2024年 4月 17日 (水)

1万人の声援でJ2昇格! 鹿児島ユナイテッドFC代表に「集客力の秘密」を聞く

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   サッカーJ3・鹿児島ユナイテッドFCがクラブ史上初のJ2昇格を決めた試合では、観客席にコレオグラフィー(巨大な人文字)で「UP to J2」の文字が書かれ、インターネット上でも話題を集めた。

   クラブ史上最大の山場となった一戦に詰めかけたのは1万916人。1試合平均3000人ほどのJ3で、なぜこれだけのサポーターが集まり、異例と言えるコレオグラフィーを実現できたのか。発案したサポーターとクラブ代表に話を聞いた。

  • 11月25日の試合で描かれた「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:鹿児島ユナイテッドFC)
    11月25日の試合で描かれた「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:鹿児島ユナイテッドFC)
  • 観戦客が撮影した「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:のほほん蹴球見聞録(@nohohon_kenbun)さん)
    観戦客が撮影した「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:のほほん蹴球見聞録(@nohohon_kenbun)さん)
  • 観戦客が撮影した「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:hiro(@good1004day)さん)
    観戦客が撮影した「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:hiro(@good1004day)さん)
  • 11月25日の試合で描かれた「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:鹿児島ユナイテッドFC)
  • 観戦客が撮影した「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:のほほん蹴球見聞録(@nohohon_kenbun)さん)
  • 観戦客が撮影した「UP to J2」のコレオグラフィー(写真提供:hiro(@good1004day)さん)

「これは勢いに乗っちゃうなぁ」

   J2入りがかかっていた2018年11月25日のJ3第33節・アスルクラロ沼津戦は、サポーターの熱量も特別だった。

   ホーム・白波スタジアム(鹿児島市)には1万人以上の観客が集まり、バックスタンドの鹿児島サポーターが試合開始直前、巨大な市松模様と「UP to J2」のコレオグラフィーを描いた。背後には桜島も重なった。ストリーミングサービス「ダゾーン」の中継でも大きく映され、ツイッターでは、

「鹿児島ユナイテッドFCのコレオ。クオリティ高い!」
「桜島をバックに UP to J2」
「とてもJ3の試合とは思えない光景ですね」
「鹿児島さんのコレオが素晴らしかった!! これは勢いに乗っちゃうなぁ」

といった声が相次ぎ寄せられた。スタジアムで写真を撮ってアップするユーザーも続出した。

   今回コレオグラフィーを企画したサポーターの神脇摩侑(かみわきまゆ)さん(25)は、J-CASTニュースの取材に「ひとつになって選手に何か伝えたいと思いました」と話す。1週間ほど前、サポーター団体に「コレオをしたい」と伝え、協力を募った。普段の集客規模に鑑みて最初は「市松模様」だけを考えたが、物足りなかった。「J2」の文字を書こうと提案し、さらに話し合いの末、よりメッセージ性の強い「UP to J2」になったという。

   「もともと(J1)セレッソ大阪のサポーターなんですよ」という神脇さん。月に1、2回はC大阪戦を見に行くといい、昨季の天皇杯決勝・横浜F・マリノス戦でもコレオグラフィーを手伝ったため、「流れや感覚は何となく分かっていました」という。並行して鹿児島も、16年にJ3入りしてから応援するようになり「地元なので違う気持ちになりますね」と話す。クラブスタッフとは「とても仲が良くて、代表もフレンドリーなんですよ。家族みたいな感じです。クラブと距離が近いからコレオもできたと思います」と笑った。

「クラブの存在が日常化していく」

   「サポーターの皆さんとはよくお話ししますね」と取材に話すのは、鹿児島ユナイテッドFCの徳重剛代表(41)。

「コレオをやりたいと私たちに話があったのは、前節(11月17日・藤枝MYFC戦)が終わった直後でした。クラブとしては前日準備のためにスタジアムを開放するなど窓口業務は少しやりました。でもサポーターさんが企画・実行されたことで、クラブとしてはありがたいです。嬉しいですよね」

   地元2クラブが統合して14年に誕生した鹿児島ユナイテッドFCは、JFLを経て16年にJ3へ参入した。ホーム戦の平均観客動員数は、17年の3508人から18年は4040人へと約15%アップ。着実にサポーターを獲得している。

   その裏には、クラブの確かな集客への施策があるようだ。徳重氏は「地域密着の活動は大事にしています」と話す。

「今年は11月までに230回ほど何らかの活動をしてきました。選手はサッカー教室、市とのイベント、県立図書館での読み聞かせなどを通じて地域の方々と触れ合い、地元のお祭りにも参加させてもらいました。直接声をかけてもらったり写真を撮ったりして、そのつながりで力をいただいています。

活動が360回を超えたらほぼ毎日1回。そうなるとクラブの存在が日常化していくのではないかと思います。試合の日だけでなく、鹿児島ユナイテッドが生活の中に当たり前にあるようにしたいです。そのために必要なのは積み重ね。今回1万人以上も足を運んでいただけたのは、もしかしたら今までスタジアムに行くほどではなかったけど応援はしてくださっていて、J2昇格がかかる試合ならと思われた方々がいらっしゃったのかもしれません」

「成績・観客数・予算規模は正の比例関係にある」

   公認会計士の資格と経験をもつ徳重氏は、「私はそれで貢献するしかない。大学時代はスポーツマネジメントを学んで、大事にしているのが『チームの強化と普及』を徹底することです」と話す。大学時代まで自身も選手。クラブ運営では、

「『成績・観客数・予算規模は正の比例関係にある』というのは一貫してスタッフにも伝えています。今季も、順位と観客数がJ3で2位、予算規模は3~4位です。そこでサポーターと私どもがチームのためにまずできるのは、観客数を増やすことです」

との考えを述べる。今季は初めて「集客担当」の専任スタッフを置き、これを中心に毎週ミーティング。「どうすれば集客を増やせるかという意識が、クラブ全体で高まりました」という。

   J1・J2で普及しているもののJ3での採用事例は少ない「ワンタッチパス」(来場履歴の取得システム)を今季導入。「客層のデータを取り、地元の鹿屋(かのや)体育大学に協力をいただいて分析し、活用しています」という。動員予測の精度も上がった。沼津戦は1万規模の大入りとなったが、事前に「1万800人」との予測が出ていたため、大きなトラブルなくスムーズに対応できた。

「鹿児島はポテンシャルある」

   「鹿児島のサッカーにはポテンシャルがある」と徳重氏は述べる。J2以上に属するプロクラブはこれまでなかった同県だが、高校サッカーでは全国屈指の強豪校があることで知られる。鹿児島城西高時代の大迫勇也選手は、冬の高校サッカー選手権で相手主将から「大迫半端ないって」の言葉を引き出したことでも有名だ。鹿児島実業高は城彰二氏、前園真聖氏、遠藤保仁選手ら、日本代表でも中心を担ってきた選手を数々輩出してきた。

「冬の選手権は地元で例年楽しみにしています。県内のテレビ視聴率でも選手権の試合は例年上位に入ります。強豪校OBの選手や指導者も多く、サッカー熱はあると思います」

   鹿児島は沼津戦に1-0で勝利し、勝ち点を57に積み上げてJ2昇格条件の2位以上を確定させた。「J2は厳しいリーグです。まずは予算規模を拡大し、降格しないチームを作るのが現実的な目標です」。「J1昇格は?」と聞くと、苦笑いして「いや、そんなに甘い世界ではないでしょう」と話した。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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