2019年 9月 18日 (水)

出資者募集→1か月で3000万円! 声優・平山笑美の音楽活動を支える「ファンの熱気」

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   声優がオリジナルソロアルバムを制作しようとしたところ、想定の13倍もの出資がファンから集まった――。

   これは声優・平山笑美さんのアルバム制作に向けたクラウドファンディング(CF)「平山笑美オリジナルソロアルバムCD制作プロジェクト」に起きたことである。エンタメ業界のコミュニティ・プラットフォーム「Fanbeats」上で出資を募ったこのプロジェクトは、開始初日にわずか1時間半で目標額を達成し、サーバーがダウンするほどファンが集まった。1か月強の募集期間を終え、最終的には当初の目標額の1275%越え、3187万5000円が集まり、アルバム制作と、その先のワンマンライブ開催を見据えて着々とプロジェクトが進んでいる。

   平山さんは「アイドルマスターミリオンライブ!」北上麗花役などを演じ、複数の作品で主題歌やキャラクターソングを歌唱してきた。もともとファンの間で平山さんの歌への評価は高かったが、ここまで熱を帯びたプロジェクトとなったのは何故だろうか。どのように出資者が集まったのか。J-CASTニュース編集部は2019年7月下旬、平山さんとプロジェクト発起人の渡邊寛太さんに話を聞いた。

  • 平山笑美さん(J-CASTニュース編集部撮影)
    平山笑美さん(J-CASTニュース編集部撮影)
  • 「やろうと思えば何でもできるなと」思ったのがきっかけと語る平山さん
    「やろうと思えば何でもできるなと」思ったのがきっかけと語る平山さん
  • 平山さんと、プロジェクト発起人の渡辺寛太さん(写真右)
    平山さんと、プロジェクト発起人の渡辺寛太さん(写真右)

思わぬ反響に「びっくり嬉しい」

   ――改めて、当初の目標額の1275%という額が集まったことに驚かれているのではないでしょうか。

平山:もう、本当にびっくりですね、(最初の目標の)250万円集まるかなとは不安に思っていたんです。最高額出資プランも定員分集まるのかなって感じだったのですが、皆さんがパソコンの前で待ち構えてくださっていたみたいで、こんなに私のソロ曲を楽しみにしている人がいたとは、もうびっくりと嬉しいが一緒になったような、「びっくり嬉しい」という気持ちです。

   ――最高額の出資プランである先着限定の「P(プロデューサー)セット」(20万円出資)と、「コーラス参加セット」(3万9000円出資)も初日に定員に達したそうですね。

渡邊:アクセスが殺到してしまいページにたどり着けず、出資を断念してしまったファンもいたため、急遽後日枠を追加するほどになりましたが、こちらも2分で枠が埋まってしまいました。

   ――それほどまでに平山さんの歌を望んでいる方が多いのだと思いますが、声優業と並行して、音楽活動にも重きをおかれているのはなぜでしょうか。

平山:実は私自身、声優になってこんなに歌に関わるようになるとは自分でもびっくりしているくらいで。ただ今の時代、声優をやるにあたってアニメやゲームで歌のお仕事の機会もかなり多いので、だったら歌をきっちり勉強しようかなと思ったのが始まりですね。いろいろなコンテンツを通して歌を知ってもらう機会が増えて、ファンの皆さんも割とライブも好きな方も多くて、お手紙もたくさんいただくようにもなりました。

   ――具体的にどんな経験が歌やライブへの興味に影響していたのでしょうか。

平山:大きなステージで、お客さんの前で生で歌うライブに出させていただくようになってからですね。特に「アイドルマスターミリオンライブ!」などのコンテンツ関係でそういった経験をする機会が増えました。やはり生歌唱って大変なんです(笑)。生歌だけでなく踊りも一緒にとなると筋肉の使い方も違うので、身体作りからしないといけないなと、深い所まで考えてトレーニングを始めました。それでスキルも上がって、いろんなオファーをいただくようになっていますので、いっそう勉強していかないと、と思っています。

   ――ファンの方からだけでなく、お友達からもライブに行きたい!と言われたのもきっかけだそうですね。

平山:声優仲間の友達が「笑美ちゃんライブしないの? やるんだったら絶対行くからね」って言ってくれて、当時私は声優プロダクションを離れてフリーランスになったばかりだったんですけど、「一人ぼっちだけど、友達とかにも声かけてお願いして、人を集めたらできるのかな」とSNSでつぶやいたのが始まりですね。

   もとより平山さんは、これまでの声優・音楽活動での実績から、歌唱力への評価は高かった。この一言がきっかけで、平山さんを応援する有志が集まって、プロジェクトが本格的に始動する。

ゲーム・音楽...業界を超えてスタッフが集結

   最終的な目標は平山さんのワンマンライブの開催。そのためには自由な表現もできるソロ楽曲も作りたい、ということで、まずはアルバム作りを目標にプロジェクトが立ち上がった。ゲーム会社や音楽制作会社で働くクリエイターやスタッフが手弁当で集まったという。発起人の渡邊さんも本業ではゲーム会社に在籍している。

   ――どのようにアルバム制作の企画は進んでいったのでしょうか。またプラットフォームにFanbeatsを選んだ理由は何でしょうか。

渡邊:手を挙げてくれたのは全員がゲーム・音楽・ライブなどの業界で働く人ですが、どうすればライブ開催にたどりつけるか、クラウドファンディング(CF)をするならどこが良いか、企画書を作って、平山さんとも話し合いを進めていきました。Fanbeatsは、コンテンツやクリエイターが先にコミュニティを作り、そこに制作者と出資者が集まって何回でもCFができるのが特徴です。ですからCD制作の後ライブが待っているので、もう一度CFができる可能性を考慮したら、Fanbeatsが最も適していました。

   本業で所属する企業や職種は様々でも「平山さんのことを心から応援したいという人しかいない」(渡邊さん)というチームで企画は進んだ。結果、いとうかなこさん、松井俊介さん、mftさんといったアニソン・ゲーソンの実績豊富なクリエイターや、「アイドルマスターミリオンライブ!」で共演する声優でミュージシャンの小岩井ことりさん、さらにはMONACA(モナカ)にAstroNoteS(アストロノーツ)という、気鋭の音楽クリエイター集団に所属する作家も作詞・作曲に名を連ねている。

   ――楽曲制作陣にはそうそうたる顔ぶれが集まりました。どのようなご縁があったのでしょうか。

渡邊:今回音楽プロデューサーを務めてくれた細江慎治さんに、僕が相談をしてA&R(音源制作から販売戦略までを幅広く担う役割)を協力してもらい、細江さんのコネクションなども生かしつつ人選をお願いしていました。まずは平山さんのファンがどんな曲を聴きたいか、というのを重視していて、今まで平山さんが関わってきたコンテンツで曲を提供してきた人や、それに近いジャンルで活躍している人が中心になりました。

   ――それゆえ「アイドルマスター」シリーズをはじめとした、バンダイナムコのゲームに携わってきた作家さんが多く参加された、と。

渡邊:僕らは平山さんのファンの方がどんな曲を聴きたいか、というのを大事にしていて、素の平山笑美が全力で歌うとどうなるのか、ってファンの皆さんもすごく興味があると思うんです。平山さんが歌ってきたキャラソンにも近い系統とともに、今までの平山さんとは全く違う世界観・ジャンルの楽曲を書けるような方にも協力をお願いしました。また(「艦これ」「ゆるゆり」等で作曲している)松井俊介さんは平山さんがぜひこの人にと希望して参加が実現しましたし、他にも皆さん忙しい中で平山さんの曲ならやるよ! と快諾してくれた人もいます。

   ――それだけコンテンツを制作する側からも、平山さんは信頼されているんですね。

渡邊:平山さんはお歌が上手いだけでなく、レコーディングもすごく早く済むんです。さらに制作スタッフが気付かなかったところまで修正してレコーディングしてしまう。だからスタッフとしてもすごくやりやすいだけでなく、スタッフなのにファンになってしまう。本当歌うために生まれてきた人だなと思います。(照れる平山さん)

   クリエイターまでもファン目線で応援したい思わせる平山さんのスキルと才も、プロジェクトの原動力に相違ない。その気持ちは一般のファンも同様で、「推したい」という情熱を形にできる出資プランによって、自分の声や名前をCDアルバムに残せるようになっている。

「皆さんの方がエンターテイナーだよって」

   ――応援して出資してくれたファンの皆さんが、一部の曲でコーラスに参加できるという、なかなか大胆な特典が出資プランにつきました。

渡邊:ファンによるコーラスは「録ったら面白いけど難しくない?」と企画の段階では思っていたんですが、スタジオ側から「10人くらいまでなら例があるしOK」という返事だったので、2曲でやろうと決めました。出資額はとりあえず「ありがとう」にちなんで「サンキュー」で3万9000円、合計25人にしたのですが、平山さんのファンってライブでよくコール&レスポンスを入れてくれる方が多いんですね。せっかくライブを前提としているのだから気持ちよくコールできる曲があるといいよね、ということで、コーラス収録に参加できたら、ライブ本番でも他の曲でも同じように盛り上がってくれるんじゃないか、と決めました。(ライブ好きなファンが多いので)コーラス参加権付きの上位のプランは埋まるだろうなとはひそかに思っていましたが(笑)。

   ――平山さんのボーカルと、一般のファンの声がどのようにユニゾンするか、興味深いです。

平山:私がゲームなどでよく歌ってきたかわいらしいイメージとは違う、パワー系の、格好いい曲になっているんです。男性のガッツがある声もすごく映えるようになっていて、私も聴かせていただいたのですけど、皆さんものすごいパワーで収録にエネルギーを込めてくれてそれが私にも伝わってきました。曲にマッチしている以上に、コーラスと私のボーカルが熱気対熱気、魂と魂のぶつかりあいのような作品になるかなと思います。

   ――最高額の出資コースのP(プロデューサー)コースになると、コーラス参加権に加えてブックレットに名前が記載されます。

渡邊:このプロジェクトを立ち上げたのは僕らですが、ファンも(アルバム制作に)参加したいだろうと思います。そこで少人数とはいえファンの気持ちを形にできるよう考えて用意しました。平山さんのファンはアイドルマスターのプレイヤーも多いので、「プロデュース」という発想とも親和性が高いのも確かですが、アイマスはアイマスで入り口として親しんでもらいつつ、平山さんの自由な表現を堪能してほしいですね。

   ――そのファンの方からは、平山さんは今までどのような声援をもらっていましたか?

平山:「歌が好き」「声が好き」っておっしゃってくださる方がすごく多くて。もともと声を使ったお芝居の現場を歩んできたので、歌を評価されると不思議な気持ちになるんですけど(笑)、でもすごい皆さん耳がすごく肥えてらっしゃって、私がこだわって歌ったところを「ここの歌い方がすごく好きです」というように言ってくれます。そこは私も「こういう風に聞こえたらいいな」って思ったことが通じているということなので、うれしく受け取っています。
それと、すごく誠実で紳士的な方が多いんです。お手紙の言葉なんかも読んでも、アーティストを応援するというより近い人をサポートするような感覚で応援してくださる方が多いのかなと思います。エンタメの世界にいるのは私なのに、ファンの皆さんの方がエンターテイナーだよってくらいに、親身な言葉をもらっています。

運命的に広がった応援の輪

   目標を大幅に上回った出資額で、アルバムやライブのボリュームも期待が高まるものになっている様子だ。

   ――これほど出資が集まったということは、アルバムも特典などが付けられるようになったのでしょうか。

渡邊:まず4曲あれば最低限ライブができると考え、4曲制作を下限としました。そして平山さんだから出資額1000万円はいくかな? とみていたので、10曲制作を決めていたのですが、さらに2曲を追加できました。そこでMONACAさんらの参加もいただけるようになりましたね。
さらにハイレゾ音源のアルバム収録も決定したので、より平山さんの声をいろいろな角度から聴いていただけます。実は出資額が増えたからといって余裕ができたわけではなく、ライブもできて黒字かな、というところなのですが、このアルバムとライブが成功すれば、平山さんはそれを実績としてさらに飛躍して、次の仕事に進んで行けます。そこまでを見据えて僕らも平山さんの次の飛躍になれば、という一心でやっています。

   ――楽曲が増えて、ライブの期待も高まりますね。

渡邊:まだ秘密ですが、ライブではさらに喜んでもらうための仕掛けを用意しています。同じチケット代でも4曲から12曲と、皆さんの支援のおかげでより多くのリターンを届けることができていますが、アルバムを聴けばさらに期待値が高まるものになっています。

   順風満帆のプロジェクトだが、そこにはタイミングもあった。平山さんがこれからのアーティスト人生を考えていた時にアイデアが浮かんだからだった。

   ――このプロジェクトが具体化したのはちょうどフリーランスになられた頃ですね。

平山:高校を卒業してすぐ専門学校に入り、プロダクションに所属して、という声優としてはスタンダードなキャリアを歩んできたのかなと思いますが、まだまだ世の中知らないことも多いので。
変化の激しいエンタメの世界で私もまだこれからダッシュをかけられる時期なので、一旦世の中のいろんなものを見て自分を成長させたい、自分の力でやる機会があってもいいんじゃないかと思ったのがきっかけでした。一回外を見たいなという感覚ですね。
渡邊:平山さんがフリーになられると聞いて、どんなことをするのかなと僕らも興味を持っていたところに彼女の(ライブができるかなという)あの発言があって、それでプロジェクトが進みました。運命的ですね。
平山:本当に運命的で......意図していなかったのに流れでこうなったというか。ファンの方のパワーに支えられていますし、直接応援できるので(応援・出資してくれる方も)楽しんでもらえるかなと。作家さんにファンと、いろんな方がいろんな角度で網目のように支えてくださっているので、もっと輪が広がってすごく面白い形になるんじゃないかなと思います。レーベルで作家さんと一緒に曲作りを深めていくのとは一味違うものになりそうです。
 

   ――今の平山さんにとって、声優として「芝居」と「声」はそれぞれどんな重みがあると思われますか。

平山:私にとってはどちらも声で表現するものなので、イネとトウモロコシのように畑は違うのかもしれないですけど、これからも表現にこだわりながら挑んでいきたいですね。声の出演も楽しいですし、歌での表現も生でお客さんと一体になって楽しめる醍醐味があります。作品に出演して役を背負った私と、今回のような自由な企画で、素で歌って表現と戦っている私の、両方とも応援してくれたらなと思っています。

   異色な道かもしれないが、チャンスを得た平山さんがこれからどんなものを見せてくれるのか? とファンやクリエイターの期待値は高まる一方だ。アーティストを推すファンが、その情熱をより直接的に形にできるプラットフォームを介し、CDやライブとして実を結ぼうとしている。まだ時期は明かせないというワンマンライブも要注目だ。

(聞き手・構成 J-CASTニュース編集部 大宮高史)

(編注:8月5日13時追記)読者の方からのご指摘を受け、記事の一部を加筆・修正いたしました。
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