2024年 4月 26日 (金)

日本人ボクサー、海外進出の新しい形 背景にはテレビ中継の減少も

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   日本人ボクサーの海外進出がここ数年、顕著になった。今年に入ってすでに2人の日本人ボクサーが海外で世界王座に挑戦している。2019年1月18日(日本時間19日)に高橋竜平(29)=横浜光=が米ニューヨークでIBF世界スーパーバンタム級王座に挑戦し、井上岳志(29)=ワールドスポーツ=が1月26日(日本時間27日)に米ヒューストンでWBO世界スーパーウエルター級王座に挑んだ。いずれも王座獲得には至らなかったが、近年にみられる日本人ボクサーの海外進出の象徴的な世界戦だった。

   今月9日にフィリピン・マニラでWBA世界バンタム級暫定王者と対戦したボクサーがいる。バンタム級を主戦場としてリングに上がる中村優也(28)だ。この一戦は世界王座をかけたものではなく、ノンタイトル10回戦で行われ、中村は世界の暫定王者に2回TKO負けを喫した。上記の高橋と井上と同じく世界を股にかけてリングに上がる中村だが、高橋と井上と決定的な違いがひとつある。それは中村が日本のどこのジムにも所属せず、フリーとしてリングに上がっていることだ。

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自らプロモーターも兼務して

   一般的に日本でプロライセンスを取得するためには、日本ボクシングコミッション(JBC)に加盟する日本国内のジムに所属しなければならない。そしてそこの所属選手としてJBCが行うプロテストを受け、合格すればJBCからプロライセンスが交付される。これには例外はなく、日本のリングに上がるためにはJBCによるライセンスが必須で、これを持たないボクサーは外国人ボクサー扱いとなる。

   日本のジムに所属せずに海外で活躍する代表的なボクサーは、元世界3階級制覇王者の井岡一翔(29)だ。2009年に父・一法さんが会長を務める井岡ジムからプロデビューし、世界3階級制覇を成し遂げて2017年12月に引退を公表。JBCに引退届を提出したことで日本におけるプロライセンスが失効した。翌2018年7月に現役復帰を発表した際には、日本のジムに所属せずに海外のプロモーターと契約して海外のリングで活路を見出す旨を明かした。

   日本のジムに所属せずにフリーランスとして活躍する井岡と中村だが、厳密にいえば2人のケースは若干、異なる。実績のある井岡は海外の有力プロモーターと契約し、プロモーターが条件などを考慮してカードを取捨選択し井岡に提供する。中村の場合はプロモーターが行うべき業務をすべて自身でまかない、選手とプロモーター業を兼務して自身を売り込んで試合を決めていく。

「フリーランス」のメリットとデメリット

   日本のようにジム制度のない海外でも、井岡のようにプロモーターと契約してリングに上がる選手がほとんどで、中村のスタイルは世界でも珍しい。このようなスタイルを取ることで選手にとってどのようなメリット、デメリットが生じるのだろうか。

   まずメリットだが、ジムまたはプロモーターを通さないで試合を行った場合、ファイトマネーのすべてが自身の懐に入る。日本の場合、ジムのマネジャーはマネージメント料として最大33.3%を選手のファイトマネーから請求することが出来る。海外では選手とプロモーターの契約によりそれぞれパーセンテージが異なるが、ファイトマネーの数パーセントがプロモーターへ流れる仕組みとなっている。

   もうひとつ、日本のジムに所属しないメリットとは、JBCが認可していない海外の地域タイトルに挑戦して王座を保持することが出来ること。現在、JBCが認可している団体はWBA、WBC、WBO、IBFの4つだが、海外にはJBCが認可しない地域タイトルが数多くあり、その王座に日本のジムに所属する選手が挑戦して王座を獲得しても王者として認可されないケースがある。フリーランスとしてリングに上がれば、この制約にとらわれることなく海外の地域タイトルに挑戦でき、試合の選択肢がより広がる。

   一方のデメリットは、試合を組みにくいことだろう。ノンタイトル戦ならば、それほど多くの契約はないが、世界タイトル戦となれば数多くの項目が契約に盛り込まれる。そのほとんどが英語での契約で、契約の書類をすべて自身でこなさなければならない。海外で試合を行う場合、ビザの取得などが必要となり、これらの事務的作業も同時に行わなければならない。日本の場合、これらはマネジャーが全て請け負うため選手に負担はかからないが、中村はこれらをひとりで行う必要がある。

加速するボクサーの海外進出、その魅力とは...

   以前に比べ、日本国内でボクシングの世界戦がテレビ中継されることは減少してきた。国内でのテレビ放送がないため、ファイトマネーの多くを占める放映権料が見込めず、日本人の世界王者のファイトマネーは全盛を誇った昭和の時代に比べると減少の傾向にある。ただ、世界的にみると、ペイ・パー・ビュー(PPV)方式が定着している米国などはボクサーが巨額のファイトマネーを獲得する可能性を秘めており、フロイド・メイウェザー・Jrは1試合で100億円ものファイトマネーを手にする。

   近年、ボクシングの本場でのファイトを望む選手が増加の傾向にある。日本に比べてより多くのファイトマネーが確約されることも魅力のひとつだが、ステータスもひとつの要因だといえるだろう。日本でテレビ放映される井上尚弥(25)=大橋=もまた、海外志向が強くラスベガスのリングに名声とビッグマネーを求める。ボクサーの海外進出の新しい形で世界を目指す井岡や、マネジャーを持たずに奮闘する中村のように、今後、日本ボクシング界でもこのような形で世界に飛び出していく選手が出現するかもしれない。

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