2024年 4月 24日 (水)

渋谷で実は4駅目 銀座線に眠る「廃駅」たち、その歴史と現在の姿とは

   東京の渋谷と浅草を結ぶ東京メトロ銀座線は、現渋谷駅を移転工事のため2019年12月27日限りで営業を終了し、2020年1月3日から新しく移転した渋谷駅で営業を開始する予定だ。最終日の27日は別れを惜しんで現渋谷駅の写真や思い出がツイッターなどに多く投稿されている。

   1938年に開業した現渋谷駅ホームは廃駅となるが、日本最古の地下鉄の銀座線には既に移転・廃止で3駅の廃駅があり、4駅目となる。それぞれの廃駅は現役の「近代化遺産」ともいえる銀座線に今もひっそりと残っている。

  • 1938年以来81年の歴史を終える現銀座線渋谷駅ホーム
    1938年以来81年の歴史を終える現銀座線渋谷駅ホーム
  • 東京高速鉄道の旧新橋駅「幻のホーム」は当時の様子が復元され時折公開されている
    東京高速鉄道の旧新橋駅「幻のホーム」は当時の様子が復元され時折公開されている
  • 1938年以来81年の歴史を終える現銀座線渋谷駅ホーム
  • 東京高速鉄道の旧新橋駅「幻のホーム」は当時の様子が復元され時折公開されている

92年の歴史。廃駅はいかに生まれたか

   銀座線は1927年12月30日に、当時の東京地下鉄道により上野~浅草間が初めて開業した。以後東京地下鉄道は上野から南へ路線を伸ばしていき、1930年1月1日に上野~万世橋間が開業する。この万世橋駅は神田川の下を掘削する万世橋~神田間の工事中の仮設駅で、1931年11月21日に万世橋~神田間が開通すると、現神田駅にとって代わられる形で廃駅になった。これが1つ目の廃駅だ。

   現在の銀座線は戦前に全区間が開通済だが、浅草~新橋間は東京地下鉄道、新橋~渋谷間は東京高速鉄道と2社により建設された。先に新橋まで開業させたのは東京地下鉄道で1934年6月21日に開業。東京高速鉄道は5年後の1939年1月15日に新橋まで開通した。2社が乗り入れたため、新橋駅は東京地下鉄道と東京高速鉄道の駅ができたが、同年9月に渋谷~浅草間の通し運転が始まる。以降、東京地下鉄道の駅が現在に至るまで使われており、東京高速鉄道の新橋駅がわずか8か月で廃駅になった。この新橋駅は「幻の新橋駅」として知られ、時折イベントで公開されて臨時列車が運転されるなどしているが、繰り返すが廃駅はこの駅だけではない。

   戦後は現・表参道駅の近くに3つ目の廃駅ができる。1938年11月18日に開業した表参道駅は、現在の駅よりも渋谷寄りにあり、駅名も当時は青山六丁目、後に神宮前駅に改称される。1972年に千代田線表参道駅が開業すると銀座線の駅も表参道に改称、しかし乗り換えは一度地上に出なければならなかった。1978年8月1日の半蔵門線開業に合わせて銀座線ホームが現在地に移転し、半蔵門線と銀座線は同じホーム上で乗り換えられるようになる。千代田線との乗り換え距離も大幅に短縮され、代わりに40年間使われた旧銀座線ホームが廃駅に。後から開業した千代田線・半蔵門線との乗り換えの便宜のために、もともとあった銀座線の駅を廃駅にして移転させたことになる。

   そして2019年末から2020年にかけての渋谷駅移転工事で現・渋谷駅ホームが廃止され、銀座線に4つ目の廃駅ができることになる。渋谷~浅草で14.3kmと東京の地下鉄では副都心線に次いで短い路線だが、4駅もの廃駅ができるのも、銀座線の歴史の長さを物語るかのようだ。

廃駅の「今」と渋谷の行く末は?

   これらの廃駅は銀座線のトンネルの中に残され、資材置き場や車両留置に使われているが、よほど気を付けていないと気づかない。旧万世橋駅は末広町駅から渋谷方面に電車が走ると、線路の間の支柱が途切れる区間に進む。そこに万世橋駅の遺構が残っているが一瞬で通り過ぎてしまう。東京高速鉄道の旧新橋駅は、虎ノ門駅から浅草方面の電車に乗ると、新橋駅直前で線路が分岐するその先に眠っている。駅自体は車窓から直接見ることはできないが、運転席の後方で前面の景色を見ていれば、分岐した線路の先、現行の線路よりやや高いところに駅が見えるのが確認できる。

   旧表参道駅は現表参道駅から渋谷方面のトンネルに入ってすぐのところに、狭いホームや柱の跡が残っている。電車のスピードはあまり出ていないので前面展望、つまり運転席の真後ろからなどでなくても、目を凝らすと車内から柱やホームの壁の跡を何とか視認できる。

   では12月27日限りの現渋谷駅はどうなるか、というと、北側の乗車ホームは閉鎖されるが、南側の降車ホームは当面、新ホームへの通路として使われるという告知が駅周辺に掲示されている。新ホームは現在の駅から宮益坂のトンネルに入る間の橋脚上にできるので駅全体が東に移動するが、JR・京王側から新ホームへの導線として機能を発揮しそうだ。

   ただ、現渋谷駅のホーム直上の東急東横店も2020年3月末で営業終了後解体・再開発の方針が決まっているため、長い目で見るとホームと線路がどうなるかは不透明でもある。駅としては1938年の開業以来81年の歴史を終えるが、他の用途に転用されたり、旧新橋駅のように知る人ぞ知るスポットとして残されたりする可能性もあるだろう。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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