2019年 12月 12日 (木)

盛り場も農村も静かになった 中国を根底から変えるスマホ

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   2019年の春節が終わった。休暇の後、里帰りしていた農村部から大都市に戻る農民労働者、ことに西部のまだまだ発展していない地域から東部の沿海地域に再び戻っていく大量の人たちの移動については、相も変わらず中国の報道の定番メニューだろう。ただ、この数億、いや述べ10何億にも及ぶだろう人流の様子は、かつてと比べてだいぶ違ってきたように感じる。

   こうした観点から、改めて今年の春節前後の盛り場を歩いた。最も強く感じたことは「静かになったな」ということだ。北京空港であれ上海駅であれ、ほとんどすべての人たちは手にしたスマートフォンを見ており、かつてのように大声で話し合う声を聞くこともなく、道を尋ねる人すら、いなくなってしまった。アプリが、ある場所に行くにはどうすればいいか教えてくれるスマホが、人と人との会話や教え合いに、完全に取って代わってしまった。会話の相手は身の回りにいる人ではなく、遠くにいる知り合いだったり、または知らない人だったりになった。スマホを通じて。

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麻雀アプリで、一人楽しむ

   農村労働者の実家がある地域でも大きな変化が起きている。元々文化的な楽しみに乏しかった農村部では、4人知り合いが集まればまず麻雀卓を一緒に囲むことになったものだ。4人集まらなければテレビを見るくらいしかない。だから農村で聞こえるのは、麻雀牌をじゃらじゃらかき交ぜる音か、またはテレビから流れてくる標準語の放送だった。

   だがその麻雀牌の音が聞こえなくなっているという。「スマホアプリで麻雀を一人で楽しむ農村女性」という報道が最近あった。その背景には、Wi-Fiがこのところ農村部にも急速に普及している要因もある。農村でのWi-Fi料金は月に50元(約800円)が相場のようだ。

   その農村で、里帰りしてきたばかりの人と家族の間で、もはや話すことがあまりなくなっているという話を知人から聞いた。彼らは帰郷前、中国版LINEのWeChatで既に毎日会話しているからだ。その日その日にあったことを動画で見せ合ってもいる。年に1度の里帰りで久しぶりに再会するという距離感は、すっかりなくなってしまっているのだ。

   ほとんどの人は実家に着いたなら、やはりスマホを取り出して、遠くの知り合い、または見知らぬ人たちとチャットを始める。コメントもする。自分自身に関することについて、またはまったく無関係の事柄に対して。

持つべき人は持つようになった

   麻雀牌をかき交ぜる音、再会を喜び合う会話が聞こえなくなった中国の農村の変化は、中国のスマホ市場が飽和状態になりつつあることを示しているともいえる。

   中国のスマホ利用者は2017年に7億5千万人。2018年の数字は未発表ながら、ふたけた成長が維持されたとすれば8億人を超えたはず。 14億の全人口のうち、乳幼児や高齢者、そして極度に貧しい人々を除けば、持つべき人のところにはスマホはほぼ行き渡ってしまったといえる。

   米国の調査会社IDCが発表した調査によると、2018年の中国のスマホ出荷台数は、2017年より約1割減って、約3億9800万台だった。減少の背景について、「景気減速などによる市場縮小」という見方が多い。ただ、スマホを持ちたい人は既に持ってしまっているのだから、買い替えを控える人が少し増えたら、これくらい減ることはある意味で当たり前だろう。

   これから、スマホの数量的な成長には限りがあるだろう。けれどスマホは中国人の生活を引き続きもっと変え続けていくはずだ。スマホがモバイル決済やシェアリング・エコノミーの点から中国にもたらした変化は、既に多くが報道されているから、日本の多くの人にも分かるだろう。ただ、里帰りした家族同士の会話、農村部での楽しみ方がすっかり変わってしまっているなど、実際には、生活のもっと深い部分でスマホは中国を根底から変えつつある。5G時代が到来すれば、変化の度合いはもっと大きくなるに違いない。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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