2024年 4月 23日 (火)

一人のつぶやきが、ネットの怒りに火をつける 知っておきたい「ジェンダー炎上」の実情

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   企業などの広告で、女性像・男性像の描かれ方が議論を呼び、取り下げや謝罪に追い込まれるケースが相次いでいる。

   こうした炎上は、専門家やメディアの間では「ジェンダー炎上」と呼ばれる。多くはSNSで異を唱える投稿が拡散することで火が付き、それを報道機関が取り上げて燎原(りょうげん)の火のように広がる。

   特集企画「ジェンダー炎上のトリセツ」の第2回は、2019年に騒動となった生活雑貨チェーン「ロフト」と女性誌「Domani(ドマーニ)」の広告に、いち早く「NO」を突きつけた2人の女性に話を聞いた。

(聞き手・構成/J-CASTニュース編集部 谷本陵)

  • 【第二回】ジェンダー炎上のトリセツ
    【第二回】ジェンダー炎上のトリセツ
  • 【第二回】ジェンダー炎上のトリセツ

海外では「規制」対象に

   ジャーナリスト・治部れんげさんの著書『炎上しない企業情報発信』(2018年刊)によれば、ジェンダー炎上は「CMやコンテンツの中で描かれた女性像・男性像がインターネットなどで拡散することで、不特定多数の視聴者、読者の目に触れ、強く批判され、企業や団体のブランドイメージが傷つくこと」だという。

   J-CASTニュースの調査では、ジェンダー炎上は2016年ごろから頻発している(「炎上の平成史 mixiからバカッター、ユーチューバーへ...『ネット』はどう変わったのか」より)。

   背景の一つには、セクハラ被害を訴える「#MeToo」運動や「ポリティカル・コレクトネス(政治的・社会的に公正な表現)」の広がりを機に、性差別への意識が高まった状況がある。

   イギリスのASA(英国広告基準局)は19年6月から、性別に関する有害な固定観念を含む広告を禁止した。ASAのガイ・パーカー会長は、「社会の不平等を助長し、私たちはその影響を受けることが調査でわかった。簡単にいえば、広告表現の中には、やがて人々の可能性を狭めてしまう場合があるとわかった」と発表文で説明している。

   世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ」では15年から、性差別や偏見を打ち破る広告表現を表彰する「グラスライオン」部門が新設された。

   そうした海外の動きに反するように、日本では2019年以降もジェンダー炎上が止まらない。西武・そごうが元日に出稿した広告は、女性の顔一面にパイが投げつけられた写真とともに、「わたしは、私。」などのコピーが書かれ、ツイッターで「なんで女性を応援する広告で女性の顔にパイぶつけるの?」「社会構造の問題を語ってんのに着地点が個人の姿勢というところがなんか......」と批判を集めた。一方で、「現在の女性への役割・価値観・勝手な期待をよく表している」と前向きに受け止める向きもあった。

そごう・西武の当該広告
そごう・西武の当該広告

   同社はJ-CASTニュースの取材に、広告の意図を「さまざま制約の下でも、ご自分らしさを全うするために奮闘される女性や、それに共感するすべての方々を応援していきたいというメッセージを込めて発信させていただきました」と話していたが、狙いとは異なる伝わり方をしてしまった。

   そのほか、制服メーカー大手「菅公学生服」が製作したポスターの「自分が『カワイイ』と思った短いスカートによって性犯罪を誘発してしまいます」や、女子ハンドボール世界選手権大会をPRする垂れ幕での「ハードプレイがお好きなあなたに」「手クニシャン、そろってます」といった表現が、物議を醸した。

(左から)菅公学生服の広告、女子ハンドボール世界選手権PRの垂れ幕/画像はツイッターより
(左から)菅公学生服の広告、女子ハンドボール世界選手権PRの垂れ幕/画像はツイッターより

   菅公学生服のポスターは、2012年に製作したものがツイッターで掘り起こされた格好で、批判を受けて回収を決めた。

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