2024年 4月 20日 (土)

猫の尿は猫の尿で防ぐ!  猫の糞尿被害防止策を岩手大が発見

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   猫ブームとは裏腹に、放し飼い猫や野良猫による糞尿被害が社会問題になっている。多くの「猫被害防止グッズ」が売られているが、十分な効果は上がっていない。

   岩手大学の研究チームは、猫が他の猫の尿のニオイを嗅ぐと自分の尿を残さずに立ち去ることを発見、動物行動学専門誌「Applied Animal Behaviour Science」(電子版)の2017年8月5日号に発表した。この猫の性質を利用すると、画期的な猫の糞尿被害防止剤が開発でき、人と野良猫の共存が期待できるという。

  • 野良猫の糞尿に悩む人は多い
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水噴射・超音波・LED光線など多くの撃退グッズが...

   「猫被害」をグーグルで検索すると、949万件がヒットすることからわかるように、猫の糞尿に悩む人は非常に多い。現在、通販やホームセンターなどでは次のような様々なタイプの猫対策グッズが売られている。

(1)赤外線で猫を探知、猫の大嫌いな水を噴射して撃退。

(2)赤外線で猫を探知、超音波とLEDフラッシュ光線を発して追い払う。

(3)釘状の鋭いトゲが密集したシートを庭や塀の上に置く。

(4)先端が包丁の刃のようにキレる柵を花壇の周りに並べる。

(5)猫が嫌うとされる天然炭の粉末を撒く。

(6)木酢液(もくさくえき=炭を作る時に出る蒸留液)など猫が嫌うとされる植物由来成分を撒く。

   しかし、猫は学習する動物で非常に賢い。嫌なニオイでも自分に危害がないとわかったり、危険物の避け方を学んだりするとまた侵入してくる。

   岩手大学の発表資料によると、研究チームは猫の縄張り行動を観察調査している際、猫は他の猫の尿のニオイを嗅ぎつけると、強い興味を示すが、そのまま立ち去ることを発見した。犬の場合は他の犬の尿のニオイの上に自分の尿をふりかける。これは「オーバーマーキング」(他の動物のマーキングに自分のニオイを被せる行為)と呼ばれ、多くの哺乳動物に見られる行動だ。しかし、猫はそのニオイを丹念に嗅ぐと、「ブレーメン」と呼ばれる、口を半開きにしてポカーンとした表情になるだけで、その場を去ってしまう。これは、猫は近くにニオイの主の他の猫がいると勘違いして立ち去る習性があると考えられるという。

猫は他の猫の尿のニオイを嗅ぐと「遠慮」する

   そこで、猫の尿のどの成分が「他の猫が近くにいる」と警戒させるニオイなのかを調べ、尿から猫特有の硫黄臭を含むニオイ物質を取り出した。この尿抽出物を野外に置き、通りかかった野良猫に実験すると、みなニオイを丹念に嗅いだ後、糞尿をしないままその場を立ち去った。また、一度ニオイを嗅いだ野良猫は、同じ日や数日後、同じ場所に現れたが、その場所に糞尿をすることはなかった。つまり、この尿抽出物があると、すぐ近くに他の猫がいると勘違いし、糞尿をすることを「遠慮」する効果があるわけだ。

   研究チームの宮崎雅雄准教授は発表資料の中でこう語っている。

「現在、ネコの嫌がるニオイによる忌避剤や超音波撃退装置などが多数販売されています。しかし、効果には個体差があり、数回使うと猫が慣れてしまい、十分な効果が得られない問題がありました。私たちの研究成果は、猫の行動原理に基づいており、猫に他の猫がいると勘違いさせ糞尿をしないまま立ち去らせる効果が期待できます。人と野良猫の共存を考慮した画期的な糞尿被害防止策を提案できると考えます。今後は、尿抽出物の濃度や作用持続時間などを検証し、商品化を目指します」
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