2024年 4月 19日 (金)

日大第三者委が被害者父に「不愉快」発言 識者からも「見識ない行為」

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   日大アメリカンフットボール部の危険タックル問題で、被害選手の父、奥野康俊・大阪市議が、日大が設置した第三者委員会に対し、「真相を究明する気はない」と不信感を表明した。

   2018年6月10日、自身のフェイスブック(FB)で明かしたもので、第三者委の弁護士からヒアリングを受けた際に、「不愉快」になる説明・発言があったとも報告している。こうした状況について、第三者委問題に詳しい弁護士からは「(発言が本当なら)見識のない行為」との指摘も出ている。

  • 危険タックルの問題の場面(関西学院大学提供)
    危険タックルの問題の場面(関西学院大学提供)
  • 危険タックルの問題の場面(関西学院大学提供)

「怪我を軽くするためのタックルだったのでは」

   奥野氏FBによると、10日朝から第三者委員会(弁護士7人で構成、勝丸充啓委員長)の弁護士2人(原文では弁護士の苗字を記載)からヒアリングを受けた。自身の息子である被害選手や、アメフト部監督らと「3時間半」の聞き取りだった。その際、第三者委弁護士から

「あのタックルは怪我を軽くするためのタックルだったのでは、という説明」

があった。日大側プレーを正当化するかのようなニュアンスを感じたのか、「不愉快になり、私から、ズバリ質問をした」そうだ。

   奥野氏がこの弁護士にした「質問」は、

「中立を担保するために、あなたは、日大との利害関係はあるのかないのか」

というもので、回答は「ない」。次に、今回の調査で「日大からお金をもらっているのか」と聞くと、「はい」との答えだった。奥野氏は

「果たして、これで利害関係がないと言えるのか。明らかに、嘘だ。と私は感じた」

と続けた。また、日大との契約書の開示を求めたが、「出来ない」と言われたとし、「開示して困ることは無いはずだ」と主張。その上で、

「何を守るための第三者委員会なのだろうか、事実を確認するだけで、真相究明する気は全くない。息子に怪我をさせた理由を知りたい」

と不快感を露わにした。奥野氏が後段で指摘した、第三者委員会の弁護士と設置企業・団体との「利害関係」や「報酬」については、日本弁護士連合会が定める「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に記載・規定がある。

日大、日弁連「ガイドライン」に沿って設置と説明

   奥野氏のこのFB内容は注目を集め、数社のスポーツ紙(ネット版)や、テレビのニュース番組が記事にしている。奥野氏が名前を挙げた弁護士の所属事務所に6月11日、J-CASTニュース編集部が発言内容について確認したところ、「(質問には)別途、書面なり口頭なりで回答するか、検討中です。本日中(の回答)は難しい」とのことだった。(原稿末尾に追記あり)

   日大が第三者委の設置を発表した1日には、先に触れたガイドラインに沿って、「日本大学とはこれまでに利害関係の一切ない」弁護士に委員長を依頼し、他の委員の選任は委員長に一任していたことも公表された。構成は、全員弁護士で計7人。

   同ガイドライン(2010年12月改訂版)を見ると、

「企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない」(注記で、「顧問弁護士は、『利害関係を有する者』に該当する」)
「第三者委員会の委員には、事案の性質により、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい場合も多い」
「弁護士である第三者委員会の委員(略)に対する報酬は、時間制を原則とする」

などの記載がある。

   今回、奥野氏が発信した情報について、第三者委に詳しい弁護士はどう受け止めたのか。

第三者委に期待される役割

   弁護士の有志らから成り、さまざまな第三者委員会の調査報告書の格付けをし、第三者委員会に対する社会的信用を高めようと活動している「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長、久保利英明弁護士に6月11日、J-CASTニュース編集部が話を聞いた。

   「第三者委が行うべきで、また期待されているのは、何が起きたかの究明、真因の追究、そして再発防止策の提言だ。

   (被害者選手の父、奥野康俊氏の)フェイスブックに書かれていることが事実なら、という前提ではあるが、第三者委弁護士から「あのタックルは怪我を軽くするためのタックルだったのでは」と言われたお父さん(奥野氏)が、「(この第三者委は)真相を知りたくないのか」という気持ちになったとしても不思議ではない。

   問題のタックルについては、映像が残っており、調査に同席した選手本人に質問するなら、監督からの指示の有無や内容を聞くべきで、「怪我を軽くするため」云々はポイントがずれている。

   こうした発言が弁護士から本当にあったのなら、第三者委の役割がよく理解できていない、見識のない行為だと言われても仕方がない」

   久保利弁護士は、以上のように指摘した。

   【6月11日20時20分追記:11日夜、発言主とされる第三者委の弁護士が事務所を通じてコメントを発表した。「そういった事を言ったつもりはないが、もしかしたら行き違いがあったのではないか。第三者委員会としては、今後も中立公正に粛々と調査を進めていくつもりであり、関西学院大アメフト部も調査の協力を約束してくれている。なお、委員の報酬については、日弁連のガイドラインに沿って、原則として時間制で請求することになる」】

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