細胞を攻撃する仕組み(北海道大学などの発表資料より)
    多くのワンコの命を救えるか? イヌキメラ抗体ががん細胞を攻撃する仕組み(北海道大学などの発表資料より)

原理は人間の免疫療法薬とまったく同じ

   北海道大学などの発表資料によると、人間同様に高齢化が進む犬はがんで死亡するケースが年々増えている。犬のがんには現在、外科療法・放射線療法・化学療法の3大療法が行なわれているが、犬の体への負担や副作用が強いことが課題だ。たとえば、犬の口の中によくできる悪性黒色腫は転移性が高く、外科治療や放射線治療の甲斐なく命を落とす犬が多い。唯一、全身療法に使われる化学療法も、副作用が強すぎるため効果が見込めなかった。そこで、全身的に効果があり、かつ副作用が少ない免疫療法の開発が期待されていた。

   人間の免疫療法薬剤「ニポルマブ」(商品名オプジーポ)の原理はこうだ。がん細胞は体の異物だから、通常なら免疫細胞の攻撃の対象になる。ところが、がん細胞は免疫細胞の「PD-1」という突起に結びついて、がん細胞を働かなくさせてしまう。この「PD-1」という突起からがん細胞をはずして、免疫細胞を再び働かせるのが「ニポルマブ」などの役目だ。

   研究チームは、これまでの研究で、犬のがん細胞も人間とまったく同様に、免疫細胞の「PD-1」に結びついて働かせなくさせていることを突きとめた。そこで、「イヌキメラ抗PD-L1抗体」という薬剤を開発、ともに治療が難しいがんである悪性黒色腫の犬7頭と、未分化肉腫の犬2頭に投与する臨床試験を行なった。すると、未分化肉腫の犬では腫瘍が小さくなり、悪性黒色腫の犬でも肺にまで転移した後の生存期間が延長する効果がみられた。治療によって患者のがんが縮小または消滅した割合を示す薬剤の有効性(奏効率)は、未分化肉腫で50.0%、悪性黒色腫で14.3%だった。これは人間の免疫療法薬剤と同程度の成績だという。また、アレルギー症状などの副作用もみられなかった。

犬と人間のがんは共通、人間に治療にも期待

   研究チームでは、今回の結果についてこうコメントしている。

「この研究で作製したイヌキメラ抗PD-L1抗体は、悪性黒色腫・未分化肉腫に対する新たな治療薬として期待されます。また、ほかのがんの治療にも適用できる可能性があります。(副作用が少ないので)犬に複数回投与できる抗体医薬品のモデルケースとして、今後の研究に大きなインパクトを与えるでしょう。さらに、多くの犬のがんは人間のがんと類似点が多いため、人間のがんの治療にも使えるのではないかと考えられ、臨床研究を進める予定です」

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