2024年 4月 27日 (土)

「柳井さん、一対一で話し合おうよ。僕も1年働いたんだから」
『ユニクロ潜入一年』横田増生さんインタビュー

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若手の「潜入」記者が10人もいれば

   インタビューの終わりに、「ちょっと、僕の勝手な夢を喋ってもいいですか?」と横田さんが言う。

横田 日本に、若手で10人か20人くらい、プロの「潜入」記者がいたら面白いと思うんです。彼らがいつ、どこの企業に入ってくるかわからない。年に4、5冊くらい、そういう潜入モノの本が出る。そうなると、日本の社会もピリッとするんじゃないか。僕は年なので、ノウハウを引き継いでもらって。
昔から、潜入取材というジャンルは「一段下」に扱われてきたんですよ。『自動車絶望工場』も、大宅壮一ノンフィクション賞にノミネートされたけど、それを理由に受賞を逃している。でも、企業が情報を隠そう隠そうとしている今、広報をすり抜けて物事を、企業を、産業を見る潜入取材は、『自動車絶望工場』のころ以上に、悪くない方法だと思う。
フリーだと20代のころとか仕事がないですから、半年くらい面白いところを見つけて、潜入すればいいんです。もちろん、単に裏を覗くだけじゃなく、その産業や企業に対する調査・研究、そして働きながら記録を残し、それをまとめ上げる能力がいりますが。
一発名を上げたら、次の後進にノウハウを伝える。こうして、潜入取材というジャンルが脈々と書き継がれていく――そうなったら嬉しいなと。

   たびたび名前が出た鎌田慧さんの『自動車絶望工場』の、本多勝一さんによる文庫版解説を読んでほしい、と横田さん。後日取り寄せると、こんな一文があった。

「ルポやノンフィクションの隆盛を反映してか、そのライターを志望する若者もふえているようです。しかしこれは決して甘い職業ではありません。安易なPRルポならともかく、妥協のない内容とするためには、経済的・精神的独立が何よりの前提です。とくにフリーの人にとってこれは厳しいものになりますが、そんなとき私がよく若い人にいうのは『鎌田慧方式』であります。取材を生活そのものとする方法。これは『体験取材』のみならず、何ものにも拘束されぬための経済的手段としても支えになるでしょう」(講談社文庫版解説より。初版は1983年)

   この日は取材が危ぶまれるほどの悪天候だったが、インタビューを終えるころには、雲一つない青空となっていた。寄り道があるという横田さんは、お昼時の新宿の雑踏の中に去っていく。

   行き先は、「ビックロ」とのことだった。

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