2019年 1月 17日 (木)

「4500兆円輸入」表明の政治イベント 上海輸入博を見た

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   2018年11月5日から10日まで、第一回の「中国国際輸入博覧会」が上海で開かれた。入場者は40万人(うち業者数が15万人)。8年前の上海万博の7300万人と比べると、規模はあまりにも小さいかったが、期間中ずっと上海に滞在し、会場に足を運んだ記者は、この政治色の強いイベントで、様々な興味深いシーンを見た。

  • 上海国際輸入博の会場。ブース総面積は東京ドーム6・5個分に達した
    上海国際輸入博の会場。ブース総面積は東京ドーム6・5個分に達した

欧州の「恨み言」

   輸入博についての中国メディアの報道は、歓喜と歓声一辺倒。賞賛の嵐だった。日本を含む西側の輸入博に対する印象も、ほぼ肯定的で、その主な見方は、グローバル化が頓挫しかけている今、中国が輸入博を開催して他の諸国家に輸出の機会を提供することは、中国の開放イメージを示す上で明らかに有利に働く、というものだった。

   とはいえ、西側メディアは、外国企業の不満と恨み言をはっきり伝えた。これらの恨み言はほとんど欧州の、特にいわゆる経済大国からのものだった。

   イタリア対外貿易委員会上海代表処首席代表のマッシミリアーノ・トレミテラ氏は、ロイター通信に対して次のように表明した。

「イタリア企業にとって中国市場は魅力的とはいえ、参入は実に容易ではない。例えば、食品分野における中国の規定はEU諸国と異なり、中国に進出する場合、専用証明書が必要になる。多くの企業にとって、これは決して安くはない投資だ」
「時にはこれらの証明書の取得費用が高くつくことがあり、生産方法の変更が必要になる場合もある。中国市場で成功できるかどうか分からない段階で、大きな投資が求められることに難色を覚える企業もあるかもしれない」

   過度に煩雑な中国の輸入の仕組みについて、貿易会社などは恨み言をずっと口にしてきたが、問題はこれだけにとどまらない。中国と外交摩擦が起こった国からの対中輸出は、「基準の厳格化」などの形で急に難しくなる。何かあれば「貿易が政治化されてしまう」点に、西洋諸国からの非難が集まっているのだ。

冷淡だった日本の大手商社

   習近平国家主席は輸入博開幕式での演説で、中国はこれからさらに開放し、15年間で40兆ドル(約4500兆円)の製品、サービスを輸入することを表明した。誰もが知っている通り、中国政府が主催した輸入博はただの商業プロジェクトではなく、むしろ、政治色の濃いイベントだった。この40年間続いてきた「輸入より輸出重視」という傾向が逆転しつつあることを海外にアピールし、中国の「開放」イメージを世界に示すことが最大の狙いだった。

   私は輸入博期間中にずっと上海に滞在し、展示を見に行った。ひとつ意外だったのは、日中貿易の主役のはずの日本の大手商社の不在だった。伊藤忠商事のブースはあったが、最後まで三菱商事、三井物産の展示を目にしなかった。

   おそらく「40兆ドルの輸入目標」などについてはまったく情報はなかったし、そもそも「輸入博はただの商業プロジェクトではない」という点にも理解が及ばなかったかもしれない。それにしても、日本の商社が、これほど中国事情に疎くなるとは―――。

早くも来年の出展申し込みも

   一方で、初めての輸入博で何を展示するか、日本企業は相当迷っただろうとも思われた。

   三菱重工業の展示エリアに入ると、ロケットや飛行機の模型があったが、それに興味を示し、買い付けに来るバイヤーはまったく見かけなかった。一方、空調や発電関連の展示の前はいつも人だかりがして、説明係の声が聞こえない盛況だった。

   日立の展示エリアでは、車解体用の大きなショベルの購入を申し入れるバイヤーがいた。現場にいた説明係は大急ぎで販売担当の責任者を呼び、交渉に入っていた。輸入博が「展示即売会」になる事態は想定していなかったようだ。こうした状況はほかのブースでも多かった模様で、今回出展しなかった資生堂(中国)は、6日に会場に出かけ、即座に来年の出展を申し込んだという。

   政治的な意図が強いイベントとはいえ、輸入博がビジネスの格好の場であることも、多くの企業が理解したのだ。来年も開かれる輸入博で、欧州などの「恨み言」や、日本の大手商社などが示した「冷淡さ」は、どう変化するか。私は注目している。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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