「神戸から、未来へ 100歳まで現役で生きる!」をサブテーマにした公益財団法人・先端医療振興財団主催、神戸市共催の市民向け医療シンポジウムが2017年10月7日、神戸ポートピアホテルで開かれた。臨床研究の実用化を支援する同財団臨床研究情報センター設立15周年などの記念イベントで、6つの実用化間近の新技術を紹介した。四肢麻痺だったが、ピアノの練習ができるようになった最も早く実用化しそうな、けいれん性発声障害治療は讃岐徹治・名古屋市大耳鼻科講師が発表した。喉頭筋の異常運動で声が途切れたり震える難病。一色信彦・京大名誉教授が2002年、声門にチタンブリッジを挿入する甲状軟骨形成術を開発、今年度内に福井県の町工場で製造している器具の承認が確実視されている。金丸真一・北野病院耳鼻科部長らが取り組んでいるのは穴があき、難聴になった人の鼓膜再生治療だ。鼓膜に傷をつけ、成長因子を含んだゼラチンスポンジを置き、接着剤でシールするだけ。外来で正味10分ほどの手術直後から聴力は改善する。最高齢96歳までの400人以上を手術した。日本には100万人以上の患者がいると見られる。佐々木祐典・札幌医大フロンティア医学研講師(神経再生医療学)は脳梗塞、脊髄損傷などの患者の骨髄液から幹細胞を培養し、静脈注射する骨髄幹細胞移植治療をしている。四肢マヒ47日目の48歳男性脊髄損傷患者は移植直後から指、腕などが動き、4週で階段歩行、16週で歩行、ピアノ練習が可能になった。脳梗塞の52歳男性は1.5カ月後に移植したが、間もなく指が動き、腕の曲げなどが可能になった。臨床研究情報センターの川本篤彦・副センター長らは重症下肢虚血と呼ばれる死亡率の高い患者の血管再生治療をしている。患者に成長因子を5日間投与し、血液から再生力の強いCD34陽性幹細胞を集めて下肢筋肉に注射する。下肢切断の危険が無くなれば8割は回復する。また黒田良祐・神戸大整形外科教授らはこのCD34陽性幹細胞を難治性骨折患者に移植している。骨がなかなかくっつかない患者は骨折者の5~10%いるが、12週以内に70%が改善した。外園千恵・京都府立医大教授(眼科)はスティーブンス・ジョンソン症候群など失明率の高い難治性角結膜疾患に対し、患者の口の粘膜細胞シートを用いて治している。福島雅典センター長は「100歳現役時代に欠かせないこれらの神戸発医療技術の実用化は目前になっている」と挨拶した。(医療ジャーナリスト・田辺功)
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