2024年 5月 5日 (日)

会議での「眉間のしわ」で知られる  ソニー吉田次期社長の「次の一手」

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   ソニーは2018年2月2日、平井一夫社長(57)の後任に吉田憲一郎副社長(58)が4月1日付で昇格するトップ人事を発表した。平井氏は12年4月に社長兼最高経営責任者(CEO)に就任して丸6年。V字回復を果たし、18年3月期に7200億円と過去最高の営業利益をたたき出す見通しとなったことを花道に、吉田氏にCEO職も譲り、自身は「代表執行役」も外れる会長に就く。

   在任6年はそれなりに長い年月ではあるが、まだ50代でソニーの再成長に向けてもう一踏ん張りしてもおかしくないなかで「社長兼CEO」を退く『潔さ』は、日本の大企業には珍しい。

  • ソニー新社長の次の一手(画像はイメージ)
    ソニー新社長の次の一手(画像はイメージ)
  • ソニー新社長の次の一手(画像はイメージ)

「好業績で新しいCEOにバトンを渡せる」

「社長に就任して2回目の中期経営計画の最終年度に目標を上回るめどがつき、好業績で新しいCEOにバトンを渡せる。新しい中期経営計画が始まるこのタイミングで、新しい経営体制にバトンタッチすることが今後のソニーにとって、また私自身の人生の次のステージに向けても適切だと考えた」

   2017年4~12月期連結決算の説明会に先立って急遽、東京都内で開かれた記者会見で、平井氏は退任理由をこう語った。社長就任当初は黒々としていた髪も、かなり白さが目立つようになり、老人に近い風貌だ。記者会見であえて「私自身の人生」を持ち出したところが普通の日本企業の社長にはないことで、平井氏の思いの一端が見える。

   「会長としてどのように経営に関わるのか」との質問には、「トップは吉田新社長。私はエンターテインメントやゲームなどでアドバイスしたりする。あくまで(新トップを)補佐する役割だ」と強調した。日本の企業では、「社長を後進と交代する」と言いながら代表権を持ったまま「会長兼CEO」として経営の実権を握り続ける例は枚挙にいとまがない。一概にそれが悪いわけではないが、『老害』といえる状況もある。その点、平井氏は本気でトップ交代を果たすつもりのようだ。

   平井氏は、国際基督教大学(ICU)出身の帰国子女で、英語はネイティブ同様にこなす。180センチ超の高身長になかなかのイケメン。海外では「カズ」の愛称で慕われている。社長就任後も、米国などで、英語でプレゼンテーションをする時は、こなれたカジュアルな服装で日本人離れした生き生きとした姿を見せた。

消費者向け製品になお課題は多い

   社長就任直前の2012年3月期は、4566億円の最終赤字を計上していた。最終赤字は4期連続と、凋落の瀬戸際にあったソニーの大看板を背負い、再建に向けて人員削減や製造拠点の統廃合、パソコン「VAIO」事業の売却など、リストラに次ぐリストラを断行した。音響製品など社内の主流部門ではなく、傍流とも言えるCBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテイメント)出身ながら、経営にあたっては社内外から常に「ソニーらしさ」を求められる。そうした一方、家族を米国に置いて東京に単身赴任する生活は、平井氏に大いにストレスを与え、髪をどんどん白くしていったのかもしれない。

   21世紀に入って日本企業を猛烈に追い上げた韓国・中国勢、アップルなど底力のある米国企業を前に日本の家電メーカーは総崩れとなった。他の日本勢は、自動車部品ないしエレベーターなど社会インフラのような対企業向けビジネスを中心にして生き残りを図っている。一方、ソニーは、スマートフォンの画像センサーのような部品メーカー、映画・音楽といったソフトメーカーの立場も大事にしつつ、あくまでも消費者向け製品の生産販売にこだわった。消費者向け分野のソニーの戦況は、過去最高益を見込む今もまだ危うさを残すが、犬型ロボット「アイボ」の復活までは漕ぎ着けた。そこは平井氏の功績の1つと言えるだろう。

   今回の2日の記者会見で平井氏の傍らに立った次期社長の吉田氏は、すっかり髪が白くなった平井氏よりさらに白髪の量は一枚上のように見える。社長交代で社長の年齢は若返るどころか1歳プラス。財務畑を歩み、ソニーを卒業していた吉田氏を2013年末、平井氏が最高財務責任者(CFO)として登用した。利益を生む体質に向け、二人三脚でソニーの構造改革を進めた。営業利益の最高益更新の立役者であることに間違いなく、次期社長の有力候補者とも目されてきた。笑顔が軽やかな印象の平井氏とは対照的に、記者会見や社内の会議で見せる「眉間のしわ」で知られ、それは安易な妥協を許さない姿勢とも受け止められている。

   V字回復を果たしたがゆえに、吉田新体制はさらに高水準の業績を求められる。金融や映画・音楽、ゲームは順調で財務体質も安定してきたが、成長しているとは言い難いスマートフォン「Xperia」など消費者向け製品になお課題は多い。社長交代を発表した記者会見で「守るべき所はしっかり守り、攻めるべき所は攻めていく」と語った吉田氏の「次の一手」を株式市場などが注目している。

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