2019年 6月 17日 (月)

「Mr.ラグビー」平尾誠二という男の生きざまは、なぜ人々の心を打つのか

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   時が経つのは、早いものだ。

   「Mr.ラグビー」と呼ばれた平尾誠二さんが亡くなったのは、2016年10月20日――。53歳という若さだった。その端正な顔立ちと、トレードマークだった口ひげ。何より、日本中のラグビーファンを魅了し続けた華麗なプレーの数々は、今でも多くの人々の心に残っている。

   「ラグビーW杯日本大会」が開催される2019年、平尾さんの人生を振り返る書籍「友情2」(=同書、講談社、1400円+税)が5月24日、発売される。かねて親交のあったノーベル賞受賞者の山中伸弥教授「編」で、2017年に発売された「友情」の続編となっている。プレーはもちろん、平尾誠二という1人の男が、どれだけ周囲から愛されていたのか、その魅力は...という生きざまを、同書とともに振り返ってみたい。

  • 平尾さんの生涯をつづった「友情」(左)、「友情2」(いずれも講談社発刊)
    平尾さんの生涯をつづった「友情」(左)、「友情2」(いずれも講談社発刊)

死の2日前、愛娘の早紀さんが「赤ちゃんができたよ。パパはおじいちゃんになるんだよ」

   伏見工(=現・京都工学院高)花園初優勝、同志社大3連覇、神戸製鋼7連覇、日本代表主将、日本代表監督...平尾さんのラグビー史は、どんな言葉を並べても語りつくせない。同書では、愛娘の早紀さん、盟友だった山中教授、ドラマ「スクール☆ウォーズ」の「泣き虫先生」として有名になった山口良治元監督(元日本代表)らの言葉でつづられている。

   元ラガーマンだった筆者が、同書の中で一番、心を打たれたのは、愛娘の早紀さんの言葉だ。

「赤ちゃんができたよ。パパはおじいちゃんになるんだよ」

   早紀さんは2015年6月に結婚。第1子を妊娠し、「パパ」に報告したのは、平尾さんが天国に旅立つ2日前だったそうだ。

   現役当時の平尾さんは、土日も練習や試合で「ほとんど家にいなかった」と語る早紀さんだが、同書の中で唯一、

「目立つことが嫌いで、学校の行事にほとんど参加しない父が、一度だけ幼稚園の授業参観に来てくれたことがあります。そのときの写真を見ると、わたしのために精一杯、"普通の父親"らしいことをしてくれていることがよくわかります」

と語っている。

   また、早紀さんが結婚すると報告した時、平尾さんは「相手はどんな奴なんだ」と聞くことはなく、

「相手が何をもっているかは重要じゃない。その人のもっているものが何もなくなったときに、好きでいられるかどうかが大切や。そういう相手と結婚すべきや」

   父親としては「どんな相手なのか?」と当然、気になるところではあっただろう。しかし「相手の地位や肩書や財産は問題ではない――」。愛娘を信じ、その「信じた道を行け」という、平尾さんなりの最大の餞(はなむけ)だったのだろう。

泣き虫先生「大切なことを教えるのを忘れていた。ごめんな...」

   また、平尾さんのラグビーの才能を見出した元・伏見工監督の山口先生は「大切なことを教えるのを忘れていた」。2017年2月10日に行われた「感謝の集い」で、

「親より先に逝くな――。そんな大事なことを教えるのを忘れていた。ごめんな...。あの賢い子が逝く順番を間違えるなんて...。代われるものなら代わってやりたい。私には子どもがふたりいますが、どちらも娘なので、彼のことはほんとうに自分の息子のように感じていた」

と語り、嗚咽(おえつ)を漏らした。

   山口先生は花園(高校ラグビー)決勝前、選手たちに「いいか、お前ら、60分間(高校は30分ハーフ)、目いっぱい、楽しんで来い!」と言って、選手たちを送り出した。「平尾にはラグビーだけでなく、人間形成においても、わたしのもてるすべてを教え込んだ」と話し、枯れることのない涙を流した。

   そんな平尾さんは、選手を経て指導者となった。かつてのインタビューで語っていたのが、

「僕は、ロッカールームで『勝つ』とか『勝とう』という言葉は一切、使わない。そんなもんは『神さん』が決めることやし」

   そのプレースタイルよろしく、仲間を信じ、自由奔放なチームを作った。また、人を「叱るときの4つの心得」として、

(1) プレー(行動)は叱っても人格は攻めない
(2) 後で必ずフォローする
(3) 他人とは比較しない
(4) 長時間叱らない

ということも、過去のインタビューで語っている。ラグビーという、特に激しいスポーツにおいて、時に厳しく、時にやさしかった平尾さんの人物像が浮かび上がる。

ノーベル賞受賞の山中教授は書籍の帯で...

   学生時代はラガーマンで、平尾さんを「盟友」と語るノーベル賞受賞者の山中教授は、同書の帯で、

「平尾誠二とワールドカップを見たかった...。いまも聞こえる君の声に励まされ、勇気をもらって、僕はこうして生きている」

   平尾さんへ――。筆者もあなたに憧れ、その背中を追い、必死に楕円球を追い続けてきました。今は立場を変え、書き手としてラグビーに携わっています。W杯日本大会開幕まで、あと4か月ほど。あなたが夢にまで見た日本開催を、微力ながらお手伝いする所存です。どうか、天国から大会の成功、日本代表の活躍を見守っていてください。

(J-CASTニュース編集部 山田大介)

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