旧ソ連の指導者、ヨシフ・スターリンを題材とした映画のポスターから、主要キャストの姿が抹消された――米国で起こったそんな騒動が、ちょっとした話題となっている。スターリン時代といえば、失脚した有力者は写真などからも容赦なく「消された」ことが有名だ。まるで当時の「粛清」をなぞったようなこの事件、いったい何が起きたのか。スターリンの死を描くブラックコメディー話題となっているのは、英仏合作映画「ザ・デス・オブ・スターリン」のポスターだ。1953年のスターリンの死をめぐり、遺された有力者たちが繰り広げる権力闘争を描くブラックコメディー作品で、英国などではすでに2017年秋に公開、18年3月には米国での配給開始が予定される。スターリン再評価が進むロシアでは、「上映禁止」も大真面目に検討、話題を呼んだ。そんな本作のポスターは、ソ連国旗をバックに、主要キャスト5人が肩を並べる構図となっている。ところが、米国公開にあたって公表されたポスターでは、元々のバージョンから、5人中2人が別のキャストと入れ替わっていたのだ。中でも注目を集めたのは、中央にいたはずのマレンコフ役、ジェフリー・タンバーさんの不在である。マレンコフはスターリン没後に首相に就いた、本作でも重要なポジションを占めるはずの人物だ。タンバーさん自身ベテラン俳優として知られ、ポスターのキャスト一覧でも、「トメ」の位置に名前が掲載されている。そんな主要キャストが、なぜポスターから抹消されてしまったのか。実はタンバーさんは2017年秋以降、スキャンダルに揺れている。アマゾン・プライムで配信されている人気ドラマ「トランスペアレント」に出演していたのだが、共演者らへのセクハラを告発されたのだ。本人は潔白を主張しているものの、2月15日、正式降板が報じられた。ポスターからの「粛清」が明らかになったのは、その直後であった。こんなところまでソ連流に...スターリン時代の旧ソ連では、権力に逆らった人物は、歴史をさかのぼってまでその存在を「なかったこと」にされた。たとえば革命初期の大物トロツキーは失脚後、レーニンと一緒に写っていた写真からきれいに姿を消されたし、スターリンの側近として処刑の大ナタを振るったエジョフは自分も粛清され、彼が隣にいたはずのスターリンの公式写真には、不自然な空白が残った。今回の「抹消」の理由は明らかにされていないが、米国の映画メディア「THEWRAP」などは上記のセクハラ問題とからめる形で報道、英BBC(ウェブ版)なども言及した。日本でもツイッターなどを通じてこの話題が拡散、「スターリンを題材とした映画で写真修正とは胸熱ですね!!!」「題材にふさわしい修正&素晴らしいブラックジョークですね」「エジョフと同じ目に遭ってますなw」などと、主に歴史好きから笑いが起きている。
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