2024年 4月 26日 (金)

生活保護カットの算定に影響 「受給しない貧困層」とアベノミクス

   生活保護費の食費や光熱費などに充当する生活扶助(生活費に相当)の支給額が、最大5%、平均1.8%削られることになった。5年に1度見直しているもので、削減は前回の平均6.5%に続き2回連続。格差拡大、子どもの貧困などが指摘される中でのことだけに、生存権を脅かすとの懸念、批判の声も出ている。

   生活保護の受給世帯数は毎年、過去最多を更新している。2016年度は月平均で約163万7000世帯、受給者数は約214万人になり、65歳以上の高齢者世帯は初めて半数を超え、うち9割は独り暮らし。生活保護のための費用(事業費ベース)は約3.8兆円に上る。このまま拡大していけば、制度の持続可能性も危ういとも指摘される。そうした現実を背景に、今回の支給額カットが決まった。

  • 生活保護の支給額カットは国民生活にどういった影響を及ぼすのか(画像はイメージ)
    生活保護の支給額カットは国民生活にどういった影響を及ぼすのか(画像はイメージ)
  • 生活保護の支給額カットは国民生活にどういった影響を及ぼすのか(画像はイメージ)

一般世帯の年収下位10%層の生活費と均衡する扶助額を算出

   といっても、生活保護基準の改定は、1984年に導入された「水準均衡方式」というルールにのっとって行われる。地域や世帯類型別に、一般世帯と比べ、高すぎる場合はこれに合わせるもので、具体的には、生活保護を受けていない一般世帯の年収下位10%層の生活費と均衡する扶助額を算出する。より細かく説明すると、厚生労働省が、5年ごとの全国消費実態調査を使って一般低所得世帯と比較し、その検証結果をもとに、社会保障審議会生活保護基準部会で議論し、厚労相が決定する。

   今回の検証結果は、現行の扶助費が一般低所得世帯の生活費を最大13.7%上回るという内容。受給額が最も高い大都市部などの地域で生活扶助費と一般低所得世帯の生活費(2通りの計算のうち少ない額)をいくつか比較すると、「40代夫婦と子ども2人」が18万5270円と15万9960円(差は2万5310円、13.7%)▽「75歳単身」は7万4630円と6万8840円(同5790円、7.8%)▽「共に65歳夫婦」は11万9200円と10万6020円(同1万3180円、11.1%)――といったものだった。

   ちなみに今回、検証結果の詳細なデータが審議会に示されたのは、2018年度予算案決定が迫る17年12月上旬で、批判の声が広がる時間を与えないためとも勘繰られるような「短期集中」の論議だった。委員からも「十分な検討時間がない」と不満が出たが、14日に厚労省の方針を追認する報告書をまとめた。

   政府の狙いはさておき、扶助費カットには批判の声が沸き起こったこともあり、その後の政府・与党の検討を経て、ひとり親家庭に支給される「母子加算」などを加えた総額で削減幅を最大5%に圧縮したうえで、「激変緩和」として2018~20年の3年に分け、段階的に毎年10月から削減することとし、12月22日に決まった18年度予算案に盛り込まれた。

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