17年のベストセラー、1位は佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』 人生最後の小説の後に生まれたエッセー

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   「2017年 年間ベストセラー」が12月1日、トーハン、日販から発表された。両社とも、総合第1位は作家の佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』(小学館)だった。昨年8月の出版で、すでに昨年の年間ランキングでも、トーハンでは16位に入っていた。ひんぱんに各種メディアに取り上げられたこともあって売れ行きが加速し、今年上半期ではトーハン、日版ともにトップになっていた。

   佐藤さんは「素直に嬉しいです。私自身、自分が面白がることが好きだから、人が面白く思ってくれたと思うと、ああよかったと思いますね」とコメントしている。

  • 『九十歳。何がめでたい』(小学館)
    『九十歳。何がめでたい』(小学館)

2万通を超える読者からの便り

   本書の特徴の一つは本音トーク。長寿はめでたいという常識を、タイトルでいきなり引っくり返した。本の内容は90歳超えの著者本人が語る赤裸々な体験談と腹の内の思い。年を取るにつれ面倒なことが次々と起きる。生きることが厄介になる。そんな日々の苦労や失敗、イラ立ちを、歯に衣着せぬ物言いで思い切り打ち明けている。

   もう一つの特徴はユーモア。とかく「老い」をめぐる話は暗くなる。それを佐藤さんは明るく、笑いを誘うように書いた。ページをめくるたびに読者は爆笑。これは天性のものだ。誰でもこんなふうに、不愉快なことでも後腐れなく、あっけらかんと書けるわけではない。出版社に届いた読者からのお便りも2万通を超えているというから、驚異的な反響だ。

   佐藤さんは1950年『青い果実』でデビュー。63年には『ソクラテスの妻』で芥川賞候補になり、69年『戦いすんで日が暮れて』で直木賞受賞。79年『幸福の絵』で女流文学賞、2000年『血脈』で菊池寛賞受賞など文学歴は長く華々しい。さらに、女性雑誌の常連筆者として大活躍してきた実績もある。そんな佐藤さんだからこそ書けた作品といえる。

   ただ、この作品の誕生は、佐藤さんが「最後の小説」とした『晩鐘』を書き上げた後である。佐藤さんが、「これからは何もせずに、のんびり老後」を決めていたところに、「女性セブン」の編集者が訪れ、連載エッセイを懇願したことから執筆がはじまっている。いわば「編集者の熱意」が生んだミリオンセラーでもあるのだ。

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