2019年 11月 20日 (水)

政権の「PB黒字化」楽観論、新聞各紙はどう報じたか

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   政府が中長期の財政に関する最新の試算をまとめた。財政健全化の指標である国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字は2025年度に1.1兆円まで減り、黒字化の時期も、これまでの試算より1年前倒しして、2026年度とした。ただ、「ありえない」ような高い経済成長を前提にしており、新聞各紙からは「実現不可能」どころか、さらに悪化する懸念も上がる。

   1月末の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に内閣府が提出した。財政試算は毎年1月と7月の2回、直近の経済見通しなどをもとに改定している。

  • 安倍政権が目指すPB黒字化だが…
    安倍政権が目指すPB黒字化だが…

「最大限うまくいった場合」という前提条件付き

   まず大前提として、安倍政権は2025年度PB黒字化を目標に掲げている。しかも、2020年度黒字化の歴代内閣が踏襲してきた目標を、2017年の衆院解散の際に2025年度に先送りしたものだ。そして、前回2018年7月の試算では、黒字化は先延ばしした目標よりさらに2年遅れて2027年度としていた。

   そして今回の改定では、前回以降に決まった2019年10月の消費税増税に向け同年度予算案に盛り込んだ約2兆円の経済対策などの歳出増の一方、同年度予算案で、医療や介護など社会保障費の増加額を約4800億円と要求段階から1000億円以上圧縮するなど歳出抑制策も織り込んでいる。

   その結果、2019、20年度のPB赤字は前回から拡大するが、消費税増税の経済対策がなくなる2021年度以降のPBは前回より改善するとした。2025年度PB黒字化という政府目標は引き続き実現しないが、それでも2025年度の赤字幅は1.1兆円と、前回試算の2.4兆円から半分以下に縮小すると見込んでいる。黒字化の達成時期も前回試算の2027年度より1年早い2026年度に前倒しできるとした。

   こう書くと、事態は改善しているような印象があるが、試算の前提をよく見る必要がある。内閣府自身が、「政府の経済政策などが最大限うまくいった場合」と認めるもので、2019~2022年度の国内総生産(GDP)成長率は物価変動の影響を除いた実質で1.3%~1.7%、家計の実感に近い名目成長率は2.4~3.0%で推移するとしている。そして2023年度には実質2.0%、名目3.4%という数字を示すが、名目3%以上というのは、実にあのバブル期以降はほぼ見られない水準だ。

エコノミスト「効果を過大に見ているのではないか」

   もう少し当面の数字を詳しく見てみると、2019年度は消費税増税に伴って消費の落ち込みなどが懸念され、民間試算は概ね実質成長率0%台との見方が多いが、試算が前提とするのは1.3%と民間の2倍の水準。税収は予算案で66.5兆円と過去最高レベル水準を見込む。2020年度も民間予測の3倍近い1.6%成長、税収66.3兆円を見込んでいる。ちなみに前回試算の2020年度は1.4%成長、税収66兆円だった。

   こうした数字には「ポイント還元やプレミアム付き商品券など効果が未知数の消費税増税対策の景気押し上げ効果を過大に見ているのではないか」(エコノミスト)などの疑念が尽きない。

   実は、試算は、より現実的な現状並みの実質1%前後の成長率を前提にした数字も公表している。これだと、2025年度のPB赤字は6・8兆円となる。冒頭に紹介した1.1兆円とは5.7兆円もの開きがある。

   この試算を、大手紙は諮問会議の翌31日朝刊で一斉に報じた。主な見出しをみよう。

日経「黒字化なお1年遅れ/高め成長でも26年度/甘い想定、実現は不透明」
朝日「25年度も1.1兆円赤字/最大限の成長前提/厳しい黒字化達成」
毎日「黒字化前倒し/高成長前提、2026年度に」
読売「赤字1.1兆円/25年度試算 黒字化1年前倒し」

読売ですら試算を疑問視

   日経が記事も長く、見出しもたっぷり取って、全体像を漏れなく表現しているほか、朝日は厳しさを強調、毎日は黒字化が2027年度から2026年度に前倒しになったことを伝えつつ、高成長が前提とくぎを刺し、読売は黒字化前倒しの事実を淡々と伝えるだけ――というように、見出しから受ける印象は微妙に違った。

   社説は公表直後に朝日、読売、毎日が掲載。まず、総論的評価は、朝日が「達成の道筋が、まったく見えない」「歴代最長の在任期間が視野に入る首相。その責務からなお、逃げ続けるつもりなのか」、毎日は「借金まみれの危機的状況に向き合わず、放漫財政を正当化するだけとしか思えない」とバッサリ。読売も「将来試算が多少改善したからと言って、日本の財政事情が厳しいことに変わりはない」「試算の前提が、楽観的過ぎると見られても仕方あるまい。財政規律が緩み、収支改善がさらに遅れる恐れもあろう」と、朝日や毎日より言葉遣いはマイルドだが、試算を疑問視する点に違いはない。

   そのうえで、朝日は第2次安倍政権の財政規律への姿勢を疑問視し、特に「景気回復が続きながら、歳出抑制が緩みがちな補正予算を10回組んだ。法律で決まっていた消費税の増税は、『新しい判断』などとして2度延期した」と批判。毎日も「黒字化は首相の自民党総裁任期が終わる21年より先だ。今回の見通しは健全化が進んだように見せかけ、首相は大盤振る舞いができるからくりとみられても仕方がない」と、歳出拡大への誘惑に負けないか、疑念を強調する。

   読売は「名目成長率が1%台半ばで推移する試算も示した。......こちらの試算を主たるシナリオに位置付け、財政健全化の方策を練るべきではないか」と、堅実シナリオでの政策立案を求める。

   歳出改革の必要の指摘も共通で、「社会保障を持続可能なしくみとするため、受益と負担のバランスをどうとっていくのか......待ったなしの政治課題のはずだ」(朝日)、「団塊の世代が75歳以上になり始める22年度からは社会保障費が急増する。......歳出抑制に本腰を入れるべきだ。」(毎日)、「数値目標を含む新たな社会保障と税の一体改革が必要だ」(読売)などと、3紙とも危機感溢れる書きぶりだ。

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