2024年 5月 4日 (土)

今も営業中「VHSばかり」のレンタルショップ 時が止まったようなお店の歴史を、店主が話してくれた

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   1990年代で時が止まってしまったかのような、不思議なレンタルビデオ店がある――ツイッター上で、そんな話題が盛り上がっている。

   投稿された写真を見ると店内の棚にはVHSテープがビッシリと陳列される。「ビデオCD」と書かれた外の看板はボロボロで色もかなり褪せたものだ。店の外観も「VIDEO ジョイフル」とあるネオンが掲げられており、壁には少し錆が垂れている。

  • 「ジョイフル」の外観(@ayukawaarisaさん提供写真)
    「ジョイフル」の外観(@ayukawaarisaさん提供写真)
  • 店内の様子(@ayukawaarisaさん提供写真)
    店内の様子(@ayukawaarisaさん提供写真)
  • 店内の様子(@ayukawaarisaさん提供写真)
    店内の様子(@ayukawaarisaさん提供写真)
  • 「ジョイフル」の外観(@ayukawaarisaさん提供写真)
  • 店内の様子(@ayukawaarisaさん提供写真)
  • 店内の様子(@ayukawaarisaさん提供写真)

VHSテープがズラリと陳列

   この店の写真は鮎川亜里沙(@ayukawaarisa)さんによって2018年9月23日にツイートされ、27日16時現在には「リツイート」が約4200件、「いいね」を約1万件記録している。

   鮎川さんがほかに投稿した写真を見てみると、「1週間 5本 1000円」と書かれた手書きの台紙や空のVHSケースに「レンタル中」と印字された緑のプラスチック札がかけられている。陳列されているタイトルを見ると1994年の英映画「バック・ビート」や87年公開の米映画「ロボコップ」のVHSテープがある――。

   このお店は三重県伊勢市にあるレンタルショップ「ジョイフル」だ。J-CASTニュース編集部は2018年9月26日、店主に対し電話を通じて取材を行った。

   インターネットを利用していないのか、ツイッター上で注目されていたことに気づいていなかったという店主、

「ここ数日、様子がおかしかった。マニアの方が熱心にビデオを見ていた」

と取材の冒頭で明かした。すでに噂を聞きつけたファンが店に訪れているようだ。

何故、今のような店に

   そもそも何故、VHSテープがメインの店舗となったのか。店の成り立ちについて聞いた。

   元々は現在の場所ではなく、JR東海と近鉄の伊勢市駅の近くで38年ほど前に貸レコード店として開業した。それから10年後、現在の伊勢自動車道近くに移転したことを機に、新たに登場した媒体であるCDとVHSテープの取り扱いを始めた。

   その後、DVDが新たな媒体として登場したが、

「大手レンタルチェーンに太刀打ちができない」

との考えから、アダルト作品以外のDVDソフトを扱うことはしなかったという。以来、ブルーレイディスクも扱わず、現在までVHS主体の営業を続けている。

   VHSは、松下電器産業(現パナソニック)の子会社だった日本ビクター(現JVCケンウッド)が1976年に世界で初めて開発。ソニーは75年にベータマックスを発売しており、激しい規格戦争を繰り広げたことは有名だ。

   88年にソニーも生産に加わり、世界的なヒットを記録したが、90年代後半にDVDが登場。さらに画質の良いブルーレイディスクがシェアを伸ばした。このことから、市場は急速に縮小。2016年7月末にはVHS方式の家庭用ビデオデッキの最後の生産メーカーだった船井電機が生産を終了した。そのため18年現在はVHSテープだけが引き続き生産されている。

   時代が変わってもVHSを扱い続けたことが、自然とほかの店にない「強み」となっていた。

「儲けは考えてない。ビデオの方は遊び」

   現在は「レンタル落ち」と言われるVHSテープとアダルト作品のDVD、8cmも含めたCD、アナログレコードを販売している。レンタルは、ほぼ利用客がいないとしながら一応は行っているという。

   とはいえ、これで経営が成り立っているとは考えにくい。店主に儲けの部分について聞くと、

「儲けは考えてない。ビデオの方は遊び」

   生活面では店主の夫が飲食店を開いており、そちらがメイン。また、貸店舗での営業ではないため、儲けの部分を気にしなくても良いのだという。

   今回注目されたのはVHSテープであるが、38年前に貸レコード屋としてスタートしたことからも、店主は様々な取り扱い品目の中でも、

「レコードの愛着が一番」

と語った。

   店主は高齢で、店は「命がつきるまでやりたい」としつつ、長い期間新しいタイトルを仕入れていないため、こうも話す。

「全部売れたら店じまい」

(J-CASTニュース編集部 大山雄也)

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