2019年 11月 13日 (水)

横浜・千葉銀「強者連合」がもたらすもの

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   地方銀行最大手の横浜銀行と3位の千葉銀行が合意した業務提携。これまで地銀の再編のほとんどは「救済型」だったが、今回は、人口が集中する首都圏を地盤に、全国の地銀でも規模・収益ともにトップ級同士が手を結ぶ大型提携だ。「営業面で互いに取引先を紹介し合うのが柱になる。

   「強者連合」とも、「勝ち組連合」とも称せられる今回の提携。全国の地銀再編に刺激を与えそうだ。

  • 勝ち組同士のタッグ。全国の地銀への影響は(イメージ)
    勝ち組同士のタッグ。全国の地銀への影響は(イメージ)

東京に「攻め込む」タッグ

   横浜銀の大矢恭好、千葉銀の佐久間英利の両頭取は2019年7月10日、東京都内で記者会見して提携を発表。大矢氏は「首都圏にある両行は事業戦略が似通い親和性が高い。3桁億円の効果を生み出したい」と述べ、佐久間氏も「取引先を紹介し合い顧客基盤を拡充したい」と応じた。

   今回の提携は、法人向けでは合併・買収(M&A)や中小企業が悩む後継者問題のほか、ビジネスマッチング、新規ビジネスの創出などで取引先を紹介し合う。信用調査会社の東京商工リサーチによると、国内151万4056社(2018年3月末時点)のうち、横浜銀をメインバンクとする企業数は約1万8000社、千葉銀は、約2万2000社で、単純に合算すると約4万社に達し、りそな銀行(3万7000社)を上回り、3メガバンクに次ぐ。この分厚い顧客基盤が提携の最大のセールスポイントだ。両行はそれぞれ神奈川県と千葉県に多店舗を展開し、営業エリアとして競合が少なく、補完関係が見込めることも、提携を後押しした。会見場所が東京だったように、東京に東西から攻め込む形になる。

   海外拠点は千葉銀がニューヨークやロンドン、横浜銀が上海に支店を設けており、顧客の海外進出支援のサポートでも、補完関係を発揮できる。

   個人向けでは成長性がある相続関連業務での協力が柱で、具体的には千葉銀が強みを持つ遺言などの信託サービスを横浜銀の顧客に提供することなどが有力視される。個人向け運用商品の共同開発なども検討する。

   異業種の参入が相次ぐフィンテックなどデジタル分野でも連携する。勘定システムの研究開発も共同で進めていくという。

遠からず首都圏も人口減...次の一手急務

   両行の背中を押したのは、厳しさを増している経営環境だ。まず人口減少。現在は流入もあって人口が増えている首都圏だが、神奈川にせよ、千葉にせよ、2020年代の遠くない時期に減少に転じるとみられる。

   もう一つが日銀の金融緩和による超低金利で、地方を中心に地域経済の落ち込みと相まって、地銀の経営は圧迫されている。2019年3月期決算では、株式上場する78社の約7割にあたる54社の最終利益が前年を下回った。日銀の試算によると、10年後に地銀の6割が最終赤字に転落するという。金融庁の有識者会議は2018年、人口減や過疎化が進む23県では地銀の単独存続は困難になると指摘しており、金融庁は全国の地銀に県境を越えた再編や連携を促している。

   今回の2行の提携は、赤字転落寸前といった追い込まれたものではもちろんないが、顧客の先細りも見越し、中長期的に「生き残り」を考えた上での決断であるのは間違いない。

   加えて、金融とITの融合は確実に進み、送金などを中心に金融業以外の新興企業が銀行の事業領域を侵食し始めているとともに、デジタル分野で顧客といかにつながるかは銀行の未来を大きく左右する。この点で、両行は分厚い顧客のデータベースを活用してきめ細かいニーズを把握し、金融商品を効率的に販売していくといった展開を狙っている。

気になる「もう2つ」の銀行の行方

   ただ、こうした提携がどこまで効果があるかは見方の分かれるところ。両行は既に株式を約0.3%ずつ持ち合っているが、経営統合は「今のところ考えていない」(佐久間千葉銀頭取)と否定する。大幅な経費削減効果のある統合に踏み込まない提携が、どこまで成果を上げられるかは文字通り未知数。一方で、統合は時間とコストがかかり過ぎるというマイナス面もあり、提携にとどめる今回の2行の取り組みを評価する向きもある。

   もう一つ、今回の提携で気になるのが、両行と同グループ、または提携先の2つの地銀の扱いだ。横浜銀は東日本銀行(東京)と、コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)を構成しているが、今回の提携に東日本は加わらないと明言している。一方、千葉銀が提携する武蔵野銀行(さいたま市)については、「将来的に3行で協働することも検討したい」(佐久間頭取)というように、今後、合流して「3社連合」に発展する可能性もある。

   コンコルディアFG発足は2016年4月だが、FGの純利益は2年連続で減益と、業績は冴えない。「行風の違いから、一体感が醸成できず、収益拡大の足をひっぱっている」(大手紙経済部デスク)。加えて、東日本銀は2018年7月に金融庁から「不適切融資を繰り返した」として業務改善命令を受けたように、ガバナンス問題も収益の足を引っ張っている。このため、「お荷物」の東日本銀抜きの今回の提携になったというのが大方の見方だ。

   他方、千葉銀と武蔵野銀は2016年に資本・業務提携。5年間で収益アップやコスト削減で100億円の貢献を見込んでいるが、今のところ順調に進んでいるとされる。武蔵野銀が提携に加われば、地域的には埼玉県にも広がり、顧客基盤はさらに厚みを増す。

   これら2行の動向も、提携の行方に微妙に影響しそうだ。

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