2024年 4月 24日 (水)

大塚家具、ヤマダ傘下入りの「ゆるさ」 会見でも具体策は...?

   父と娘による経営権争奪戦で世間の注目を集めた後、販売不振に陥っていた大塚家具が、家電販売大手のヤマダ電機の傘下に入る。

   自力の経営再建を果たせず、他社の子会社になるなら、経営者は退任するケースが一般的には多いが、大塚家具の大塚久美子社長は続投して再建を目指す。山田昇会長が率いるヤマダ電機は家電以外の住宅に関わる分野の充実を図っているが、大塚家具の浮上は容易ではない。記者会見での話しぶりも、そんな印象を助長しかねないものだった。

  • 大塚家具の前途は(2015年撮影)
    大塚家具の前途は(2015年撮影)
  • 大塚家具の前途は(2015年撮影)

「前向き」印象打ち出すことに腐心

   山田会長と大塚社長が東京都内でそろって記者会見した2019年12月12日。山田会長が「両社の強みが発揮できる」と自信を示し、大塚社長は「引き続き全力を尽くしたい」と意欲を語った。大塚家具の第三者割当増資をヤマダ電機が引き受け、議決権ベースで約51%の株式を約43億円で取得する枠組みだ。親子のように年齢が離れた両氏は、記者会見で前向きな印象を出そうと腐心していたが、両社が置かれた環境は決して楽観できない。

   まずは大塚家具。久美子社長の父で創業者の勝久氏は、高級家具をそろえた会員制の店舗というビジネスモデルを確立したが、2000年代に入って低価格の家具を扱う「イケア」や「ニトリ」に押されて売上高が減少していた。そこで「カジュアル路線」への転換を目指した久美子氏が、勝久氏と経営方針を巡って対立した末、2015年の株主総会の委任状争奪戦(プロキシーファイト)で久美子氏が勝ち、勝久氏は大塚家具を去った――こうした一連の騒動は、この記事を読んでいるあなたなら、当然ご存じだろう。

   さて、久美子社長は会員制の廃止や不採算店の閉鎖といった改革を進めたが、消費行動が二極化する中で中間の価格帯のニーズを掘り起こせず、「お家騒動」で傷ついたイメージの回復も果たせず、業績は悪化の一途をたどった。他社の資本を受け入れて延命しようと模索する過程で複数の企業名が提携先として浮かんでは消え、2019年2月に中国で越境電子商取引を手掛けるハイラインズとの資本業務提携を結んだものの、増資が計画通りに行われず、窮地に追い込まれていた。

   そこで手を差し伸べたのが2019年2月に業務提携を結んだヤマダ電機だった。

住宅部門とのシナジー狙うが、肝心の...

   そのヤマダ電機は業界首位を死守しているものの、アマゾン・ドットコムなどのインターネット通販が台頭する中で、家電量販店そのもののマーケットが縮小している。そこで家電販売と相乗効果が期待できる住宅関連に事業を拡大しようと、東証1部に上場していた注文住宅のエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を2011年に買収。ヤマダ電機の店内に住宅販売の拠点を設けて提携の効果を出そうとしたが、住宅部門の業績は見込んだほどは伸びていない。

   そんなヤマダ電機が大塚家具を取り込むとどうなるのか。国内直営店だけで950店を超えるヤマダ電機の店舗網に大塚家具の商品を置けば、販路はそれなりに広がるだろう。だが、それだけではイケアやニトリ、インターネット通販との厳しい戦いが挽回できるとは考えにくい。久美子社長が述べたような「家電と家具の枠を越えた生活提案」の具体策はまだ示されていない。

   山田会長は久美子社長について「チャンスを与えないといけない」と述べ、大塚家具に来期の黒字転換を求めた。4年間で果たせなかった経営立て直しが、ヤマダ電機の傘下に入れば実現するのだろうか。両社が置かれた厳しい競争環境と対照的に、こうした「ゆるさ」を感じてしまう記者会見だった。

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