2018年 11月 15日 (木)

筆頭株主が突いてきた「急所」 米ゼロックス買収めぐる攻防

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   富士フイルムホールディングス(HD)の米ゼロックス買収に横槍が入った。ゼロックス筆頭株主で「物言う株主(アクティビスト)」として著名なカール・アイカーン氏らが反対を表明したのだ。富士フHDはいかに折り合いをつけるのか、あるいは対決の道を選ぶのか、2018年5~6月と見込まれるゼロックス株主総会に向けて、せめぎ合いが始まった。

   アイカーン氏はゼロックス株の約9%を握る筆頭株主で、2月12日、著名投資家でゼロックス株の約6%を保有する第3位株主のダーウィン・デーソン氏と連名でゼロックスの株主に向けた公開書簡を出し、富士フHDによるゼロックス買収に反対する考えを表明した。さらにディーソン氏は13日、ゼロックス買収差し止めを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に起こした。

  • 米ゼロックス買収めぐる攻防(画像はイメージ)
    米ゼロックス買収めぐる攻防(画像はイメージ)

富士フイルムHDのキャッシュは外部に流出せず

   アイカーン氏らの書簡では、ゼロックスが自前でも企業価値を高めることは可能だとして、今回の買収を「ゼロックスを劇的に過小評価している」と主張。ゼロックスと合併する富士ゼロックスで会計不祥事があったことなどに触れたほか、具体的に「由緒ある米国の象徴である企業の経営権を1セントも支払うことなく手に入れる、富士フイルムにとっては驚くべき成果だ」「特別配当は『我々の資産』から支払われる」などと批判している。

   書簡にある内容は、何を指しているのか。それは、今回の買収のスキームにかかわることだ。

   第1に、富士フHDが「1セントも支払うことなく」とは、次のことを指す。つまり、富士フHDは今回の買収額を6700億円としているが、単純にこの金額のキャッシュを出すわけではない。富士フHDはゼロックスとの合弁の「富士ゼロックス」の株式の75%分を保有するが、今回のゼロックス本体の買収では、この保有する富士ゼロックス株を現金化し、その資金を使ってゼロックス株式の50.1%を取得する――という仕組みになっている。富士フHDのキャッシュは外部に流出しないことになり、日本の株式市場では、この点が明らかになって、投資家がようやく安心したように、今回の買収の大きなポイントと言える。アイカーン氏は、まさに「急所」を突いてきた形だ。

   第2の「特別配当」は、今回の買収に当たり、ゼロックスが既存株主に支払う25億ドルだ。こうした買収で、買収される側の株主の理解を得ようというもので、よくある手法だが、アイカーン氏らはゼロックスの資産を取り崩すことを問題視している。

   アイカーン氏はアクティビスト、つまり企業に経営改善を要求するなど積極的に口を出す投資家として知られる。巨額の投資資金で一定の議決権を握った上で、買収、事業売却、経営陣の刷新などの要求を突きつけるのだ。これまで、航空大手のTWA(現アメリカン航空)、食品のナビスコ・グループ、メディアのタイムワーナー、通信機器のモトローラ、ネットのヤフーなどと攻防戦を繰り広げてきた。

委任状争奪戦を展開する可能性

   経営参加のチャンスがあれば買収にも打って出るし、それがかなわなければ、できるだけ高値で保有株を手放すのがアイカーン氏の流儀。2013年、アップル株を買い集めた上で自社株買いを要求し、一定程度応じさせた。15年にはブリヂストンよる米タイヤ販売大手ペップ・ボーイズの買収に異を唱え、買収金額の引き上げの末、競り勝ち、ブリヂストンに煮え湯を飲ませている。アイカーン氏はゼロックスに対しても、これまでも再三、経営の立て直しを強く求めていた。

   今回のアイカーン氏らの富士フHDによる買収反対の書簡に対し、ゼロックスも書簡を発表し、何か月もかけて複数の案を検討した結果、富士フHD傘下に入るのが「株主への価値創出に最良の道」だとの結論に至ったと説明している。

   今後の展開はどうなるか。

   はっきりしているのは、ゼロックスの株主総会で、買収の承認を得る必要があること。これに向け、最終的にゼロックス経営陣とアイカーン氏らが委任状争奪戦を展開する可能性もある。

   そんな中、アイカーン氏は買収反対を訴える一方で、保有株の一部を売却したとの報道もある。買収発表で株価が上がったところで利益確定を図ったとの見方、また、買い戻して委任状争奪戦に備えるのではとの見方などが交錯する。

   富士フHD側にすると、買収にキャッシュは出ないとはいえ、事務機器業界の先細り予想の中で、多額の負債を抱え、足元の業績も芳しくないゼロックスに6700億円を投じるのは「割高」との指摘も少なくない。今後の成長分野と位置付ける医薬品事業などに投じる資金が必要なだけに、アイカーン氏らがより多くの還元を求めるといった「条件闘争」に出ても、おいそれと譲歩はしにくいとの見方が多い。

   他方、アイカーン氏らにしても、高い要求をし過ぎると、富士フHDの買収自体が頓挫するリスクもある。これに代わる経営立て直しの妙策が簡単に見つかる保証はない。

   こうした状況を反映してか、今のところ、他の投資家からは富士フHDによる買収計画、アイカーン氏らの反対行動に、目立った反応が出ていない。状況を見極めようということだろう。これからアイカーン氏らがどんな手を繰り出してくるか、注目される。

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