2024年 4月 18日 (木)

日経バッサリの「郵政民営化完了」 なぜか大々的に扱う読売のコントラスト

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   政府はこの秋、保有する日本郵政株を追加売却する。

   保有比率を、郵政民営化法が定める下限となる「3分の1超」ギリギリまで下げ、同法に基づく民営化を完了することになる。だが、郵便局網の維持を義務付けられるなか、金融2社の収益頼みを脱して成長軌道に乗るのは容易ではない。

  • 日経と読売の扱いは対照的
    日経と読売の扱いは対照的
  • 日経と読売の扱いは対照的

「できるだけ早期」と定められた

   郵政グループは、持ち株会社の日本郵政の下に日本郵便(郵便局と郵便事業)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社がぶら下がる形。郵政民営化法で、政府の日本郵政株式保有比率を「3分の1超」に引き下げ、日本郵政保有のゆうちょ銀株とかんぽ生命株は全て売却することになっている。いずれも売却期限はないが、郵政民営化の趣旨からいえば、できるだけ早期に行うべきものとされる。

   2015年11月、日本郵政、ゆうちょ銀、かんぽ生命の3社が東京証券取引所に同時上場したのが、株の放出の第1弾。日本郵政株は2017年9月にも追加売却され、今回は3回目になる。現在の日本郵政株の政府保有比率は56.9%で、「3分の1超」ギリギリにするなら、今回の売却数は10.6億株程度となり、売却益は1.2兆円超と見込まれる。3回の売却による調達額は計4兆円規模になり、東日本大震災の復興財源に充てる。

   また、今回、日本郵政株の売却発表に先立って、日本郵政が保有するかんぽ生命株の売却も決まった。かんぽ生命が自社株買い(4月8日、約3500万株)をした関係で、市場への放出株数は最大1.5億株余りになり、自社株買い分を含め、日本郵政が手にする売却総額は4000億円以上。日本郵政のかんぽ生命株保有比率は、これまでの89%から65%程度に下がる。

総じて小さい各紙の扱い

   日本郵政の長門正貢社長は4月22日の記者会見で、「(国の日本郵政株の保有株比率が)5割を切るのは、相応のインパクトではないか」と話し、経営の自由度が高まることに期待を示した。実際、形の上では「3分の1超」ギリギリになれば郵政民営化の完成という歴史的な出来事のはずだが、新聞の扱いは概して小さく、「受け記事」や解説の展開もささやか。計画通りに売れるか、不確定要素はあるにしても、冷淡さが目立つ。

   例えば朝日や毎日は売り出しの発表を小さく報じるだけで、共同通信の配信記事をそのまま使っていることもあるほど。やっと23日朝刊で長門社長の会見をそこそこ大きく扱い、今回の売却の意味や課題を書き込んだ。

   さすがに、日経はそれなりの扱いで、10日朝刊1面4段見出しで「追加売却へ/民営化へ出資下げ官僚」と書き、中の金融で1ページの4分の1ほどを使って解説記事を載せているが、「民営化 まず形から」と冷淡な見出しを掲げる。

   NTTやJTなど民営化の先輩と比べ、「携帯電話が伸びたNTTなどと異なり、日本郵政には柱となる成長事業が見当たらない。しかも過疎地域を含めて全国2万4千局の郵便局を抱える」と、重い荷物を背負っている負の側面に力点を置く書きぶり。ゆうちょ銀、かんぽ生命の金融2社の収益に依存(経常利益の8割)している現状を指摘し、2社の株式全面売却が民営化の真の終点であることを踏まえ、「日本郵政グループとして金融2社の分離まで見据えた長期戦略は描けていない」と切って捨てる。

突出して読売は扱い大きく

   また、11日朝刊では証券面に「民営化 さえぬ郵政株」という記事で、「市場で歓迎する声は少ない」として、成長戦略の不在に加え、2018年12月に大型上場を騒がれたソフトバンク株(ソフトバンクグループの携帯電話子会社)が上場初値を下回り続けているマイナスイメージの連想が日本郵政株の不人気を加速しているとの分析を掲載。17日朝刊の金融面で、かんぽ生命株売却の主幹事から野村証券が外れたことを大きく取り上げるなど、日本郵政グループの経営より、株式市場的な関心からの紙面展開が目につく。

   対照的に、突出して大きく、かつ好意的に報じ続けているのが読売だ。5日にかんぽ生命株売却を2面トップ(大ぶりの4段見出し格)で報じ、経済面ではそれよりやや大きく扱い、サイドの見出しで「根強い『民業圧迫』批判」と、バランスは取りつつ、メインの横長の見出しで「経営の自由度 高まる期待」と大きく謳った。10日の日本郵政株売却発表の記事も、2面3段で「政府保有率 法定下限に」を書き、経済面でも3段見出しで「民営化 最終段階に/経営課題は山積」と結構な扱いで、課題を列挙し、ゆうちょ銀、かんぽ生命株の売却を進めることで、金融2社への「規制も緩和される」と、民営化に肯定的な書きぶり。24日からは経済面で大型連載企画も始めた。

「サービス」見直しは不可避か

   いずれにせよ、経営効率の悪い過疎地を含む全国2万4000の郵便局網を維持する「ユニバーサルサービス」が義務付けられる一方、郵便の取扱数は電子メールの普及などで今後も減少の一途をたどるのは必至。収支改善のため、土曜の配達をやめたり、「配達は原則3日以内」の縛りを「4日以内」に伸ばしたりするなどの見直しは避けられないところだ。その一方で米保険大手アフラック・インコーポレーテッドの発行済み株式の7%を年内に取得すると決めたように、M&A(合併・買収)戦略も欠かせない。

   こうした課題にどう取り組んでいくか、国民の共有財産のわりに、注目度が高くないのは気になるところだ。まして、株売却となれば、どれだけ買ってもらえるかにも直結する。

   実際にかんぽ生命株は、売り出しの報道直後は「経営の自由度が高まる」との期待から2400円台から一時は2700円台に急上昇、その後やや落ちる中で、売り出し価格は15日に2375円に決まったが、さらにズルズルと下げ、22日には一時、2202円をつけるなど冴えない。売り出し株受け渡し日の23日終値も2279円となるなど、売り出し価格決定後はずーっとその水準を下回る、つまり今回買った人は最初から含み損を抱えてスタートする憂き目にあっている。

   もちろん、株式市場全体の動向にもよるので、将来を予測するのは困難だが、日本郵政株の売却も、容易ではなさそうだ。

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