2024年 4月 27日 (土)

行き詰る「原発輸出」のこれから 国内再稼働への影響も

技術・人材の維持のためにも「輸出」重視、しかし...

   官民協力の原発輸出として一番実現性が高いとみられた英国での計画が行き詰まったことは、原発輸出に、そして今後の原発の「維持」にも打撃だ。

   国内での反対論を押し切って「重要なベースロード電源」と位置づけ、再稼働を進めるが、新たな建設や建て替え(リプレース)の見通しは全く立たない状況だ。そこで、海外で原発を建設しなければ国内メーカーの技術や人材を維持できないとの考えから、安倍政権は原発輸出に力を入れる方針を打ち出したのだ。

   福島事故後、政府は原発輸出を可能にするための原子力協定をカザフスタン、ベトナム、ヨルダン、トルコ、アラブ首長国連邦などと次々結んできた。2017年には、核不拡散などの観点から異論も多かった核兵器保有国・インドとも締結し、トルコをはじめ、安倍首相も各国を回って売り込んだ。

   だが、原発事故後に安全対策の費用が膨らみ、建設コストは高騰、一基5000億円程度から1兆円超に拡大。日本勢の競争力は衰える中、原発輸出に最も熱心だった東芝は傘下の米ウエスチングハウスが経営破綻し、海外の原発建設事業から全面撤退したほか、各国での計画も、2012年にリトアニアの国民投票で反対多数となり、内定していた日立製作所の原発輸出は凍結。2010年に建設で合意したベトナムの計画は2016年にベトナム側が撤回。日立や東芝、三菱重工などの台湾の計画も2014年に凍結された。

   日立の中西会長の発言が伝わった12月17日、菅義偉官房長官は会見で「(英原発計画は)現在、協議中と承知している」と平静な態度を見せつつ、「日本の原子力技術に対する期待の声は各国から寄せられている。世界での原子力の平和利用、気候変動問題への対応として責任を果たしていく」と強調した。しかし新たな輸出案件もなく、成長戦略の看板政策は展望を見いだせないのが実態だ。

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